『ヴィラプリンス軽井沢』290億円でコテージ233棟を124棟に再編!坂茂氏が設計、森と温泉を生かす「日本型ヴィラリゾート」へ



西武グループは2026年10月19日、軽井沢プリンスホテルの大規模リニューアルに伴い、新たなホテル名称を「ヴィラプリンス軽井沢」に決定したと発表しました。総事業費は約290億円。既存コテージ233棟を124棟の高級ヴィラに再編し、第一弾となる「東の杜」を2027年7月30日に開業します。

設計は世界的建築家の坂茂氏、ブランドデザインは原研哉氏が担当。今回の施設は新ブランド「VILLA PRINCE」の第1号に位置付けられ、国内外への展開も計画されています。

注目されるのは、宿泊棟数を約47%減らし、自然環境とプライバシーを高い付加価値に変える開発手法です。モルディブなどの高級ヴィラが海やビーチの魅力を生かしてきたのに対し、西武は軽井沢の森、温泉、雪景色を生かした、日本ならではのラグジュアリーリゾートを打ち出します。

290億円を投じて大規模再編。コテージ233棟を124棟に集約

今回の計画は2025年6月16日に発表されたもので、既存コテージの一部を解体し、建物の間隔を広げるとともに、1棟当たりの床面積を拡大します。2026年10月19日の発表では、ブランド名称や各エリアの構成、第一弾の開業日と施設内容が具体化しました。

リニューアル計画の規模

項目 イースト ウエスト 合計
改修前 97棟 136棟 233棟
改修後 41棟 83棟 124棟
新築 31棟 4棟 35棟
増改築 10棟 79棟 89棟
削減率 約58% 約39% 約47%
※2025年6月発表の計画に基づく。既存の「ザ・プリンス ヴィラ軽井沢」20棟は改修対象に含まれません。

一般的なホテル開発では、客室数の拡大が収益力向上の手段となりますが、今回は逆のアプローチです。建物の独立性、広さ、専用温泉、周囲の自然環境に投資することで、高い宿泊単価と長期滞在需要の獲得を目指します。

また、124棟のうち89棟は既存建物を増改築して再利用します。坂茂氏の設計では、既存の樹木や地形も生かし、開発による環境負荷の軽減を図る計画です。

4つのエリアに再編。最大259㎡の高級ヴィラも誕生



「ヴィラプリンス軽井沢」は、宿泊目的や利用者層に合わせた4エリアで構成されます。
エリア 主な特徴 開業・変更時期
東の杜 全41棟。愛犬同伴、森林滞在、スキーに対応 2027年7月30日
中の径 既存の「ザ・プリンス ヴィラ軽井沢」20棟を改称 2027年7月30日
西の峯 最大8名対応。家族や多世代旅行向け 2028年春以降
天の庭 最大259㎡。専属バトラーサービス付きの最上級ヴィラ 2028年春以降
ウエストエリアの「天の庭」には、浅間山を望む大型ヴィラを整備し、サウナやジム、スパトリートメントルームなどを設ける計画です。

なお、イーストエリアは2025年6月の当初計画で2027年5月開業を予定していましたが、今回の発表で2027年7月30日となりました。ウエストエリアについては、引き続き2028年春以降の順次開業を予定しています。

第一弾「東の杜」は全41棟。温泉、サウナ、ドッグランを完備



イーストエリアに誕生する「東の杜」は、客室面積86.53~127.20㎡、定員4~8名のヴィラで構成されます。全棟に坪庭を望むかけ流し温泉を備えるほか、客室内でのチェックインを基本とし、プライベートな滞在環境を整えます。

東の杜 客室構成

客室タイプ 棟数 主な特徴
ドッグヴィラ 22棟 専用ドッグラン付き。4~8名対応
フォレストヴィラ 9棟 プライベートガーデン付き。4~8名対応
スノーヴィラ 10棟 ゲレンデ直結。うち7棟に専用サウナ・ブロアバス
合計 41棟 全棟にかけ流し温泉
共用施設「杜のテラス」はレセプション棟とアクティビティ棟で構成され、愛犬同伴可能な68席のレストラン「二樹」、宿泊者専用ラウンジ、貸切サウナ2室、フィットネス、屋内外ドッグラン、ドッグ専用プールなどを整備します。



