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大阪・関西万博は黒字になるのか?来場者数と収支ラインを徹底試算。目標の一般来場者2,300万人達成の現実性と必要な日平均とは?


大阪・関西万博2025は、世界中の注目を集める国家プロジェクトでありながら、その経済的妥当性や収支の見通しについては賛否が分かれています。「赤字確定」「無駄な支出」といった批判的な声も少なくありませんが、実際の財務構造と来場者動向をもとにすれば、より冷静で論理的な判断が可能になります。

本稿では、「チケット単価は実際いくらなのか?」「場内での来場者の消費はどれほどか?」「損益分岐点を超える来場者数とは?」といった基本的な問いを出発点に、構成比を用いたチケット単価の実算と、来場者数シナリオごとの収支予測を展開します。数値に基づく可視化を通じて、万博の経済的リアリティと報道とのギャップを浮き彫りにしていきます。

第1章:チケット購入者数の意味と収支シミュレーションの前提整理



収支計算の元になるのはチケットを購入した「一般来場者人数」です。吉村洋文大阪府知事は、収支分岐点をチケット購入者ベースで「1,800万人」と明言しています。一方、主催団体である博覧会協会はチケット販売目標を「2,300万人」としており、2,300万人の目標達成時の総来場者数を「2,820万人」と見込んでいます。
区分 数値 定義・位置づけ
損益分岐点(収支均衡点) 1,800万人 チケット購入者ベースでの収支均衡ライン。これを下回ると赤字、上回ると黒字。
チケット販売目標 2,300万人 協会が掲げる目標値。協会の収入試算の基準。
総来場者数目標 2,820万人 チケット購入者に関係者等を加えた「人流」の総量。国際博覧会のカウント慣例に基づく。
本稿では「一般来場者数(チケット購入者数)」に着目し、実際の収支に直結する数値として、分析を進めていきます。

第2章:販売構成比から導くチケット単価──加重平均5,880円の根拠



万博のチケット価格は多様であり、一日券の他にも前期券・平日券・通期パス・夜間券などが存在し、無料・招待券も一定割合を占めます。構成比を加味しない単純な平均では実態を把握できません。

2025年5月16日時点の販売構成比と枚数を基に加重平均単価を算出すると、最も販売枚数が多い一日券は69.17%(8,222,560枚)、次いで前期券9.26%(1,100,685枚)、平日券6.75%(802,939枚)などの比率となっており、結果として加重平均単価は約5,880円という実質値が導き出されました。
チケット種別 販売枚数 構成比 単価 加重影響
一日券 8,222,560枚 69.17% 6,110円 約4,226円
前期券 1,100,685枚 9.26% 4,000円 約370円
平日券 802,939枚 6.75% 5,000円 約338円
開幕券 454,949枚 3.83% 4,000円 約153円
夜間券 272,695枚 2.29% 3,000円 約69円
通期パス 214,560枚 1.80% 30,000円 約540円
無料・招待券等 約347,899枚(合算) 約3.0% 0円 0円
その他割引券 約334,101枚(推計) 約3.0% 各種 約184円(推定)
この価格をもとに、収支の「収入側」を試算します。

第3章:飲食と物販の実態──1人あたり場内支出と主催者収益の現実



主催者にとって、チケット以外のもう一つの収益柱が「場内消費」です。USJやフードフェスの実績を参考にしつつ、シビアに試算するために平均支出を超保守的に見積もり、飲食2,500円+土産500円=3,000円と仮定しました。そのうちフードフェスのマージン率を参考に主催者の取り分を20%とすれば、1人あたり600円が主催者の収益になります。
モデル 飲食 土産 合計支出 主催者取り分 主催者収益
USJ 約5,000円 約5,000円 約10,000円 非公開 不明
フードフェス 約3,000円 0円 約3000円 約20% 約600円
万博(超保守的モデル) 2,500円 500円 3,000円 20% 600円
この600円をベースに、場内収益を試算に組み込みます。

 

第4章:開幕5週の動員ペース──来場者数のトレンドをどう読むか


期間 一般来場者平均(日) 一般来場者 一般来場者累計 関係者来場者 総来場者
第1週 4/13〜4/19 7.5万人 52.5万人 52.5万人 11.5万人 64.0万人
第2週 4/20〜4/26 8.8万人 61.9万人 114.4万人 12.1万人 74.0万人
第3週 4/27〜5/3 9.0万人 63.1万人 177.5万人 12.3万人 75.4万人
第4週 5/4〜5/10 9.2万人 64.5万人 241.9万人 12.7万人 77.2万人
第5週 5/11〜5/17 10.8万人 75.5万人 317.4万人 12.4万人 87.9万人
来場者数は週を追うごとに増加傾向を示しており、特に第5週では、一般来場者の1日平均が約10.8万人という高水準を記録しました。これは、開幕初週の約7.5万人(日平均)から大幅な増加であり、SNSでの拡散や口コミ効果によって“実体験に基づく再評価”が着実に広がっていることを示唆します。

