
沼津駅周辺で進む大規模な鉄道高架事業が、鉄道施設の移転・高架化だけでなく、「完成後の沼津駅と中心市街地をどうつくるか」を具体化する段階に入っています。
沼津市は2026年9月25日、「沼津駅舎・駅前広場等デザイン検討」を更新しました。新駅舎、南北駅前広場、新コンコース、高架下空間、公共交通を個別に整備するのではなく、一つの「駅まち空間」として連続させる基本計画の策定が進められています。
同日には、鉄道高架化の前提となる新貨物ターミナルの最新工事状況も公表されました。東海道本線の線路切替に向けた軌道・電気設備工事、駅事務所やバニング上屋の建設が進み、長く構想段階にあった巨大プロジェクトが、鉄道施設移転と都市デザインの両面で具体化しています。
沼津駅周辺はどう変わる?
| 項目 | 計画内容 |
|---|---|
| 鉄道高架 | 東海道本線約3.7km、御殿場線約1.6km |
| 踏切 | 13カ所を除却 |
| 鉄道高架事業費 | 約1,034億円 |
| 新駅 | 高架駅化、新コンコースを整備 |
| 南北動線 | 高架化とコンコース、高架下空間により南北市街地を接続 |
| 南口駅前 | 路線バス、タクシー、一般車、広場などを再配置 |
| 北口駅前 | 高速・観光バス、一般車、歩行者空間などを再編 |
| 高架下 | 商業などの都市機能、公共空間、歩行者動線を検討 |
| 駅前空間 | 大屋根「アーバンシェルター」を南北に配置 |
| 次世代交通 | 南口で沼津港方面との接続を想定した空間を確保 |
| 基本計画 | 2027年3月31日までに策定予定 |
| 高架切替 | 2040年度に全線完了予定 |
現在の沼津駅では、東海道本線と御殿場線が中心市街地を東西に横断し、南北の往来を踏切や駅構内に依存しています。高架化後は13カ所の踏切がなくなるほか、新しい道路や歩行者動線を確保しやすくなります。
さらに高架下を駅前広場や市街地と接続することで、線路による「境界」が、南北をつなぐ都市空間へ変わります。
「駅を建て替える」のではなく、駅と街を一体で再設計

沼津市が示すデザインコンセプトは、「えきとまちがつながる“大きなえき”」「使いやすく、にぎわいのある“えきまち広場”」「風景と調和し、人々の活動とともにつくる“沼津らしさ”」の3つです。
計画対象も駅舎に限定されません。
| 空間 | 主な方向性 |
|---|---|
| 新駅舎・コンコース | 南北の駅前広場、高架下、市街地を結ぶ主要動線 |
| 南口 | 路線バス・タクシー・一般車を整理し、大規模な広場空間を形成 |
| 北口 | 高速・観光バス、一般車、歩行者・滞在空間を再配置 |
| 高架下 | 商業などの都市機能、公共空間、東西方向の歩行者動線を形成 |
| アーバンシェルター | 駅と交通広場、歩行空間を覆う大屋根として南北に配置 |
| 周辺市街地 | 土地区画整理や道路整備と連動して土地利用を再編 |
南口は「交通処理の場所」から滞在できる駅前へ
南口では、現在混在している交通機能を整理します。路線バスやタクシー、一般車の動線を再配置するとともに、駅前にはイベントなどにも利用できるまとまったオープンスペースを確保します。駅と沼津港方面を結ぶ次世代モビリティの導入を想定した空間も計画されています。
その中心となるのが「アーバンシェルター」です。
駅前広場を大きな屋根で覆い、駅からバス乗り場、一般車乗降場、広場、市街地へ連続して移動できる空間を形成します。雨天や夏季の強い日射への対応だけでなく、駅前広場そのものを人が滞在できる場所として使う狙いがあります。
交通機能を効率化して生まれた空間を歩行者や広場へ振り向けることで、「車を処理する駅前」から「人が歩き、待ち、滞在する駅前」への転換が進みます。
高架下が「南北分断」の解消を担う

