唐人町駅―みずほPayPayドーム間「動く歩道」構想とは何か 混雑対策を起点に進む!民間主導の人流インフラ整備


プロ野球・福岡ソフトバンクホークスは2025年12月16日、福岡市に対し、地下鉄唐人町駅みずほPayPayドーム福岡を結ぶ「動く歩道」の整備に向けた支援要望書を提出しました。高島宗一郎市長は「実現できるよう、市としてできることはしっかり協力したい」と述べ、前向きな姿勢を示しています。

この構想は、イベント開催時の混雑緩和を主目的としつつ、都市と民間事業者の役割分担のあり方にも関わる提案として注目されています。

1.なぜ今、唐人町―ドーム間が課題なのか


動く歩道のイメージ1

唐人町駅からみずほPayPayドームまでは徒歩で約15分かかります。プロ野球の試合や大規模イベント開催時には、唐人町駅の乗降客数が最大約3万人に達し、幅約3mの歩道に多くの来場者が集中します。

その結果、


  • 歩行者の安全確保が難しくなる

  • 周辺道路にも交通混雑の影響が及ぶ

  • 雨天時や高齢者、足の不自由な人にとって負担が大きい

といった課題が、長年指摘されてきました。

2.計画の概要:約1kmを屋根付き高架で接続

今回の構想では、唐人町駅周辺からドームの主要動線となる3番ゲート付近(3階デッキ、高さ約15m)まで、約1kmを屋根付きの動く歩道で結ぶ計画です。

ルートは、駅とドームを結ぶように流れる菰川の上空を想定し、高架構造とする案が示されています。要望書では、河川上などの公共空間の占用許可や、国の支援制度の活用について、市の協力を求めています。

完成時期や詳細な仕様、利用料金の有無については、現時点では未定で、今後の検討事項とされています。

3.期待される効果:単なる移動時間短縮にとどまらず

動く歩道が整備された場合、次のような効果が見込まれます。


  • 徒歩移動時間の短縮

  • イベント前後の混雑緩和

  • 雨天時でも濡れずに移動できる環境の整備

  • 高齢者や足の不自由な人の移動負担軽減

これらは、来場者の利便性向上だけでなく、イベント運営全体の安全性向上にも寄与すると考えられています。

4.事業者側の狙い:人流を「管理可能な導線」に変える

一方で、この構想は単なる歩行補助設備の設置ではありません。構造的に見ると、徒歩15分という移動上の負担を、球団が設計・管理できる専用導線に置き換える提案と位置づけることができます。

ホークス側にとっての主な狙いは、以下の点にあります。


混雑リスクの低減

イベント時の混雑は、転倒事故や救急対応、SNSでの批判につながる可能性があります。
専用導線を整備することで、人の流れを整理し、運営リスクを下げる効果が期待されます。


来場体験の安定化

徒歩移動は、天候や体力差によって来場意欲に影響します。
屋根付きで確実に到達できる導線は、来場体験を標準化し、動員の下支えとなります。


導線の活用価値

駅からドームまでの連続した動線は、広告や演出など、体験価値を高める空間として活用する余地があります。

5.福岡市の立場:民間提案で交通課題を解決する合理性

福岡市にとっても、唐人町駅―ドーム間の混雑は解決すべき交通課題です。ただし、市が主体となって整備を行う場合、財源確保や他地域との公平性が問題となります。

今回の構想は、市が募集した「交通に関する民間企画提案」の一つであり、


  • 民間の資金やノウハウを活用できる

  • 市の直接的な財政負担を抑えられる

  • 国の支援制度も活用できる可能性がある

といった点で、行政側にも一定の合理性があります。

6.河川上空を通す理由と、技術的な課題

ルートが菰川上空を想定している背景には、地上での用地買収や合意形成の難しさがあります。一方で、河川上空を活用する場合、次のような課題も避けて通れません。


  • 豪雨時の治水や排水機能への影響

  • 下水路との干渉

  • 高架構造による周辺住宅のプライバシーや景観への配慮

これらについては、今後の技術的検討と住民理解が不可欠となります。

7.今後の焦点となる3つの論点

計画を具体化する過程で、特に重要となる論点は次の3点です。


  1. 公共性の確保
     無料か有料か、誰が利用できるのかといった通行権の扱い。

  2. 維持管理・更新の責任
     動く歩道は維持管理コストが高く、長期的な費用負担の整理が必要です。

  3. 災害時の対応
     豪雨や災害時に、安全性と河川管理をどう両立させるか。

8.「動く歩道」は目的か、手段か

動く歩道のイメージ2

最終的な目的は、動く歩道そのものではなく、屋根付きで連続した安全な歩行導線の確保と考えられます。動く歩道は、その導線を分かりやすく示すための一つの手段であり、象徴的な装置とも言えます。

唐人町駅―みずほPayPayドーム間の構想は、スタジアム運営と都市交通の関係を見直す試みでもあります。
今後、具体的な設計や運営のあり方がどのように整理されていくのか、引き続き注目されます。






出典・参考資料

  • 日本経済新聞(2025年12月16日)

  • 西日本新聞(2025年12月29日)

  • 読売新聞(2025年12月17日)

  • RKB毎日放送(2025年12月16日)

  • 福岡市 住宅都市みどり局交通計画課 発表資料(2025年12月15日)

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