阪神タイガース二軍の旧本拠地が消滅へ!鳴尾浜球場跡に延床4.5万㎡の巨大冷凍冷蔵物流施設『ロジスタ鳴尾浜』着工



阪神電気鉄道と阪急阪神不動産は2026年10月7日、兵庫県西宮市の旧「阪神鳴尾浜球場」跡地で、大型冷凍冷蔵物流施設「ロジスタ鳴尾浜」の新築工事に着手したと発表しました。地上5階建て、延床面積約4.47万㎡のマルチテナント型物流施設で、2026年10月1日に着工、2028年10月末の竣工を予定しています。

計画地は、約30年間にわたって阪神タイガースの二軍本拠地として使用されてきた場所です。2025年のファーム施設移転によって生まれた跡地を活用し、阪急阪神不動産の物流施設ブランド「ロジスタ」シリーズ初の冷凍冷蔵物流施設を整備します。プロ野球の育成拠点から、関西の食品流通を支える物流拠点への大規模な土地利用転換となります。

約30年の歴史に幕、阪神鳴尾浜球場から物流拠点へ



阪神鳴尾浜球場は、長年にわたり阪神タイガースのファーム本拠地として使用されてきました。敷地内には選手寮「虎風荘」などの関連施設も集まり、一軍昇格を目指す若手選手の育成を支える拠点となっていました。

施設の老朽化や育成環境の充実を背景に、球団はファーム機能を尼崎市の「ゼロカーボンベースボールパーク」へ移転。新拠点には球場、練習施設、選手寮が集約され、鳴尾浜の旧施設は役割を終えました。
年月 主な動き
1994年 阪神鳴尾浜球場が竣工
2024年9月 ウエスタン・リーグ公式戦の開催終了
2025年2月 「ありがとう鳴尾浜」イベント開催、球場閉業
2025年3月 日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎が開業
2026年10月 ロジスタ鳴尾浜が着工
2028年10月末 新物流施設が竣工予定
今回の開発は、阪神電鉄が保有してきたスポーツ関連用地を、阪急阪神グループの物流不動産事業に活用するものです。臨海部に工場や物流施設が集積する鳴尾浜の立地特性を生かし、新たな事業拠点として再整備します。

延床約4.47万㎡、最大6区画の大型冷凍冷蔵物流施設



「ロジスタ鳴尾浜」は、大型車が3階まで直接乗り入れられるスロープ方式を採用し、複数のテナントが独立して利用できる施設構成とします。低温物流に求められる温度管理、荷役効率、保管能力を組み合わせた高機能倉庫です。

ロジスタ鳴尾浜の施設概要

項目 計画概要
施設名称 ロジスタ鳴尾浜
所在地 兵庫県西宮市鳴尾浜1丁目3番9
開発事業者 阪神電気鉄道、阪急阪神不動産
敷地面積 20,365.96㎡
延床面積 44,688.83㎡
構造・規模 鉄骨造、地上5階建て(倉庫4層)
用途 マルチテナント型冷凍冷蔵物流施設
テナント区画 最大6区画
温度帯 −25℃~+5℃(全冷凍区画で可変)
トラックバース 36台(1階・3階)
トラック待機場 15台
駐車場 127台
倉庫床荷重 1.5t/㎡
梁下有効高 5.5m(防熱施工後)
荷物用EV 各区画1基、積載荷重4.1t
設計・施工 淺沼組
設計・監理監修 フクダ・アンド・パートナーズ
共用部デザイン監修 乃村工藝社
着工 2026年10月1日
竣工予定 2028年10月末
各区画には垂直搬送機を設けるほか、陽圧除湿システムや遮熱用エアカーテンを採用します。結露や霜の発生を抑えながら冷却負荷を低減し、安定した低温保管と効率的な入出庫を両立する計画です。

冷凍食品市場の拡大と倉庫の老朽化、低温物流の需要を取り込む

開発の背景には、国内の低温物流市場で進む需要と供給の構造変化があります。

家庭用冷凍食品や外食チェーン向け食材、食品の通信販売など、低温管理を必要とする商品の流通は拡大しています。一方、既存の冷凍冷蔵倉庫では老朽化が進み、フロンガス規制に対応した冷媒設備の更新も課題となっています。建築費や設備投資負担の増大も、新規施設の供給を難しくする要因です。

ロジスタ鳴尾浜は、保管温度を幅広く変更できる設備によって、冷凍食品からチルド食品まで多様な商品に対応します。特定の温度帯に用途を固定せず、テナントの事業内容に応じて利用できる柔軟性が特徴です。

立地面では、大阪港と神戸港のほぼ中間に位置し、阪神高速5号湾岸線「鳴尾浜IC」から約600mという交通アクセスを確保しています。港湾経由の輸出入貨物を取り扱いやすく、大阪・神戸の都市圏をはじめとする関西広域への配送拠点としても適しています。

動物検疫検査場所としての申請に対応できる計画も盛り込まれており、輸入食品などの取り扱いを含めた幅広い物流需要の獲得を視野に入れています。

球場の「黒土」を内装に再利用、歴史を継承する物流施設へ



新施設では、阪神鳴尾浜球場の歴史を建物のデザインに取り込む特徴的な取り組みが行われます。

旧球場の内野グラウンドで実際に使用されていた黒土を、淺沼組の技術によって土壁左官材に再生。1階エントランスホールや各階エレベーターホール、ラウンジなどの内装に採用します。乃村工藝社が監修する共用空間には、球場のフィールドへ向かう際の高揚感を表現したデザインを取り入れます。



従業員向けには、自然光の変化を再現するサーカディアンリズム照明を備えたラウンジや、低温倉庫内で働く人のための採暖室を整備。ドライバー用休憩室も設け、物流施設としての労働環境にも配慮します。

環境面では、冷却設備にノンフロン自然冷媒を採用し、屋上には自家消費型の太陽光発電設備を導入します。省エネルギーと創エネルギーを組み合わせ、年間一次エネルギー収支を実質ゼロとする『ZEB』認証の取得を目指します。

また、停電時に48時間の電力供給が可能な非常用発電機を備え、受変電設備などの重要設備を2階以上に配置することで、災害時の事業継続性を高めます。

スポーツの育成拠点から、関西の食品物流を支える拠点へ



阪神鳴尾浜球場の跡地開発は、阪急阪神グループにとって、保有不動産の有効活用と物流事業の領域拡大を同時に進めるプロジェクトです。

冷凍冷蔵倉庫は、高度な設備と多額の初期投資を必要とする一方、食品流通を支える社会インフラとして安定した需要が見込まれる分野です。今回の開発は、こうした市場に「ロジスタ」ブランドとして参入する事業上の節目にもなります。

かつて若手選手が汗を流したグラウンドは、新たな物流施設へと姿を変えます。球場の黒土を建物の一部として残す試みは、地域に刻まれたスポーツの歴史を継承しながら、新しい土地利用へ移行する象徴的な取り組みといえそうです。




出典・参考資料

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