鉄道高架化による効果は、踏切除却だけではありません。高架下には、新コンコースに加えて商業などの都市機能や公共空間、歩行者動線の導入が検討されています。
現在は線路が南北市街地の境界になっていますが、高架化後はその直下を人が横断し、店舗や公共空間を介して両側を行き来できるようになります。
さらに「軒下公共空間」と呼ばれる東西方向の歩行空間も検討されており、南北だけでなく東西方向にも歩行者ネットワークを広げる構成です。
高架下すべてを商業施設にする計画ではありません。交通、歩行、公共空間、都市機能を組み合わせながら、駅前広場や周辺市街地との連続性をつくる方針です。
9月25日更新、市民参加で基本計画を具体化
2026年9月25日の更新では、8月22日に開催された学生ワークショップの結果が追加されました。高校、大学、専門学校など10校から29人が参加。南北駅前広場のデザインイメージを基に、「駅前で何をしたいか」「そのためにどのような空間や機能が必要か」を検討しました。市はこれまでにも模型やVRを用いたオープンハウスを実施しており、1,188人が参加、842件の意見が寄せられています。交通機能だけでなく、緑、公園、休憩場所、南北の移動、子どもや高齢者の使いやすさ、富士山や水辺を感じられる空間など、多様な意見が集まりました。9月23日には子育て支援関係者を対象にしたワークショップも開催されています。
現在公表されているパースは完成デザインではなく、こうした意見や交通計画、事業条件を踏まえながら基本計画へ落とし込む段階です。
設計チームはSOCI+日建設計+乾久美子建築設計事務所
「沼津駅舎・駅前広場等デザイン基本計画策定業務」を担当するのは、SOCI・日建設計・乾久美子建築設計事務所共同事業者です。| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業務 | 沼津駅舎・駅前広場等デザイン基本計画策定 |
| 契約 | 2025年10月1日 |
| 履行期限 | 2027年3月31日 |
| 契約額 | 4,999万5,000円 |
| 構成 | SOCI、日建設計、乾久美子建築設計事務所 |
| 対象 | 駅舎、駅前広場、高架下、交通、ランドスケープなど |
新貨物ターミナルも線路切替に向けて工事進展


完成後の駅の検討と並行して、鉄道高架化の前提となる施設移転も進んでいます。静岡県・沼津市が2026年9月25日に発行した「新貨物ターミナル通信 第14号」によると、2026年8月時点で、現東海道本線を計画下り線と仮上り線へ切り替えるための軌道整備が進められています。
| 新貨物ターミナル | 2026年8月時点 |
|---|---|
| 敷地 | 約12ha |
| 軌道 | 計画下り線・仮上り線への切替準備 |
| 電気設備 | 電柱・ケーブルなどを施工 |
| 駅事務所 | 建設中 |
| バニング上屋 | 建設中 |
| 役割 | 現在の貨物駅機能を移転し、高架化用地を確保 |
貨物駅や車両基地を先に移転し、線路を段階的に切り替えながら高架構造物を建設する必要があります。このため、新貨物ターミナルと新車両基地の整備は高架本体工事に直結する重要な先行工程となっています。
2040年度まで続く巨大プロジェクト

沼津駅周辺総合整備事業は、複数の事業を組み合わせた長期プロジェクトです。
新貨物ターミナルは2023年10月、新車両基地は2024年11月に着工しました。鉄道高架化では東海道本線約3.7km、御殿場線約1.6kmを対象とし、最終的に13カ所の踏切を除却。全線高架への切替は2040年度を予定しています。一方、新駅舎と駅前広場については、それより早い段階で基本計画をまとめ、鉄道工事との整合を取りながら具体化していきます。
長年の「高架化問題」から、完成後の都市像へ

沼津駅周辺の高架化は長年、貨物駅や車両基地の移転を巡る調整が大きなテーマでした。
現在は移転先の施設が実際に建設され、その一方で、新駅舎・駅前広場・高架下空間についても具体的なデザイン検討が進んでいます。事業の焦点は、「高架化できるか」から、「高架化によって生まれる都市空間をどう使うか」へ移りつつあります。
新しい沼津駅では、高架駅、新コンコース、南北駅前広場、高架下の都市機能、公共交通、歩行者空間を一体化。周辺の土地区画整理や道路整備も組み合わせ、南北に分断されてきた中心市街地を再構成します。
鉄道高架の完成は2040年度とまだ先ですが、2027年3月までに策定される基本計画によって、完成後の沼津駅の規模、空間構成、駅前広場や高架下の使い方がさらに具体化していくことになります。
出典
- 沼津市「沼津駅舎・駅前広場等デザイン検討」
- 沼津市「沼津駅舎・駅前広場等デザイン基本計画策定業務委託」
- 沼津市「鉄道高架後の沼津駅舎・駅前広場 デザインイメージ案」
- 沼津市「高架でツナガル沼津のまちづくり」
- 沼津市「沼津駅周辺総合整備事業・事業費の概要」
- 静岡県「沼津駅周辺総合整備事業」
- 静岡県・沼津市「新貨物ターミナル通信 第14号」
- 沼津市「沼津駅舎・駅前広場等デザイン検討会議資料」
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