出展:名古屋市
名古屋市は2026年10月1日、「新たな劇場整備運営事業」の実施方針と要求水準書案を公表しました。対象は、金山駅北側にあるNiterra日本特殊陶業市民会館。既存ホールを改修して使い続けるのではなく、現在の建物を解体し、同じ敷地に新しい劇場を全面新築します。
新施設には、固定席2,100席以上の第1ホールと1,400席以上の第2ホールを整備。スタジオや練習室、イベントスペース、飲食・物販、共通ロビーも設け、隣接する古沢公園と地下駐車場まで一体的に再整備します。
つまり今回の計画は、市民会館のリニューアルではありません。50年以上使われた大型文化施設をいったん取り壊し、金山の文化拠点そのものを造り直すプロジェクトです。
金山に何ができるの?
新劇場の延床面積は3万900㎡以下。2つの大型ホールを核に、創作、練習、交流、飲食までを一体化します。| 施設 | 計画内容 |
|---|---|
| 第1ホール | 固定席2,100席以上。音楽を中心にミュージカル、バレエ、舞踊、講演会など |
| 第2ホール | 固定席1,400席以上。演劇、舞踊、伝統芸能を中心に音楽公演などにも対応 |
| スタジオ | 音楽・演劇・ダンスの練習、本番利用、リハーサル |
| 練習室 | 合唱、吹奏楽、バンド、ダンスなど |
| 共通ロビー | 公演利用者以外も利用できる交流空間 |
| イベントスペース | 市民活動、イベント、交流利用 |
| 飲食・物販 | レストラン、カフェ、ショップなど |
| 古沢公園 | 5,219㎡以上で再整備 |
| 地下駐車場 | 地下2階・249台を改修 |
特徴的なのは、ホールだけを造るのではなく、公演がない日でも使える空間を大きく組み込むことです。ロビー、イベントスペース、飲食・物販、古沢公園をつなぎ、劇場を日常的に人が集まる都市空間へ変える考えです。
1972年開館の市民会館を「解体して新築」

出展:名古屋市民会館
現在の名古屋市民会館は1972年に開館しました。大ホール2,291席、中ホール1,146席を備え、半世紀以上にわたり名古屋のコンサートや舞台芸術を支えてきました。一方で、開館から50年以上が経過し、老朽化やバリアフリー対応が課題になっていました。今回の整備では、既存建物の骨格を生かす大規模改修ではなく、現市民会館を解体したうえで完全な新築施設へ置き換えます。市民会館は2028年3月末に閉館予定。その後、解体・設計・建設を進め、2035年の開館を目指します。
なぜ全面建て替えが必要なのか
名古屋市内では、大・中規模ホールの閉館などを背景に、既存文化施設の利用率や抽選倍率が高い状態が続き、公演会場を確保しにくい状況が生じています。そのため今回の計画は、古い市民会館を新しくするだけでなく、名古屋都市圏の大規模公演を受け止める文化インフラそのものを再構築する計画と位置付けられます。
将来は3ホール・約4,600席の文化拠点へ

金山の劇場構想は、今回の2ホールだけでは終わりません。
基本計画では、アスナル金山側に約900席の第3ホールを整備する構想があります。スタンディング時には約1,800人を収容できる「体感するホール」として、多目的イベントへの対応を想定しています。
| ホール | 基本計画の規模 | 現在地 |
|---|---|---|
| 第1ホール | 約2,200席 | 今回PFIの対象 |
| 第2ホール | 約1,500席 | 今回PFIの対象 |
| 第3ホール | 約900席 | アスナル金山側で別途検討 |
| 合計 | 約4,600席 | 長期構想 |
ただし、第3ホールは今回のPFI対象外です。
アスナル金山は建設費高騰などを背景に営業期限を2035年度末まで延長しており、第3ホールを含む再整備は別事業として検討されます。
基本計画では建設費約580億円

出展:名古屋市
2025年の基本計画では、現市民会館の解体と新劇場建設の概算事業費を約580億円と試算しています。これは2024年5月時点の建設物価に基づく数字で、今回PFIの予定価格ではありません。維持管理・運営費や周辺道路などのインフラ整備費も含まれていません。事業方式はPFI・BTO方式です。民間事業者が解体、設計、建設、開業準備を一体的に行い、完成後に施設を名古屋市へ移管。その後も維持管理・運営を担います。単に建物を造る発注ではなく、開業後にどう運営し、どう使われる施設にするかまで含めて事業者を選ぶ仕組みです。
2027年12月に事業者決定、2035年開業へ
| 時期 | スケジュール |
|---|---|
| 2026年10月 | 実施方針・要求水準書案公表 |
| 2027年4月 | 入札公告 |
| 2027年9月 | 入札書・事業提案書受付 |
| 2027年12月 | 落札者決定 |
| 2028年3月 | 事業契約 |
| 2028年3月末 | 現市民会館閉館 |
| その後 | 既存建物を解体、新劇場を建設 |
| 2035年10月1日まで | 新劇場開館 |
| 2050年3月 | PFI事業終了 |
今後の大きな節目は2027年12月の落札者決定です。事業者グループが決まれば、建築計画や客席数、施設配置など、新劇場の具体像が見えてきます。
金山の市民会館を「更新」ではなく「造り直す」

出展:名古屋市
今回の計画を一言でまとめるなら、古くなった市民会館のリニューアルではなく、文化拠点の全面的な造り直しです。1972年から使われてきた市民会館を解体し、3,500席以上の2つの本格劇場に、創作・練習、交流、飲食、公園機能を組み合わせます。
その先には、アスナル金山側の第3ホールを含む駅前再整備も控えています。
10月1日の実施方針公表によって、金山の新劇場は施設像を検討する段階から、実際に既存施設を解体し、新たな文化拠点を建設するための事業者選定フェーズへ進みました。
出典
- 名古屋市「新たな劇場整備運営事業に係るPFI手続き」
- 名古屋市「新たな劇場整備運営事業 実施方針」
- 名古屋市「新たな劇場整備運営事業 要求水準書(案)」
- 名古屋市「新たな劇場の基本計画」
- 名古屋市「アスナル金山エリア再整備事業」
- Niterra日本特殊陶業市民会館「市民会館の閉館について」
- 日刊建設工業新聞「名古屋市/新劇場整備事業は27年4月にWTO公告」(2026年10月2日)
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