出展:愛知県、スタジオ・ジブリ
愛知県は2026年8月7日、愛・地球博記念公園(愛知県長久手市)で進める「ジブリパーク第3期構想」を発表しました。西口広場を候補地として、『風の谷のナウシカ』の世界観を表現する大型屋内施設を中心に、新たな空間を整備します。8月14日には、基本構想・基本設計、地質調査などに3億8,767万3,000円を計上する補正予算案も公表されました。
今回の第3期は、単なる新施設の追加ではありません。人流データから浮かび上がった猛暑による滞在時間の低下と、西口広場の通過地点化を解消し、年間約150万人の集客力を消費・再訪・宿泊へつなげるプロジェクトです。
『風の谷のナウシカ』をテーマに、西口広場を新たな目的地へ
現時点で判明している計画は次の通りです。| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構想名 | ジブリパーク第3期構想 |
| 発表日 | 2026年8月7日 |
| 整備主体 | 愛知県 |
| 候補地 | 愛・地球博記念公園・西口広場 |
| 西口広場の規模 | 約0.5ha ※施設面積ではありません |
| テーマ | 『風の谷のナウシカ』 |
| 施設 | 多人数を収容できる大型屋内施設を中心に整備 |
| 周辺整備 | 既存施設との一体化、「こいの池」や緑地との景観調和 |
| 2026年度予算案 | 3億8,767万3,000円 |
| 予算の用途 | 基本構想、基本設計、地質調査など |
| 延床面積・総事業費 | 未公表 |
| 着工・完成時期 | 未定 |
| 正式名称 | 未定 |
現段階では、ナウシカを表現する屋内施設を核に、西口広場全体を魅力化する構想です。
3.88億円で基本構想・設計へ
ジブリパークは段階的に整備されてきました。| 時期 | 整備内容 |
|---|---|
| 2022年11月 | 第1期:「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」開園 |
| 2023年11月 | 第2期:「もののけの里」開園 |
| 2024年3月 | 第2期:「魔女の谷」開園、5エリアが完成 |
| 2026年8月 | 第3期:「風の谷のナウシカ」屋内施設構想を発表 |
一方、今回計上された約3.88億円は施設の建設費ではなく、基本構想・基本設計、地質調査などの初期費用です。施設規模や総事業費、工期は、今後の設計作業を通じて具体化します。
年間来園者は約150万人、経済波及効果は710億円

出展:愛知県、スタジオ・ジブリ
ジブリパーク単体の実来園者数は公表されていませんが、愛知県は2024年度の人流データから年間約150万人と推計しています。一方、ジブリパークを含む愛・地球博記念公園全体では、2024年度に約294万人、2025年度には324万1,000人が来園しました。| 指標 | 数値 |
|---|---|
| ジブリパーク | 約150万人/年 ※2024年度推計 |
| 愛・地球博記念公園全体 | 約294万人 ※2024年度 |
| 愛・地球博記念公園全体 | 324.1万人 ※2025年度 |
| 5エリア全面開業時の当初想定 | 約180万人/年 |
注目すべきは、来園者数よりも経済効果です。
| 指標 | 当初想定 | 現在 |
|---|---|---|
| 年間来園者数 | 約180万人 | 約150万人※推計 |
| 愛知県内への経済波及効果 | 約480億円 | 約710億円 |
第3期の課題も「何人呼ぶか」ではなく、すでに来ている人に、どれだけ長く快適に過ごしてもらうかです。
データが示した二つの課題。猛暑と「通過する西口広場」
愛・地球博記念公園を訪れる国内客のうち、5時間以上滞在する割合は46.2%です。県は来園者の行動を「楽しむ・歩く・休む・消費する」の4段階で捉え、滞在時間を伸ばすには屋内空間や休憩、飲食・物販機能の強化が必要と分析しました。特に影響が大きいのが夏の暑さです。
| エリア | 春季:2時間以上滞在 | 夏季:2時間以上滞在 |
|---|---|---|
| 魔女の谷 | 30.4% | 21.8% |
| ジブリの大倉庫 | 38.6% | 39.3% |
大型屋内施設は、新たな展示空間であると同時に、猛暑でも滞在時間と消費機会を維持する気候適応投資でもあります。
もう一つの課題が西口広場です。
西口広場は「ジブリの大倉庫」と「どんどこ森」を結ぶ主要動線上にありますが、滞在時間は短く、春季・夏季ともに約7割が15分未満でした。
| 西口広場で15分未満しか滞在しない割合 | 比率 |
|---|---|
| 春季 | 70.0% |
| 夏季 | 71.6% |
案内所や休憩所はすでに存在しますが、認知度や飲食・物販の訴求力が弱く、来園者を立ち止まらせる力が不足していました。
なぜ「ナウシカ」なのか?強いIPで人流を滞在へ変える

