奈良・吉野の築約60年の小学校が大変貌!奥村組が「YOSHISHO」に再生、宿泊定員150人・温浴施設・カフェを備え2027年4月開業へ

大阪市に本社を置く奥村組は2026年10月6日、奈良県吉野町の旧吉野小学校を再生する複合型宿泊施設「YOSHISHO(ヨシショー)」の概要を発表しました。約150人が宿泊できる客室をはじめ、カフェテリア、温浴施設、ギャラリー、研修施設などを整備し、2027年4月にプレオープン、同年8月にグランドオープンする予定です。

2022年3月に閉校した旧吉野小学校の校舎を改修し、新たな宿泊・交流拠点として活用する計画です。興味深いのは、約60年前に同校を建設した奥村組が、今度は自ら事業主体となって再生に取り組むことです。

旧校舎を宿泊・温浴・飲食を備えた複合施設に転換



「YOSHISHO」は、既存校舎の改修と一部施設の新築を組み合わせた複合施設です。旧普通教室棟を宿泊棟、旧特別教室棟を交流棟に転換し、新たに温浴棟や回廊などを整備します。
施設 主な内容
宿泊施設 総定員約150人。キャビンタイプからファミリータイプまで7タイプの客室
まるたキッチン 約70席。朝食・ランチ・カフェ・ディナーに対応
桶湯 -OKU- 吉野にゆかりのある「桶」をテーマにした温浴施設
YOSHISHO GALLERY 吉野の歴史・文化・地域産品やアート作品を展示
レクチャールーム 企業研修、合宿、イベント、ワークショップに対応
その他 シェアキッチン、ジム、ラウンジ、ランドリー、広場など
施設の中心には広場を配置し、各棟を回廊「YOSHISHOリング」で結びます。施設名称は、地元で親しまれてきた吉野小学校の通称「吉小」に由来します。

宿泊者だけでなく、地元住民も飲食や温浴、運動、交流などに利用できる施設を目指しており、従来の学校が持っていた地域コミュニティの役割を、新しい形で引き継ぎます。

計画概要


項目 内容
施設名称 YOSHISHO(ヨシショー)
事業名称 旧吉野小学校学校跡地利活用事業
所在地 奈良県吉野郡吉野町大字上市2298
事業予定地面積 18,601㎡(公募時)
既存建物延床面積 5,368㎡(体育館含む)
事業主 奥村組
設計・監理 ムトカ建築事務所、桝谷設計
施工 松塚建設
整備方法 既存校舎・体育館の改修、一部解体・新築
工事着工 2025年12月16日
プレオープン 2027年4月予定
グランドオープン 2027年8月予定
運営期間 約20年間を想定(事業者選定時)
※敷地面積・既存延床面積は2024年の公募資料によるもので、完成時の建築規模とは異なります。

建築面では、1967~1968年に建設された鉄筋コンクリート造の校舎を再利用します。地上3階建ての宿泊棟、地上2階建ての交流棟を改修するほか、既存体育館の耐震改修、鉄骨造の温浴棟・エレベーター棟・回廊の新築を行います。

なぜ奥村組が廃校を再生するのか? 出発点は自社の研修施設


今回の事業の背景には、吉野町の廃校活用という課題と、奥村組の企業研修施設に対する需要がありました。

吉野町では少子化に伴う学校再編によって、吉野小学校と吉野北小学校が2022年3月に閉校しました。町は学校跡地の有効活用と維持管理に伴う財政負担の軽減を図るため、民間事業者による長期的な利活用を選択しました。



一方、奥村組では従来、新入社員研修を大阪本社で実施し、宿泊にはビジネスホテルを利用していました。自社研修所の整備が課題となるなか、閉校する吉野小学校が約60年前に自社で施工した建物であることが判明し、再生事業の検討につながりました。

奥村組の担当者は2026年9月の「旅と学びの協議会」のインタビューで、自社研修施設としての利用を基本としながら、研修で使用しない期間は一般宿泊や他社の企業研修にも開放する方針を説明しています。自社研修による基礎需要を確保しつつ、観光宿泊や飲食、温浴、地域利用を組み合わせることが、今回の事業モデルの特徴です。



奥村組は施設の整備だけでなく運営にも携わります。建物を建設して引き渡す従来の請負型事業とは異なり、地域と継続的に関わる新しい事業への挑戦でもあります。

工事は2025年12月に着工、2027年4月の開業に向けて進行中


時期 主な動き
2022年3月 吉野小学校閉校
2024年9月 奥村組を優先交渉権者に選定
2024年10月 吉野町と奥村組が基本協定締結
2025年11月 事業契約締結
2025年12月 解体・改修・新築工事着工
2026年10月 新名称・施設概要発表
2027年4月 プレオープン予定
2027年8月 グランドオープン予定
吉野町が2026年10月7日に公開した工事進捗によると、宿泊棟では外壁塗装が完了し、足場の解体が進んでいます。交流棟ではカフェテリア厨房の給排水設備工事が行われており、施設整備は内外装・設備工事の段階に入っています。

また、既存の体育館やグラウンドは地域住民の利用に配慮するとともに、災害時の避難所やドクターヘリの離着陸拠点としての機能を維持する計画です。宿泊・交流施設への転換と防災拠点の継承を両立させます。

吉野を「訪れる場所」から「滞在する場所」へ



今回の計画で注目したいのは、吉野山の観光だけに依存しない、新たな来訪需要を生み出そうとしていることです。

吉野は桜の名所として全国的な知名度を誇りますが、地域には林業、伝統産業、歴史文化など、四季を通じて体験できる資源があります。一方、観光客が町内に滞在する時間を延ばし、地域での消費につなげることは重要な課題です。


「YOSHISHO」は、約150人を受け入れられる宿泊機能に研修施設を組み合わせることで、企業研修、教育旅行、合宿、ワーケーションなど、観光の繁忙期以外にも一定の利用が見込める構成となっています。

とくに、企業研修と地域の製材所、伝統産業、歴史文化施設などを結び付ければ、施設内で完結しない滞在型プログラムへ発展する可能性があります。



建設会社が自ら施工した築約60年の校舎を再生し、企業研修を核に地域へ開放する。YOSHISHOは、廃校を単に別用途へ転換するのではなく、学校が持っていた「人が集い、学ぶ」という機能を現代の需要に合わせて再構築するプロジェクトといえます。

今後は宿泊料金や予約開始日、温浴施設の一般利用条件、地域と連携する体験プログラムなど、具体的な運営内容の発表が焦点となります。




出典・参考資料

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