出展:奈良県
この記事は、奈良県営競輪場の再整備計画についてお伝えした前回記事の続報です。前回は、奈良県が進める「奈良県営競輪場再整備・運営事業」で、チャリ・ロトグループが優先交渉権者に選定されたことをお伝えしました。
今回、新たに構成企業5社の顔ぶれが明らかになりました。代表企業のチャリ・ロトに、ALSOK、梓設計関西支社、大日本土木奈良営業所、大倭殖産が加わります。
さらに審査結果を詳しく見ると、今回の事業者選定の特徴も鮮明です。チャリ・ロトグループは企画提案では競合を下回った一方、300点満点の価格評価で296点を獲得。価格面で126.3点の差を付け、総合首位を決定づけました。
そして、この案件で奈良県が民間に委ねるのは、再整備費上限約105億円の施設整備だけではありません。完成後の維持管理・競輪運営に加え、県への年間3億円以上の収益保証まで含めて民間に担わせる、長期の事業再構築プロジェクトです。
チャリ・ロト、ALSOK、梓設計など5社体制が確定
奈良県が2026年8月6日に公表したチャリ・ロトグループの構成企業は次の通りです。| 位置付け | 企業 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 代表企業 | チャリ・ロト | 事業統括、競輪場運営 |
| 構成企業 | ALSOK | 参画、具体的担当は未公表 |
| 構成企業 | 梓設計 関西支社 | 設計 |
| 構成企業 | 大日本土木 奈良営業所 | 施工 |
| 構成企業 | 大倭殖産 | 施工 |
今回採用されたのは、設計・施工に加え、維持管理や運営までを民間に一体で委ねるDBO方式です。県が施設を所有し、民間事業者が設計・建設・運営を一体的に担うことで、建設段階から将来の維持管理や運営効率を織り込めるのが特徴です。
つまり、今回選ばれたのは単なる設計・施工チームではありません。施設を造り、その後の競輪場経営まで一体で担う事業体です。
「企画2位」でも総合首位 価格評価296点が決定打
選定には2グループが参加しました。総合評価は1000点満点で、チャリ・ロトグループが866.6点、次点が738.7点。差は127.9点でした。| 審査項目 | チャリ・ロトG | 次点 | 差 |
|---|---|---|---|
| 業務遂行能力 | 140.0 | 120.0 | +20.0 |
| 企画提案内容 | 430.6 | 449.0 | ▲18.4 |
| 提案価格 | 296.0 | 169.7 | +126.3 |
| 総合評価 | 866.6 | 738.7 | +127.9 |
そこから差を一気に広げたのが、296点/300点、得点率98.7%の価格評価です。
価格評価の配点は、再整備費160点、本場開催経費100点、場外開催経費30点、整備後の収益保証10点。したがって296点は単に「建設費が安かった」ことを意味するわけではなく、施設整備から競輪開催、運営までを含めた事業コスト全体で高い競争力を示したと見るべきでしょう。
一方で、価格評価そのものが収益力を直接示す指標ではありません。今回の選定で重要なのは、コスト競争力と運営能力を別々に評価したうえで、最終的に総合力を競わせている点です。
再整備費上限105億円 2030年7月に本場開催再開

出展:Wikipedia
奈良県営競輪場では、老朽化した施設を集約・更新し、新スタンドやバンク、女子宿舎、多機能棟などを整備します。| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業方式 | DBO方式 |
| 再整備費の支払限度額 | 105億1,817万4,000円 |
| 敷地面積 | 約6万6,000㎡ |
| 主な整備対象 | 南側約3万7,000㎡ |
| 主な整備内容 | 新スタンド、バンク、女子宿舎、多機能棟、既存施設改修 |
| 民間提案エリア | 約4,500㎡ |
| 再整備着手 | 2026年11月予定 |
| 施設完成 | 2030年3月予定 |
| 本場開催再開 | 2030年7月予定 |
| 運営期間 | 2035年3月まで |
工程上の大きな節目となるのが2030年度です。奈良県は、同年度に予定される国民スポーツ大会のリハーサル大会で使用できる状態とすることを目標にしており、2030年3月の施設完成、同年7月の本場開催再開を予定しています。
年間3億円以上を県に保証 「建てて終わり」ではない
