東京建物、データセンター開発事業に本格参入 大阪南港でハイパースケールDC「Zeus OSA1」を開発、総投資額は約1000億円規模

東京建物は、データセンター(DC)開発事業に本格参入することを発表しました。第1弾として、シンガポールのデータセンター開発・運営会社である SC Zeus Data Centers と共同で、大阪市住之江区南港エリアに大型データセンター「Zeus OSA1」を開発します。

日本経済新聞電子版によると、本事業への総投資額は約1000億円規模とされており、東京建物にとっては、オフィス・住宅に続く新たな事業分野への参入となります。

1.事業参入の背景|拡大するAI・クラウド需要

大阪圏にデータセンターが集積。写真はシャープ堺工場「AIデータセンター」

生成AIの普及やクラウドサービスの拡大により、国内外でデータセンター需要は拡大を続けています。とくにAI用途では、GPUを大量に用いた高性能計算が一般化し、電力容量、冷却方式、設備冗長性などにおいて、従来の企業向けデータセンターとは異なる設計条件が求められるようになっています。

東京建物は、こうした変化を中長期的な産業構造の変化と捉え、データセンターを新たな成長分野の一つと位置付けました。その際、自社単独での立ち上げではなく、ハイパースケールDCの開発・運用実績を持つ海外事業者と共同で事業を進める方式を選択しています。

本事業は、


  • 東京建物にとって初のデータセンター開発事業

  • SC Zeusにとって日本国内初のデータセンター事業

という位置付けになります。

2.計画地の概要|大阪市住之江区・南港北エリア

計画地は、大阪市住之江区南港北エリアです。大阪中心部のデータセンター集積地やインターネットエクスチェンジ(IX)から約10kmに位置しており、通信遅延が業務品質に影響する用途にも対応可能な立地とされています。

また、大阪湾岸部という立地特性から、


  • 大規模電力の引き込みが可能

  • 重量設備の搬入・更新がしやすい

  • 将来的な拡張余地を確保しやすい

といった条件を備えており、ハイパースケール型データセンターの立地として合理性の高いエリアと評価されています。

3.なぜ大阪なのか|電力供給とIXという立地条件

データセンター立地において、近年とくに重要性を増しているのが電力供給条件です。生成AIや高性能計算向けデータセンターでは消費電力量が大きく、電力の量・安定性・将来の増設余地が事業成立の前提条件となります。日本国内では、原子力発電所の再稼働が進んでいる地域として、近畿地方や九州地方が挙げられます。これらの地域は、ベースロード電源の確保や将来的な電力増設余地という面で、データセンター立地として有利な条件を備えています。

その中でも大阪が持つ特徴が、国内有数のインターネットエクスチェンジ(IX)が集積している点です。低遅延が求められるAI推論や金融系用途では、電力条件に加えてネットワーク接続環境が事業性を左右します。

原発再稼働による電力供給余力と、IXが集積する通信環境。この2つの条件を同時に満たす都市は国内でも限られており、大阪はその代表例といえます。Zeus OSA1が大阪・南港に計画された背景には、電力と通信インフラを重視した判断があると考えられます。

4.第1期計画の内容

Zeus OSA1は、2025年12月に着工し、2028年に第1期(ITロード25MW)稼働開始を予定しています。AIワークロードの電力需要増加を見据え、液冷に対応した冷却方式を採用。ラック当たり最大130kWの高電力密度に対応し、AIや高性能計算用途を想定した設計としています。


  • 電力・空調設備:N+1以上の冗長構成

  • 想定PUE:1.19(計画値)

  • 階数・構造:地上7階・S造(免震構造)

  • 施工方式:MEP分野でのプレファブリケーション工法導入

5.施設概要


  • 所在地:大阪府大阪市住之江区南港北一丁目(地番)

  • 敷地面積:13,956㎡

  • 延床面積:19,016㎡

  • 階数・構造:地上7階・S造(免震)

  • 着工時期:2025年12月

  • 稼働開始:2028年(第1期)

  • ITロード:25MW(第1期)

6.将来計画と拡張構想(SC Zeus公式サイト)

SC Zeus Data Centersの公式サイトでは、Zeus OSA1をキャンパス型ハイパースケールデータセンターとして位置付けています。25.2MW対応の建物2棟で構成され、将来的には最大50MWまで拡張可能とされています。


  • 最大ITロード:50MW

  • 予備電力:35MW

  • フロア構成:6フロア×各4.2MW

  • 冷却方式:Direct-to-Chip液冷、フリークーリング対応

  • ラック密度:標準3~15kW、最大120kW

  • 信頼性:Uptime Tier III

  • 環境性能:年間PUE1.25未満、LEEDゴールド、グリーン電力活用

7.このデータセンターのスペックが戦略的な理由

Zeus OSA1の仕様は、単に高性能な設備を備えることを目的としたものではありません。その構成全体は、今後主流になると見込まれるAI・高性能計算需要を前提に設計されている点に特徴があります。

第1期のITロードを25MWとし、将来的な拡張余地を確保している点は、需要の立ち上がりを見極めながら段階的に投資を進める姿勢を示しています。AIワークロードは進化の速度が速く、用途や電力密度の変化を想定した柔軟な拡張が重要となります。

また、標準3~15kWから最大120kWまで対応するラック密度は、GPUを大量に用いる計算集約型用途を明確に意識した仕様です。汎用的な企業向けコロケーション需要よりも、AI・HPC用途を主要ターゲットとしていることが読み取れます。

冷却方式についても、Direct-to-Chip液冷を前提とした設計が採用されています。空冷中心の構成では対応が難しい高発熱環境を想定しており、将来的なGPU世代更新にも対応しやすい構成となっています。

さらに、ITロード25MWに対して35MWの予備電力を確保している点は、将来的な高密度化や用途拡張を見据えた余地を持たせるためのものです。初期段階から電力や冷却の制約を回避する設計は、長期運用を前提とした戦略的な判断といえます。

8.本事業の位置付け

計画地周辺の様子

Zeus OSA1は、東京建物にとって単なる用途拡大ではなく、オフィス・住宅に加えて産業基盤を支えるインフラ型不動産へと事業領域を広げる起点として位置付けられます。

データセンターは、AIやクラウドの基盤として産業構造に組み込まれる不動産であり、長期運用を前提とした事業モデルを構築しやすい分野です。
海外の専門事業者と共同開発を行うことで、ハイパースケールDCに必要な設計・運用ノウハウを初期段階から取り込み、将来的な事業展開を見据えた基盤づくりを進める狙いがあると考えられます。

9.まとめ

出展:https://www.panduit.co.jp/

Zeus OSA1は、AI・クラウド需要の拡大を背景に計画されたハイパースケール型データセンターです。立地条件、電力供給、ネットワーク環境、そして設備仕様を総合的に見ると、将来の需要構造を見据えた計画であることが分かります。東京建物にとって本事業は、オフィス・住宅に続く新たな事業分野として、インフラ型不動産への取り組みを本格化させる第一歩と位置付けられます。大阪湾岸エリアにおける今後のデータセンター集積を考える上でも、注目される案件の一つです。






出典

  • 東京建物株式会社 プレスリリース(2026年1月30日)

  • SC Zeus Data Centers 公式サイト「ZEUS OSA 1」

  • 日本経済新聞 電子版(2026年1月29日)

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