41棟のうち22棟をドッグヴィラが占めており、ペットツーリズムは今回の開発における重要な集客要素です。一方、ゲレンデ直結のスノーヴィラや既存のゴルフ場、ショッピング施設などを組み合わせることで、季節ごとに異なる滞在需要にも対応します。

共同通信によると、宿泊料金は4名用ヴィラで約16万5,000円からと報じられています。予約は原則2泊以上で、一般予約は2026年11月9日正午から受付開始。Seibu Prince Global Rewardsのダイヤモンド会員は10月30日、プラチナ会員は11月2日、ゴールド会員は11月5日から先行予約が可能です。

西武が狙う高付加価値化。広い土地と自然環境を宿泊商品に変える



今回の投資は、単なる客室の高級化にとどまりません。高級ホテルが広いスイートルームや眺望、ラウンジなどを主な付加価値としてきたのに対し、ヴィラでは建物の独立性、周囲の自然、プライベートな時間そのものが商品価値になります。

西武グループは軽井沢駅前に広大なリゾート用地を保有し、ホテル、スキー場、ゴルフ場、ショッピング施設を運営しています。こうした既存の観光資源を一体的に活用できることは、新規参入事業者にはない強みです。

また、新ブランド「VILLA PRINCE」の名称やロゴ、コンセプトを原研哉氏が手掛けることで、個別の高級宿泊施設ではなく、他地域にも展開できるブランドとしての価値を確立しようとしています。

一方、ヴィラ型リゾートは通常のホテルに比べて土地利用効率が低くなりやすく、独立棟の清掃や設備管理、送迎などのコストもかかります。高い宿泊単価を維持しながら、稼働率と連泊需要を確保できるかが収益性を左右します。

モルディブとは違う「日本型ヴィラリゾート」の可能性



ヴィラリゾートといえば、モルディブの水上ヴィラや東南アジアのプライベートプール付き客室が代表的です。しかし、日本には温泉、森林、雪景色、四季、伝統文化など、熱帯のビーチリゾートとは異なる観光資源があります。

すでに伊勢志摩の「アマネム」は専用温泉付きヴィラを展開し、「星のや軽井沢」は自然環境と一体化した分棟型の宿泊施設として独自の滞在体験を提供しています。

日本で考えられるヴィラリゾートの展開

類型 展開が考えられる地域 主な付加価値
温泉ヴィラ 箱根、伊勢志摩、由布院 専用温泉、庭園、和食
森林ヴィラ 軽井沢、那須、八ヶ岳 森林浴、暖炉、サウナ
スノーヴィラ ニセコ、白馬、富良野 雪景色、ゲレンデ直結、雪見温泉
オーシャンヴィラ 沖縄、瀬戸内、南紀 海の眺望、専用プール
文化体験型ヴィラ 京都、奈良、金沢 町家、庭園、茶道、食文化
※地域と類型は観光資源に着目した考察であり、西武グループの具体的な出店計画を示すものではありません。

日本には古くから、高級旅館の「離れ」という宿泊文化があります。独立した建物で温泉や食事を楽しむスタイルは、現代のヴィラリゾートとも共通します。

こうした日本独自の宿泊文化に、広いリビング、複数のベッドルーム、専用サウナ、国際水準のホテルサービスを組み合わせれば、海外のビーチリゾートを模倣することなく、独自の高級宿泊市場を開拓できる可能性があります。

軽井沢を起点に国内外へ。西武のヴィラ戦略は広がるか



西武・プリンスホテルズワールドワイドは、2035年に国内外250ホテル規模のネットワーク構築を目指しており、「VILLA PRINCE」もその成長戦略の一翼を担います。今後は国内外の広大な敷地を持つリゾートを中心に展開する方針ですが、軽井沢以外の具体的な出店先は公表されていません。

今回の開発は、西武が長年保有してきたリゾート用地の価値を、新しい宿泊スタイルによって引き出そうとする試みです。

モルディブが「海」を高級宿泊体験に変えたように、日本は「森・温泉・雪・四季」を世界に通用するヴィラブランドへと育てられるのか。

軽井沢で高単価の宿泊需要と安定した稼働率を確保し、その運営モデルを他のリゾートへ展開できれば、日本の観光地における新たな土地利用と高付加価値化のモデルになる可能性があります。




出典・参考資料

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