また、一般来場者比率が約84%程度で安定している点は重要です。これは、動員が行政や関係者ベースではなく、実際にチケットを購入した個人によって支えられているという証拠であり、計画の持続性と健全性を裏付けます。

さらに注目すべきは、特定イベント日やゴールデンウィークに限らず、平日も含めて来場ペースが比較的一定であるという点です。これは、会場が「一過性の話題」ではなく、「継続的に足を運ぶ価値のある場」として認識され始めている可能性を示します。

また、来場者の伸び方が直線ではなく、週を重ねるごとに勢いが増している点も重要です。これは、イベント体験者の口コミが拡散し、再来訪や周囲への波及を生み出している証左であり、いわゆる「ネットワーク効果」が働いている状態でしす。GWが終わっても来場者のペースが増加しており、SNSや口コミによる拡散が“体験者から次の来場者”へと波及している状況が読み取れます。

第5章:一般来場者数シナリオ別の収支変動──黒字幅を決める要因とは


シナリオ 一般来場者数 チケット収入
(億円)
場内収益
(億円)
総収入
(億円)
損益
(億円)
最小達成ライン 1,800万人 1,058.4 108.0 1,166.4 6.4
中位シナリオ 2,100万人 1,234.8 126.0 1,360.8 200.8
目標達成シナリオ 2,300万人 1,352.4 138.0 1,490.4 330.4
最大想定ライン 2,820万人 1,658.2 169.2 1,827.4 667.4
※ 各数値は想定単価(チケット平均5,880円、場内収益600円/人)および運営費1,160億円を基準に算出したシミュレーションです。
※「損益」は収入から運営費を差し引いた概算黒字・赤字額を示しています。

収支構造において最も重要な要素は、来場者数そのものです。支出はおおむね固定であるのに対し、収入はチケット収入と場内消費という2本柱で構成されており、いずれも来場者数に強く依存しています。

1人あたりの収益がチケット収入約5,880円+場内収益600円=約6,480円とすれば、来場者数が100万人増えるごとにおよそ64.8億円の総収入が積み上がる計算になります。この数字の重みは極めて大きく、黒字幅が「直線的」ではなく「指数的」に拡大していく要因にもなっています。吉村知事の発言にあっ「収支分岐点は、チケット購入者ベースで1,800万人」は、かなりリアルな数字の様です。

まとめ:黒字は射程圏か?──来場シナリオ別の着地予測と収益効果


シナリオ 一般来場者数 総来場者数 総収入(億円) 黒字幅(億円) 残り日数で必要な日平均
(一般来場者数)
最低ライン(現状維持) 1,902.9万人 2,268.1万人 1,233.1 73.1 10.79万人
中位(当ブログの予想) 2,128.0万人 2,536.4万人 1,379.0 219.0 12.32万人
目標(協会の目標達成) 2,300万人 2,741.4万人 1,490.4 330.4 13.49万人
高位(超過達成) 2,500万人 2,979.7万人 1,620.0 460.0 14.85万人
※ 一般来場者数はチケット購入者ベース、総来場者数にはAD証所持者(関係者)を含む推定です。
※ 単価:チケット平均5,880円+場内消費600円=合計6,480円/人として計算。
※ 運営費:1,160億円を基準に損益を算出。

現在のトレンドは、損益分岐点の1800万人と中位シナリオの間に位置しており「黒字化はほぼ間違いなし」ですが、協会の目標値である「一般来場者数2300万人」には届かないかも・・といった状況です。

ただし、国際博覧会は後半戦において来場が急増する傾向が強く、2005年の愛・地球博では6月以降に動員が加速し、最終的に2,200万人を突破しました。大阪・関西万博も同様に、8月以降の夏休み・シルバーウィーク、さらにはインバウンド増加が加われば、一気に目標ラインを突破する可能性があります。したがって、今後の1~2か月が、動員戦略・キャンペーン設計・プロモーションの成果を試す極めて重要な局面となります。




出典・参考資料

1 COMMENT

よっさんdsnmb

時間が無いので手短に。
各物販や飲食の売り上げはかなり好調のようです。
何しろ万博会場では混雑してお土産を買えない人が通天閣まで来て万博関連のお土産を買い求めているぐらいですから。

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