香港『エアポート・エクスプレス』乗車レポ。世界都市の空港アクセスとは何かを、利用者体験で理解できる路線だった!

出展:https://www.mtr.com.hk/

先日、香港へ行ってきました。目的のひとつは、トップティアの世界都市が持つ交通インフラやCBD(中心業務地区)が、実際にどのように機能しているのかを自分の目で確認することでした。

大阪はこれまで国内第2位の都市として存在感を持ってきましたが、近年はUSJの成長、インバウンドの拡大、大阪・関西万博の開催、さらに2030年秋予定のMGM大阪開業といった材料が重なり、「国内有力都市」から「世界都市」へ進化する局面に入りつつあります。だからこそ、すでに世界トップ級の都市を歩き、交通インフラの完成度を体感してみたいと考えました。

その視点で今回取り上げるのが、香港国際空港と香港都心部を結ぶ空港アクセス鉄道「エアポート・エクスプレス(機場快線)」です。今回実際に使ってみて感じたのは、この路線が単に「空港まで早い鉄道」ではないということでした。香港エアポート・エクスプレスは、世界都市の空港アクセスとは何かを、利用者体験のレベルで見せてくれる路線だったと思います。

エアポート・エクスプレスの概要


エアポート・エクスプレスは、博覧館駅、空港駅、青衣駅、九龍駅、香港駅の5駅を結ぶ専用空港鉄道です。香港国際空港と市内中心部を結ぶ35.3kmを、香港駅まで最短約24分で結びます。空港駅から青衣駅まで約14分、九龍駅まで約22分。列車は概ね10分間隔で運行されており、香港の空港アクセスを支える基幹インフラのひとつです。

料金は利用方法によって異なります。大人片道は、オクトパス利用で香港駅まで120香港ドル、九龍駅まで105香港ドル、青衣駅まで73香港ドル。スマートチケット利用では香港駅まで130香港ドル、九龍駅まで115香港ドル、青衣駅まで80香港ドルです。往復券も設定されています。

大阪に置き換えて考えると、南海ラピートが8両編成・全席自由席で約10分間隔運転となり、関西空港〜難波間を約24分で結んでいるような感覚に近いです。しかも、それが都心直結の空港鉄道として一体で提供されている。この時点で、かなり強い路線だとわかります。

実際に使って感じた完成度

まず印象に残ったのは、空港駅までの導線のわかりやすさです。香港国際空港は規模の大きい空港ですが、エアポート・エクスプレスへの接続は整理されており、案内表示に従って進めば初めてでも迷いにくい構成です。

電車の乗り場が上下二層構造になっており、国際線到着→香港駅、香港駅→国際線出発がそれぞれフラットな動線で接続されています。これは本当にすごい。チケットは窓口や券売機、オンラインで購入でき、オンライン購入分はQRコードで利用できます。空港側で細かな判断を何度も求められず、自然にホームまでたどり着ける。この段階で、空港アクセス鉄道としての設計のうまさを感じました。


2層構造の空港駅。上段が市内から到着、下段が空港から市内へ出発

さらに驚いたのが、空港駅に「改札口がない」ことです。チケットのチェックは香港市内側でのみ行われ、空港利用者は電車を乗り降りする際、そのままフリーで香港市内やチェックインカウンターに向かうことができます。これは、エアポート・エクスプレス線が空港利用者に特化して施設整備された成果です。

乗車後は、さらに完成度の高さが見えてきます。発車後の加速は鋭く、車内は静かで、都心までの移動が非常にスムーズです。数字としての24分も十分速いですが、実際の体感はそれ以上に短い。待ち時間、導線、車内環境まで含めて移動全体のノイズが少ないため、ストレスなく都心へ入っていけます。

特に大きいのは、24分で都心に到達する列車が約10分ごとに来ることです。速い列車があるだけでなく、それが高頻度で提供されているため、利用者は時刻表を細かく気にせずに済みます。ここが、この路線の強さの核心です。

車内は派手ではないが、必要なものが揃っている

車内は通勤電車のような慌ただしさがなく、空港アクセス列車らしい余裕があります。座席は2-2配列のクロスシートで、全席自由席です。時間帯によっては立っている利用者も見られますが、概ね10分間隔で列車が来るため、激しい混雑になりにくく、1本待てば座れることも多いです。

シートは集団見合い配置の固定式で、リクライニング機能はありません。

ただ、座席背面にはUSB給電ポートがあり、座面のクッション性も良く、腰まわりをしっかり支えるつくりです。固定席とは思えないほど座り心地が良いく、短時間の空港アクセス列車としては十分に快適でした。

