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近鉄大阪線・五位堂駅南側広場を都市再編の起点に──香芝市が基本構想を公表、交通結節とにぎわい創出を同時実現へ


香芝市は2024年12月、「近鉄大阪線五位堂駅南側駅前広場整備基本構想」を公表しました。南側広場の整備は、都市計画再編の実行フェーズにおける具体プロジェクトとして位置付けられ、混雑緩和・交通安全・都市景観整備・地域活性化といった複数の課題に同時に対応する施策です。今後は基本計画の策定を経て、2027年度中の詳細設計を目指し、段階的に整備が進められる予定です。

都市機能のボトルネックとなっていた「未整備の南側」


五位堂駅は、近鉄大阪線において大和八木駅に次ぐ乗降客数を誇り、ピーク時には1日あたり26,000人前後が利用しています。北側には平成10年に整備された駅前広場があり、鉄道・バス・タクシーといった交通機関の結節点として機能してきました。

一方で、南側には広場が未整備のままとなっており、送迎車両の路上駐停車、下田第5号踏切の通行集中による混雑、歩行者と車の動線が交錯する危険な交通状況が課題として顕在化していました。特に踏切南側の交差点は五叉路に近い複雑な構造となっており、車両・歩行者ともに事故リスクが高まっています。

また、近年の都市動向として、南側では住宅開発が進行し、周辺の商業地域には高度地区の高さ制限緩和が予定されており、今後の人口増加とともに交通需要が一層増すことが確実視されています。

計画規模は約3,700㎡、拡張余地は限定的

今回整備が想定されている南側広場は、都市計画道路「五位堂駅前南線」に位置付けられており、その面積は約3,700㎡です。周辺は既に共同住宅や商業施設が立地しているため、拡張余地は市道10-36号線の東端までが限界とされており、大規模な拡張は難しい見込みです。

将来的な交通需要の増大に備え、最大限のスペース確保は検討されますが、最終的には地権者の合意形成と現状の土地利用を踏まえた柔軟な判断が求められます。

交通と環境の複合機能を持つ駅前空間へ

整備される南側広場には、交通空間と環境空間の両機能が求められます。交通機能としては以下の要素が検討されています。


  • 短時間駐車可能な送迎車スペース

  • キス・アンド・ライド対応の乗降場

  • 将来的にコミュニティバスが発着可能なバスベイ

  • タクシー乗降スペースの設置検討

  • 6m以上の歩道幅を確保し歩行者安全を強化

  • 現行の民間駐輪場に代わる駐輪施設の整備

環境空間としては、滞留スペースや憩いの場としてのベンチや植栽、シンボルモニュメントの設置が検討されており、香芝地域ブランド「Kashiba+」との連携も視野に入れられています。また、公衆トイレや案内板、郵便ポストなどのサービス機能も併せて導入される見込みです。

通過交通は制限、踏切・交差点の安全性も再構築

交通導線については、五位堂駅前南線を主要出入口とし、通過交通は極力抑制する設計とします。とくに混雑が集中する下田第5号踏切南側交差点からの直接流入は認めず、市道10-36号線と10-23号線の交差点付近を代替ルートとします。さらに、これに関連して踏切南側交差点の整備や、市道10-36号線の拡幅(特に西側)が同時に検討されており、交差角の緩和による安全性向上も目指されます

今後のスケジュールと財源戦略

今後の工程としては、以下のようなスケジュールが示されています。


  • 2025年3月:香芝市議会で基本計画策定予算提出

  • 2025〜2026年度:基本計画の策定作業

  • 2027年度:詳細設計に着手

  • 以降:用地取得と段階的整備工事を進行

財源については、社会資本整備総合交付金など国の補助制度を最大限活用するほか、必要に応じて一般財源の活用も視野に入れ、整備の停滞を回避する構えです。また、民間事業者との官民連携による地域活性化プロジェクトとの連動も検討されており、都市の価値向上に資する整備が期待されています。

五位堂駅南側──都市の「裏口」から「顔」への転換点

今回の南側広場整備は、香芝市の都市構造を更新する実装的プロジェクトであり、駅の“裏口”とも言える未整備地帯を都市の“顔”へと再編する取り組みです。にぎわい拠点としての機能性を高めつつ、通勤通学・居住・交流の接点として新たな都市空間を創出する本計画は、今後の香芝市の都市形成における象徴的な布石となるでしょう。


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