出展:愛知県、スタジオ・ジブリ
愛知県が施設内容についてスタジオジブリに意見を求めた結果、提案されたのが『風の谷のナウシカ』でした。
同作は1982年に漫画連載が始まり、1984年に劇場アニメ化。県資料では、スタジオジブリ設立につながった**「ジブリの原点」**と位置付けられています。
第3期の構図は明快です。
主要動線上にありながら通過地点となっている西口広場に、ジブリ屈指の強力な作品を投入し、目的地へ変える。
県は施設に、多人数を収容できる「容積の大きな屋内空間」を求めています。公表資料には王蟲が登場する場面も掲載されていますが、腐海や王蟲、メーヴェなどをどのように表現するかは未定です。
確定しているのは、ナウシカの世界観と大規模な屋内空間を組み合わせるという方向性までです。
建物は大型でも、外観は公園景観に溶け込ませる

出展:愛知県、スタジオ・ジブリ
県が公表した外観イメージでは、「こいの池」に面して黄土色系の大きな建物が配置されています。一方、一般的なテーマパーク建築のような派手さは抑えられています。これは、愛・地球博記念公園の自然や既存景観を残しながら、その中に作品世界を埋め込むというジブリパークの設計思想を踏襲したものと考えられます。大型IPを前面に出しながらも、公園全体を人工的なテーマ空間に変えない点は、ディズニーやUSJとは異なるジブリパークの特徴です。
第3期の経済効果を左右する「1泊を2泊にする」戦略

出展:愛知県、スタジオ・ジブリ
愛知県は第3期の目的に、県内周遊観光の促進も挙げています。| 来園者動向 | 割合 |
|---|---|
| 県外国内客の県内宿泊率 | 64.5% |
| 県内宿泊者のうち名古屋市内に宿泊 | 82.3% |
| ジブリパーク以外を訪れない県外客 | 29.8% |
| 国内客のリピーター率 | 27.3% |
ここには政策上の矛盾があります。ジブリパークでの滞在時間を伸ばすほど、同じ日に他の観光地へ回る時間は減るからです。
解決策は、短い時間に周遊先を詰め込むことではなく、旅行日数を1泊から2泊へ延ばすことでしょう。1日目をジブリパーク、2日目を名古屋、犬山、常滑、知多、三河などに振り向けられれば、園内滞在と県内周遊を両立できます。
第3期の効果を最大化するには、新施設だけでなく、ホテル、鉄道、地域観光地を組み合わせた旅行商品や情報発信が重要になります。
今後の焦点は施設規模・事業費・内部展示
第3期は、基本構想・基本設計へ進む初期段階です。| 注目項目 | 判明すると分かること |
|---|---|
| 延床面積 | 施設の規模と収容力 |
| 総事業費 | 第3期の投資規模 |
| 内部展示 | ナウシカの世界観をどう立体化するか |
| 着工・完成時期 | 開業までの工程 |
| チケット体系 | 既存5エリアとの位置付け |
| 飲食・物販 | 滞在時間と来園者単価への効果 |
まとめ:第3期はジブリパークの弱点を補う「滞在型」への転換策

出展:愛知県、スタジオ・ジブリ
ジブリパーク第3期は、『風の谷のナウシカ』という人気作品を追加するだけの計画ではありません。| 現在の課題 | 第3期の対応 |
|---|---|
| 猛暑で屋外エリアの滞在時間が低下 | 大型屋内施設を整備 |
| 西口広場が通過地点化 | ナウシカを核に目的地化 |
| 滞在時間を伸ばしたい | 新たな体験・休憩空間を追加 |
| リピーターを増やしたい | 第3期コンテンツを投入 |
| 県内消費を増やしたい | 宿泊・周遊への波及を狙う |
年間来園者は約150万人。当初想定の約180万人には届いていませんが、県内経済波及効果は約480億円から約710億円へ拡大しました。
今後の評価軸は、単純な来園者数ではありません。
来園者が何時間滞在し、何度再訪し、何泊し、愛知県内でどれだけ消費するようになるのか。
『風の谷のナウシカ』の大型屋内施設は、その転換を担う第3期の中核プロジェクトになりそうです。
出典・参考資料
- 愛知県「ジブリパークの第3期構想を推進します!」
- 愛知県「ジブリパーク第3期構想 コンセプト・イメージ」
- 愛知県「ジブリパーク来園者の滞在時間延長及び熱中症対策に関する調査」
- 愛知県「ジブリパーク5エリア開園後における来園者の属性・消費動向」
- 愛知県「ジブリパーク来園者の消費に伴う経済波及効果」
- 愛知県「令和8年度8月補正予算」
- 東海テレビ
- メ~テレ
- 建設通信新聞
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