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TSMC、熊本で第2工場建設検討?米『CHIPS法』中国ガードレール条項が要因か?相次ぐ半導体工場への巨大投資の深層を読み解く

報道各社が伝える所によると、半導体受託生産の世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)は、日本で二つ目となる半導体工場の建設する方針を打ち出した、との事です。

TSMCは、同社が過半数を出資する子会社でソニーやデンソーが出資するJASMを設立し、熊本県菊陽町に1兆円を投じた半導体工場を建設していますが、さらなる大規模投資が行われる事になりました。

魏哲家CEOは、2023年1月の決算発表会見で、日本に2つ目の工場建設を検討していると述べました。TSMCは第2工場の建設場所などの詳細について明らかにしていませんが、最先端技術が保障される立地が必要で、2つの工場で人材や設備を共有できる点を重視しており、コスト削減などの面でメリットが見込める第1工場近くになる可能性が高いです。

 

TSMC熊本工場 JASM(tsmc Fab23)熊本県菊陽町の約21.3haの敷地に約1.1兆円投資、経済効果は約4.29兆円、鹿島建設が施工、建設工事の最新状況 23.04 【2024年12月出荷開始】



 

最先端の5~10nmプロセスを製造、2020年後半に稼働か?



第2工場は建設中の第1工場と同等規模以上で投資額は1兆円以上、第1工場よりも高度な技術が要求される、最先端の5~10nmプロセスを製造。2023年内に詳細を決め、2020年代後半の稼働開始を計画する予定です。TSMCは詳細についてコメントを避けましたが、日本政府からの支援や、主要顧客の需要見込みについて水面下で交渉していると見られます。

 

アメリカ国内の半導体エコシステム再構築を目指す『CHIPS法』



Photo by MANDEL NGAN/AFP via Getty Images


CHIPS法は、アメリカ国内の半導体産業に関する政策で、2022年8月にジョー・バイデン米大統領が署名し、成立しました。これはアメリカ国内の半導体エコシステムを再構築しつつ、国家安全保証の強化を目指す政策です。

米半導体工業会(SIA)によると、1990年にはプロセッサーの37%が米国で製造されていましたが、現在は12%にまで低下しており、台湾や韓国といった東アジア諸国が重要な地位を占めています。

半導体は、電気自動車、ノートPC、兵器システム、洗濯機、玩具など、あらゆる電子機器にとって必要不可欠な存在です。今回のパンデミックによって半導体の供給不足を経験したアメリカは、半導体製造を海外に依存することの危険性と重要性が改めて認識しました。

 



Photo by: TSMC Aerial photos show TSMC construction progress in May 2022, about a year after breaking ground.

ファブと呼ばれる半導体製造工場の新設には巨額の費用がかかります。アメリカは、CHIPS法を通じて、アメリカ国内の商業用の半導体製造施設の建設、拡張、現代化に対して500億ドル(約6.6兆円(1ドル=132円))の補助金を投じる事を決めました。さらに、CHIPS法には安全保障上の『ガードレール』と呼ばれる条項を追加しました。

 

中国を封じ込める『ガードレール』条項


Photo: Jakub Porzycki/NurPhoto/Getty Images

『ガードレール』条項は、半導体企業が米国政府から支援を受けるためには、中国などの「懸念国」で半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引を、向こう10年間行なわない事を商務省と合意する必要がある、というものです。

半導体製造の大手である台湾:TSMC、韓国:サムスン電子、SKハイニックスは、それぞれ、中国の南京、西安、大連の工場で半導体を生産していますが、CHIPS法に基づいてアメリカから補助金を受け取った場合、『ガードレール』条項によって、10年間、中国工場に投資ができなくなります。先端投資や工場の新増設投資ができなくなれば、これらの工場は死んだも同然となります。

アメリカは本気で中国の半導体産業を壊滅させしようとしており、台湾と韓国の半導体製造大手メーカーは、アメリカと中国のどちら側に着くかを迫られています。

台湾有事に対する保険の意味を込めて


Agence France-Presse — Getty Images

台湾はTSMCの本拠地で、多数の最先端の製造拠点が置かれています。一方、中国では習近平総書記の一強体制が明確になり「台湾統一」に強い意欲を示している事から、中国が台湾に軍事侵攻するリスクは一段と高まっています。

さらに、アメリカが打ち出したCHIPS法の『ガードレール』条項によって、半導体分野における自国の技術開発を確立する道が閉ざされる事になれば、中国はこれまで以上に台湾を切望するようになり、地政学的リスクが一気に跳ね上がります。TMSCは、これらの状況から、台湾有事に対する保険の意味を込めて、半導体の生産拠点の一部を他国・他地域に分散させる方針を打ち出しました。

日米欧の各国は、前述の通り「戦略物資」としての価値が高まっている『半導体』を安定的に確保する為に、多額の補助金を用意して先端半導体のファブを誘致しています。

TSMCが熊本工場の建設中に、さらに第2工場を建設する意向を示した理由は、米中の激しい対立と、経済安全保障上の課題を克服するためです。

【出展元】
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00664535
https://kumanichi.com/articles/967689
https://news.yahoo.co.jp/articles/5e7df7557c5a891fb8c19b1b65a446bb826529c2
https://www.japantimes.co.jp/news/2023/01/13/business/tsmc-second-plant/

https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/03/63703218078fb412.html
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00664535
https://kumanichi.com/articles/967689
https://news.yahoo.co.jp/articles/5e7df7557c5a891fb8c19b1b65a446bb826529c2
https://www.japantimes.co.jp/news/2023/01/13/business/tsmc-second-plant/

1 COMMENT

よっさんdsnmb

日米半導体摩擦も遠い昔の話になった。
昔、日本、今、中国。
今までもこれからも半導体は繁栄と摩擦の象徴であり続けるのでしょうな。

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