出典:任天堂 計画拡大前の完成イメージパース
任天堂は、京都市南区上鳥羽に位置する本社エリアにおいて、新たな研究開発拠点「任天堂 本社第二開発棟(仮称)」の建設を進めています。2022年4月に発表された当初計画は、鉄骨造12階建て、高さ約72m、延床面積約38,000㎡の規模で、2027年12月竣工予定でした。しかし、2023年以降の見直しにより、長期的な開発人員の増加を見据えた規模拡張が決定。新棟は13階以上に拡大され、完成時期も2028年以降へと延期される見通しとなりました。
今回の建設地は、京都市が公募型プロポーザルで募集していた市有地(約10,028㎡)で、任天堂は2022年に50億円で取得。敷地は本社ビルと2014年竣工の「本社開発棟」に挟まれており、まさに任天堂の研究開発エリアの中核を担う立地となります。
計画概要の変遷

出典:任天堂
時期 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
2021年12月 | 市有地募集 | 京都市による公募型プロポーザルで任天堂が有効活用事業者に選定 |
2022年4月12日 | 当初計画 | ・敷地面積:約10,028㎡ ・取得額:50億円 ・階数:地上12階、塔屋2階 ・延床面積:約38,000㎡ ・高さ:約72m ・竣工予定:2027年12月 |
2023年8月 | 拡張検討 | ・長期的な開発人員増を見据え規模拡大 ・13階以上へ変更の可能性 ・完成を2028年以降に延期 |
2023年11月 | 経営方針説明会 | ・古川俊太郎社長「研究開発強化において重要な役割」 ・ソフト開発体制強化、映像やIP事業にも活用 ・総額4,500億円規模の投資計画の一環 |
世界的競争力を支える「拠点投資」

任天堂は「Nintendo Switch」の後継機「Nintendo Switch 2」を2025年6月に発売し、2026年3月期中に1,500万台販売を計画。発売直後から需要が供給を上回る状況が続いており、株価は2025年8月に過去最高値を更新。時価総額は18兆6,426億円に達し、日本企業の中で第6位となりました。
こうした事業環境を背景に、任天堂は研究開発への投資を一層強化しています。2027年3月期までに最大1,000億円を投じて開発者を増員する方針を示し、さらに総額4,500億円規模の中長期的投資を計画。新棟の建設は、その象徴的な一手と言えます。
考察:都市空間に刻まれる「任天堂の存在感」

今回の開発棟建設は、単に任天堂の組織拡張を意味するだけではありません。京都市南区上鳥羽というロケーションは、かつては物流や工業地帯のイメージが強かったエリア。しかし近年では、任天堂の存在によって「世界的ゲーム産業の中核都市」としての再定義が進んでいます。
地上72m級の研究開発棟は、単なるオフィスビル以上の意味を持ちます。それは「京都に世界の知が集積する象徴」であり、都市のブランドを再構築するランドマークとなる可能性を秘めています。今後13階以上へと拡張されることで、京都のスカイラインにも新たなアクセントを与えるでしょう。
また、任天堂が自社雇用の開発者を増やす方針を取ることは、日本のゲーム産業全体に波及効果をもたらします。外注依存を軽減し、ソフト開発とIP展開を社内で深める体制は、安定したクオリティと独自性を保証するものです。加えて、映像事業やIPビジネスへの進出を見据えた拡張は、「ゲーム会社から総合エンターテインメント企業へ」という進化の兆しとも読み取れます。
2028年以降に訪れる「新世代の任天堂」

任天堂 本社第二開発棟は、竣工が2028年以降に延期されたものの、その意義はむしろ拡大しました。規模拡張は「需要に押されて建設計画を修正した」という受動的な動きではなく、積極的に未来を見据えた投資判断です。
「Nintendo Switch 2」の大ヒットと株価の過去最高更新が示すように、任天堂は今まさに企業の成熟と成長の両立を実現しつつあります。京都という伝統都市に新たに立ち上がる巨大な研究開発拠点は、単なる建築物ではなく、任天堂という企業の次の時代を象徴する“知の塔”として、国内外の注目を集めることになりそうです。
計画概要
所在地:京都市南区上鳥羽鉾立町11番2外5筆(地番)1
交通:地下鉄烏丸線「十条」駅 徒歩圏、近鉄京都線「十条」駅 徒歩圏
構造:―
階数:地上13階以上(当初:地上12階)
高さ:―(当初:約72m)
主用途:オフィス、商業施設、ホテル、駐車場
総戸数:―(住宅用途なし)
敷地面積:10,028.55㎡
※元創業支援工場:3,110.91㎡、元資器材・防災センター西側用地:6,917.64㎡
建築面積:―
延床面積:―(当初:約38,000㎡)
容積対象面積:―
建築主:任天堂
設計者:―
施工者:竹中工務店?
着工:―
竣工:2028年以降(当初:2027年12月予定)
2025年8月の様子
現地の様子です。既存建物が解体され、完全に更地になっていました。
北側から見た様子です。写真左側の建物は京都市上下水道局 総合庁舎で、左奥に任天堂の本社ビルが見えています。
北西側から見た様子です。
南西側から見た様子です。
工事現場の入口には、任天堂本社付随棟(車庫・倉庫)建設工事に関する看板が掲げられていました。建築主は任天堂、設計監理はNTTファシリティーズ・竹中工務店JV、施工は竹中工務店が担当しています。労働保険関係成立票によれば、事業期間は2025年6月から11月末までと記されていました。この工事は、新棟建設に先立つ付随工事と考えられます。
(仮称)任天堂 本社第二開発棟。規模を拡大するとの発表はあったものの、具体的にどの程度拡大されるのかは、まだ明らかになっていません。現地ではすでに付随工事が始まっており、今後の続報に期待が高まります。
今年の春頃だったと思いますが開発構想の概要みたいな看板がありました。たしか9階建て、高さ70メートル、延べ床面積5万平方メートルとかだったと記憶してます。しかしすぐに看板は撤去されました。