2026年1月26日、関西エアポートは、同社が運営する関西3空港(関西国際空港・大阪国際空港・神戸空港)の2025年(暦年)利用実績を発表しました。それによると、2025年の関西3空港合計の航空旅客数は約5,433万人となり、コロナ禍前の2019年(5,178万人)を上回って、暦年として過去最高を更新しました。
2024年暦年(約4,937万人)と比較すると、約10%の増加となります。この結果から、関西の航空需要は単なる回復局面を超え、新たな需要水準へ移行しつつあることが確認できます。
2024年暦年との比較で見える全体像
| 空港 | 年 | 発着回数(回) | 国際線旅客数(人) | 国内線旅客数(人) | 総旅客数(人) |
|---|---|---|---|---|---|
| 関西空港 | 2024 | 193,134 | 23,912,642 | 6,730,871 | 30,643,513 |
| 2025 | 212,224 | 27,525,575 | 6,571,307 | 34,096,882 | |
| 伊丹空港 | 2024 | 137,286 | ― | 15,157,501 | 15,157,501 |
| 2025 | 138,352 | ― | 16,175,135 | 16,175,135 | |
| 神戸空港 | 2024 | 33,300 | ― | 3,576,118 | 3,576,118 |
| 2025 | 36,283 | 405,245 | 3,654,610 | 4,059,855 | |
| 3空港合計 | 2024 | 363,720 | 23,912,642 | 25,464,490 | 49,377,132 |
| 2025 | 386,859 | 27,930,820 | 26,401,052 | 54,331,872 |
2025年の実績を2024年と比較すると、次のような特徴が見られます。
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総旅客数:約10%増
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国際線旅客数:増加基調が継続
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外国人旅客数:2,173万人(前年差 約15%増)
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国内線旅客数:前年比104%と緩やかな増加
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発着回数:約6%増
2024年が「コロナ禍からの回復状況を確認する年」だったとすれば、2025年は旅客規模そのものが一段上の水準へ移行した年と位置付けることができます。
関西国際空港:国際線を軸に成長を担う基幹空港
関西国際空港では、2025年も国際線を中心に利用が拡大しました。
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国際線旅客数:約2,753万人(暦年過去最高)
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外国人旅客数:約2,173万人(開港以来初の2,000万人超)
インバウンド需要が引き続き成長を牽引しており、関西国際空港が国際拠点空港としての役割を一段と強めていることが分かります。一方で、今後を見据えると、短期的には以下の要因によって伸びが一時的に鈍化する可能性も考えられます。
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大阪・関西万博後の反動
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中国の海外渡航政策や経済環境の影響
ただし中長期的には、
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アジア諸国の継続的な経済成長
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インバウンド市場そのものの拡大
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第1ターミナル再整備などによる空港機能強化
といった構造要因により、航空需要の絶対量は引き続き増加していく前提にあります。
関西国際空港が掲げる年間4,000万人、さらには5,000万人規模を視野に入れた成長方針は、短期的な変動を挟みながらも、中長期では継続して追求されるものと考えられます。
大阪国際空港(伊丹):制約下で安定運用が続く国内基幹空港
大阪国際空港(伊丹)は、発着回数が制度上の上限に近い水準で推移しています。
その中で近年は、
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機材の大型化
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搭乗率の向上
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ダイヤの効率化
などにより、発着回数を大きく増やさずに旅客数を積み上げる運用が続いています。
今後もしばらくは緩やかな増加が見込まれますが、制度的な制約が存在する以上、大幅な成長余地は限られており、天井は比較的近いと見るのが現実的です。伊丹空港は引き続き、国内航空需要を安定的に処理する基幹空港としての役割を担っていくことになります。
神戸空港:規制緩和と国際線就航で成長フェーズへ
神戸空港は、関西3空港の中でも比較的高い伸び率を示しています。2025年の総旅客数は約406万人(前年比約14%増)となり、2024年に続いて増加基調が確認されました。
今後は‥-
発着回数の規制緩和
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国際線の本格就航
によって、これまで抑制されてきた需要が顕在化する可能性があります。
旅客規模としては、
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500万人、600万人規模
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さらに2030年代に1,000万人規模
といった成長シナリオも、施設整備と運用次第では視野に入ります。一方で、ターミナル容量や動線、アクセス面など、施設側の対応が今後の成長を左右する重要な要素となります。
関西3空港の実績が示す、都市圏としての受け入れ能力
ここまで見てきた2025年暦年の関西3空港の利用実績は、単なる一時的な需要回復や万博要因だけでは説明しきれない側面を持っています。
関西国際空港・大阪国際空港(伊丹)・神戸空港が、それぞれ異なる役割を担いながら旅客数・発着回数を積み上げてきた状況は、関西という都市圏全体が持つ受け入れ能力そのものが拡張してきた結果と捉えることができます。
国際線を担う関西国際空港、国内線を安定的に処理する伊丹空港、そして成長余地を持つ神戸空港という役割分担が機能することで、単一空港では処理しきれない需要を、都市圏全体で吸収できる構造が形成されつつあります。
2025年の実績は、関西3空港体制が「回復期の応急的な分業」ではなく、中長期的な成長を前提とした運用段階に入っていることを示しているといえるでしょう。
都市の成長と空港規模の関係
では、この都市圏としての受け入れ能力は、何によって規定されているのでしょうか。その鍵となるのが、都市と世界を結ぶ最大のインフラである空港の規模と処理能力です。
都市の成長は、人口規模や再開発の規模だけで決まるものではありません。本質的には、人・モノ・カネ・情報がどれだけ低コストかつ高速に都市へ出入りできるかという、都市の入出力能力によって左右されます。
空港は単なる交通施設ではなく、都市と世界を結ぶ最大規模の入出力装置です。滑走路の本数、発着枠の余裕、ターミナル面積、CIQ(税関・出入国・検疫)の処理能力、貨物動線の規模は、都市が同時に処理できる国際的な人流・物流の総量を直接的に規定します。この処理能力が限られている都市では、内部に魅力的な資源やコンテンツがあったとしても、成長はどこかで頭打ちになりやすい構造を抱えることになります。
また、空港規模は「世界との距離」にも影響します。直行便の多さやハブ空港との接続性、乗り継ぎのしやすさは、都市と世界との移動コストや時間的摩擦を低下させます。摩擦が小さい都市ほど、グローバル企業の拠点立地、国際イベント、高付加価値人材、インバウンド消費などが集積しやすくなります。これは個別施策の成果というより、インフラ構造がもたらす結果といえます。
さらに、空港は将来需要を見越して整備される、数少ない都市インフラです。滑走路や空港用地は後から容易に拡張できず、一度制約が固定化されると修正は困難になります。その意味で、空港の規模や拡張余地は、その都市が将来どこまで成長することを想定しているかという意思表示でもあります。
まとめ
2025年暦年の関西3空港の利用実績は、関西という都市圏が、空港という物理的インフラを通じてどの程度の国際的な人流・物流を受け止められる段階に到達しているのかを、具体的な数値として示しました。
短期的な変動要因は残るものの、中長期ではアジアを中心とした需要拡大を背景に、関西の航空ネットワークは引き続き拡大していく見通しです。
今後は、
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国際線需要の受け止め方
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制約下にある伊丹空港の運用最適化
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神戸空港の成長に対応する施設整備
といった点が、次の注目ポイントとなりそうです。
出典
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関西国際空港・大阪国際空港・神戸空港
「2025年(1–12月)利用状況」
(関西エアポート株式会社 2026年1月26日発表)








