奈良ホテル、新館を「西館」として2026年秋にリニューアル !1984年以来、41年ぶりの全面改装。全館休館を経て“再生”へ

奈良ホテル(運営:JR西日本ホテルズ)は、1984年に開業した「新館」を全面改装し、2026年秋に「西館」としてリニューアルオープンします。これに伴い、2026年1月4日から5月下旬まで全館を休館。その後、6月以降は本館のみで営業を再開する予定です。


リニューアルの概要 「吉野建て」と現代性の融合


今回のリニューアルは、開業から41年を経た新館を「西館」として再定義し、本館との調和を取り戻すプロジェクトです。奈良県吉野地方の伝統建築「吉野建て」を継承しつつ、現代的な快適性を融合。クラシックホテルとしての格調を守りながら、時代の変化に応える滞在空間を目指します。

西館のコンセプトは「清澄悠然(せいちょうゆうぜん)」。“清らかで動じず、ありのままにこの地に佇む”という思想を体現し、自然と調和する静かな存在感を追求します。


工事・営業スケジュール

区分 期間 内容
全館休館 2026年1月4日(日)11:00チェックアウト~5月下旬(予定) 西館(現・新館)の全面改装
縮小営業 2026年6月上旬~8月末ごろ(予定) 本館のみ営業(客室・メインダイニング「三笠」・ティーラウンジ・バー・ショップ)
再オープン 2026年秋(予定) 「西館」としてグランドオープン

※工事期間は進行状況により変更される可能性があります。


奈良ホテルの歩みと再構築 「迎賓館」から「文化資産型ホテル」へ


出展:奈良ホテル

1909年(明治42年)創業の奈良ホテルは、「関西の迎賓館」として国内外の賓客を迎えてきました。辰野金吾設計による本館は、桃山御殿風の檜造りで知られ、クラシックホテルの象徴的存在です。1984年には吉野建てを取り入れた新館を増築し、全客室が中庭に面する構成を採用。明治と昭和、二つの時代の建築が共存する“時間の層”こそ、奈良ホテルの個性を形成してきました。

出展:奈良ホテル 新館スタンダードツイン

しかし、その間には「断絶」もありました。明治期の意匠美と1980年代の機能主義建築の間に、デザインの連続性が途切れていたのです。今回のリニューアルは、その断絶を修復し、体験の流れを再設計する試みです。本館の格式と新館(西館)の快適性を融合し、建築・インテリア・サービスを「時間の連続体」として再構築。過去と現在を滑らかにつなぎ、滞在そのものが“奈良の歴史を体感する行為”となることを目指しています。


出展:奈良ホテル 新館リニューアル客室のイメージ

刷新される客室は、本館の意匠を現代的に再構成し、吉野杉や奈良の自然を感じさせる落ち着いた空間に。鉄板焼「花菊」はライブ感のある新業態として再生し、宴会場「若草の間」は正倉院文様をモチーフに上質な白基調空間へと進化します。機能更新と美意識の統合により、奈良ホテルは“保存”から“更新”へと歩みを進め、歴史を未来に接続する「文化資産型ホテル」へと変貌を遂げます。


 テーマとビジュアル ―「Register」、“記録”を紡ぐ紫の菊

奈良ホテルはリニューアルにあわせ、「Register ―今を記録し、未来へ」を新テーマに掲げました。1909年創業時から残る唯一の宿帳(レジスター)を修復し、115年の歴史を「時を記録し、未来へつなぐ象徴」として再定義しています。

このテーマは、宿泊を“消費”ではなく“記録”として残すという思想を示します。ゲストが奈良の時間を自身の物語として刻み、その瞬間が次の100年を形づくる。奈良ホテルを「時の器」として再構築する試みです。

その理念を視覚化したロゴは、菊のつぼみを真上から見た意匠。積み重なる宿帳のページと、開花を待つホテルの再生を重ね合わせ、高貴な紫を用いて伝統と革新を象徴します。休館期間中は、カウントダウン企画や歴史展示などを通じて「今しか見られない奈良ホテルの記録」を共有する予定です。


 「新館→西館」が意味するブランド構造の転換


今回の改称と全面改装は、単なる老朽化対策ではありません。“新館”という名称は、時間の経過とともに意味を失い、施設間に「旧/新」という序列を生んでいました。

これを“西館”と改めることで、時間軸から空間軸へと視点を転換し、本館と対等な関係性を築く。その結果、奈良ホテル全体を一体のブランドとして再構築できるようになります。

デザイン面では、1909年のクラシック建築と1980年代の機能主義建築という“断絶”を修復。建築・インテリア・体験を「時間の連続体」として再統合し、宿泊を通じて“歴史と現代を同時に体験できるホテル”へと進化させます。

テーマ「Register」は、宿泊行為そのものを「消費」から「記録」へと変える思想です。ゲストが自身の旅の記憶を宿帳に刻むように、“奈良の時間を記録する主体”となる仕掛けを意識しています。これは、観光を「見る」から「参加する」へとアップデートする試みでもあります。


 奈良のホテル市場と奈良ホテルの再定義


紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル奈良

近年、奈良ではラグジュアリーホテルの開業が相次いでいます。JWマリオット奈良、紫翠奈良、ふふ奈良、星のや奈良、星のや奈良監獄、そして2030年度開業予定のホテル寧奈良。競争が激化する中で、奈良ホテルは「文化的ラグジュアリー」という独自ポジションを明確化しています。

既存建築の再生による改修は、文化と資産価値の両立を可能にする合理的な選択です。“建て替えではなく、再構築を選ぶ”姿勢は、まさに「文化を守りながら進化する」ホテルの理念を体現しています。

今回の西館リニューアルは、奈良ホテルが“保存”から“更新”へと歩み出す象徴的なプロジェクト。本館と西館を水平に統合し、歴史と未来を往還する「文化資産型ホテル」として、奈良の都市ブランドを牽引していくことが期待されます。





【出典元】
【奈良ホテル】2026年秋 新館から「西館」として生まれ変わります リニューアルオープン特設ページの公開について

🔗 リニューアル特設サイト
https://www.narahotel.co.jp/renewal/