今回の事業を特徴づけるのが、完成後まで続く収益保証です。| 期間 | 奈良県への収益保証 |
|---|---|
| 2027~2029年度 | 毎年度3億円 |
| 2030~2034年度 | 毎年度3億円以上 |
この条件は、今回の事業が通常の公共施設整備とは性格を異にすることを示しています。
事業者は新しい競輪場を完成させるだけではなく、維持管理、競輪開催、集客、運営、収益確保までを長期にわたり担うことになります。施設整備のリスクだけでなく、完成後の運営リスクの一部も民間側が負う仕組みです。
奈良県にとって重要なのは、105億円規模の投資によって新しい施設を手に入れることだけではありません。その施設を使って競輪事業を継続的に成立させ、県に一定の収益を還元できる事業モデルを構築することが本当の目的です。
なぜチャリ・ロトなのか 玉野・広島で進めてきた「競輪場再生」
代表企業のチャリ・ロトは、インターネット車券販売を起点に、近年は競輪場の包括運営や施設再整備へ事業領域を広げています。象徴的なのが、玉野競輪場と広島競輪場です。
| 競輪場 | 主な取り組み |
|---|---|
| 玉野競輪場 | 選手宿舎とホテルを組み合わせた「KEIRIN HOTEL 10」を導入 |
| 広島競輪場 | BMXやスケートボードなどを組み合わせた「アーバンサイクルパークス広島」へ再編 |
| 高松競輪場 | 包括運営、再整備、余剰地活用 |
| 伊東温泉競輪場 | 施設再整備、運営に関与 |
| 小松島競輪場 | 包括運営 |
こうした事例から分かるのは、チャリ・ロトがすでに単なるネット車券販売会社ではないということです。
競輪場をどう運営し、施設の稼働率を高め、競輪ファン以外の利用者も取り込みながら事業価値を高めるか。 その実務を担う「競輪場再生」のプレーヤーへと事業領域を広げています。
奈良でも、このノウハウを地域特性に合わせてどこまで展開できるかが、再整備後の収益力を左右することになります。
約4,500㎡の民間提案エリア 地域利用をどこまで取り込めるか

出展:奈良県
奈良県は競輪事業の効率化だけでなく、競輪場を開催日以外にも利用される施設へ転換することを求めています。南側には約4,500㎡の民間提案エリアを設け、自転車競技やスポーツ振興、地域交流、子どもの居場所づくりなどにつながる活用を想定しています。これは収益面から見ても重要です。競輪場のような大型施設は、開催日以外の稼働率が低ければ、土地や建物を十分に活用できません。非開催日にも利用者を呼び込み、地域との接点を増やすことができれば、施設の価値だけでなく、周辺への波及効果も高められます。
玉野や広島で進めてきた、閉じた公営競技施設から、より開かれた複合施設へ転換する考え方が、奈良でどのように具体化されるかが今後の見どころです。
105億円の施設更新、その先にある「競輪事業の再設計」
今回判明した5社の陣容と審査結果から、プロジェクトの性格はかなり明確になりました。企画提案では2位だったチャリ・ロトグループが、価格評価296点で総合首位を決定づけました。そして奈良県が民間に委ねるのは、105億円規模の施設整備だけではなく、県への年間3億円以上の収益保証を伴う運営まで含めた競輪事業そのものです。
つまり今回の再整備は、老朽化した競輪場を新しくするだけの公共施設更新ではありません。
施設整備、維持管理、競輪開催、集客、地域利用、収益確保までを一体で組み直し、奈良競輪そのものの事業モデルを再設計するプロジェクトです。
2030年7月の本場開催再開時、奈良競輪が従来型の公営競技施設からどこまで進化するのか。次の焦点は、本契約後に具体化する施設デザイン、民間提案エリアの内容、そしてチャリ・ロトグループが提示した具体的な運営モデルです。
出典
・奈良県「奈良県営競輪場再整備・運営事業」募集要項・奈良県「奈良県営競輪場再整備・運営事業 優先交渉権者選定基準」
・奈良県「優先交渉権者選定結果」
・奈良県「優先交渉権者の構成企業について」
・株式会社チャリ・ロト「奈良競輪場における再整備・運営事業 優先交渉者として選定されました」
・株式会社チャリ・ロト 競輪場運営・再整備関連資料
・日刊建設工業新聞「競輪場DBO、チャリロトGに」
この版は、前稿より**「価格評価の中身」「DBOの意味」「民間提案エリア」「チャリ・ロトの再生ノウハウ」**を厚くしつつ、記事の軸はぶらしていません。
Visited 188 times, 188 visit(s) today