荷物スペースもしっかり確保されており、大型のトランクケースでも無理なく置けます。無料Wi-Fiや指定車両での充電サービスも含め、旅行者や出張客が必要とする機能は一通り揃っています。豪華さを売りにした列車ではありませんが、必要なものを外していない。ここも評価できる点です。

この路線の本当の強さは「一本のシステム」であること

香港駅の改札口。乗車、降車の際にQRコードなどをかざす

香港エアポート・エクスプレスの強さは、24分という速さそのものではありません。空港ターミナルと駅が一体的に設計され、改札を強く意識させないシームレスな空港駅、快適な車内、そして来た電車に乗れば最短で都心部へアクセスできる利便性。こうした要素が、空港、アクセス鉄道、都心側の駅まで含めて、ひとつの移動システムとして一貫して構築されている点にあります。

利用者は、どの会社を使うか、どの種別が最適か、どこで乗るかを細かく考え込まなくていい。空港に着いたら、案内に従って進み、来た電車に乗れば、短時間で都心へ入れる。この「考えなくても便利さが伝わる」ことが、香港エアポート・エクスプレスの最大の価値だと思います。

関空アクセスと比べると違いがよくわかる

ここで面白いのは、単純な供給本数だけなら関空アクセスもかなり強いことです。南海はラピートが毎時2本、空港急行が毎時4本、JRははるかが毎時2本、関空快速が毎時4本で、両社合計では速達型の有料特急が毎時4本、主要駅停車型の急行系が毎時8本という構成になります。単純な本数だけを見れば、関空アクセスはかなり手厚いです。

ただ、体感は少し異なります。関空アクセスは南海とJRに分かれており、行き先や乗車駅によって使い分けが必要です。そのため、供給量の多さのわりに、利用者の感覚としては「ひとつの強い空港アクセス軸がある」という印象になりにくい面があります。


一方、香港はエアポート・エクスプレスという一本の空港鉄道に機能が集約されています。24分という速さと約10分ごとの高頻度運転が一体で提供されているため、利用者は複雑な判断をせずに済み、利便性の高さを直感的に体感できます。ここは、単純な本数比較だけでは見えにくい、香港と関空アクセスの大きな違いです。

なにわ筋線が乗り入れる予定の「大阪駅地下ホーム」

大阪の転機は、やはり2031年春の「なにわ筋線」の開業です。南海ラピートの梅田方面乗り入れや、はるかの都心直結性向上によって、天王寺、難波、梅田、新大阪を空港アクセス列車が縦につなぐ構図が見えてきます。大阪駅地下ホームに行けば空港アクセス列車が頻発するようになれば、利用者は複雑な判断をせずに済み、利便性の高さを直感的に体感しやすくなります。香港エアポート・エクスプレスの強さも、まさにそこにありました。

香港の体験が大阪に示すもの

今回使ってみて感じたのは、空港アクセスの評価は、運行本数や表定速度の数字だけでは決まらないということです。利用者が「便利だ」と直感的に感じられるかどうかまで含めて設計されているか。その点で、香港のエアポート・エクスプレスは非常に完成度が高い路線でした。

香港国際空港自体も拡張が進んでおり、新しいターミナル2の出発施設は2026年5月27日に供用開始予定です。空港全体の機能強化とともに、エアポート・エクスプレスの重要性もさらに高まると考えられます。

大阪がこれから世界都市としての段階を上がっていくうえで、空港と都心をどう結ぶかは今以上に重要になります。その意味でも、香港のエアポート・エクスプレスは参考になる点が多い路線でした。

まとめ


香港エアポート・エクスプレスは、世界都市の空港アクセスとは何かを、利用者体験のレベルで見せてくれる路線でした。

35.3kmを香港駅まで最短約24分で結び、概ね10分間隔で運行する。車内は静かで、荷物スペースやWi-Fi、充電環境も整っている。導線もわかりやすく、利用者は複雑な判断をせずに済む。こうした要素が一本のシステムとして統合されているからこそ、利便性の高さを直感的に体感できます。

空港と都心をどうつなぐかは、世界都市の競争力を支える重要な要素です。香港の強さは、空港鉄道が速いことではなく、利用者が「考えなくても便利だ」と感じる構造を実装していることにある。その点で香港は、非常に高いレベルにあると感じました。






出典元

  • 香港MTR公式「Airport Express Services」
  • 香港MTR公式「Tickets Type and Fares」
  • 香港国際空港公式「Passenger Departure Facilities at new Terminal 2 Open on 27 May」

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