滋賀県、高島・大津・東近江で新産業用地120.41haを整備へ 総事業費252.7億円、2030~32年度の分譲目指し環境手続きが本格化



滋賀県が、高島市・大津市・東近江市で進める新たな産業用地開発が実施段階に入ります。

3地区の開発面積は計120.41ha、企業用地は約61ha、概算事業費は約252.74億円。2025年度に基本計画をまとめ、2026年度から環境調査や設計などに着手しています。

背景には、製造業を中心とする旺盛な設備投資需要に対し、県内でまとまった産業用地が不足していることがあります。

3地区で120.41ha、企業用地約61haを供給


地区 開発面積 企業用地 概算事業費 分譲予定
高島市・マキノ町西浜 15.40ha 約11ha 約45.65億円 2030年度
大津市・湖西台 63.37ha 約26ha 約119.64億円 2032年度
東近江市・鈴町/蒲生大森町 41.64ha 約24ha 約87.45億円 2032年度
合計 120.41ha 約61ha 約252.74億円
開発区域の約半分を企業用地とし、残りには道路、調整池、緑地、法面などを整備します。

最大案件は大津・湖西台で、開発面積63.37ha、概算事業費119.64億円。3地区全体の事業費の約47%を占めます。

「企業は来たいが土地がない」 県主導の用地開発へ

今回の事業は、滋賀県が産業用地確保のあり方を転換したことから始まりました。
時期 主な動き
コロナ禍後 サプライチェーン再編などを背景に設備投資需要が拡大
2023年 県が産業用地不足を政策課題として明確化
2024年 「滋賀県産業立地戦略」を始動。産業用地確保を重点施策に位置付け
2024年度 市町から候補地を募集し、交通、雇用、区画、分譲価格などを審査
2025年1月 高島・大津・東近江の3地区を開発候補地に選定
2025年度 基本計画を策定
2026年度 環境手続き、測量、設計へ移行
県は約2,400社を対象とした調査などから立地需要を確認しており、三日月大造知事も2024年時点で、用地不足を理由に企業案件を断っている実態に言及しています。

2025年の県内工場立地は22件、取得面積50.1ha。今回供給する企業用地約61haは、この年間取得面積を上回ります。

県が狙うのは、新規企業の誘致だけではありません。
目的 得られる効果
企業流出の防止 県内企業の増設・再投資を県内で受け止める
新規企業誘致 大規模区画を用意し、これまで対応できなかった案件を獲得
成長産業の集積 半導体、蓄電池、新モビリティ、医薬・医療、バイオ、情報通信などを誘致
地域経済の拡大 設備投資、雇用、域内取引、税収を拡大
産業構造の高度化 生産拠点に加え、研究開発や高付加価値機能の集積を促進
滋賀県は製造業の集積度が高い「モノづくり県」です。用地、道路、人材、支援制度を一体的に整え、企業誘致競争の中で「世界から選ばれる滋賀」を目指します。

3地区は立地条件と造成条件が異なる


地区 特徴 事業費の変化
高島 JRマキノ駅、国道161号に近接する平坦地。3地区で先行整備 約6億円増
大津 真野ICに近く、湖西道路4車線化の効果も期待される最大規模の開発 約17億円増
東近江 蒲生スマートICから約4km。2方向アクセスを確保し、大規模区画に対応 約20億円減
東近江では、切土・盛土を区域内で調整して土砂の場外搬出を抑える計画へ見直し、約20億円を圧縮しました。高島・大津の増額を相殺した結果、3地区全体の事業費増は約3億円にとどまっています。

また東近江の計画地には、かつて「びわこ空港」関連構想に絡んだ土地も含まれます。長期間まとまった未利用地として残ってきた土地が、産業拠点として再始動します。

2026年度から環境手続き、2030~32年度の分譲へ


産業用地(マキノ町西浜地先)(一部工場適地)

滋賀県は2026年7月21日、3地区の環境関連業務を公告しました。
地区 手続き 履行期限
高島 動植物、地形・地質などの自然環境調査 2028年3月17日
大津 環境アセスの配慮書・方法書作成 2028年3月17日
東近江 環境アセスの配慮書・方法書作成 2028年3月17日
大津と東近江は滋賀県環境影響評価条例に基づく環境アセス、高島は自然環境保全条例に基づく調査です。

今後は、環境調査・測量 → 用地処理 → 基本・詳細設計 → 開発協議 → 造成工事 → 企業分譲へ進みます。

高島は2030年度、大津・東近江は2032年度の分譲を予定しています。ただし、大津・東近江では大規模造成や環境アセスを伴うため、調査結果、地権者協議、許認可、工事費などによって工程や事業費が変動する可能性があります。

252.7億円でつくる「大型投資を逃さない基盤」

この事業で滋賀県が整えようとしているのは、企業から大型投資の打診を受けた際、すぐに候補地を提示できる産業基盤です。

半導体や蓄電池などの大型案件では、用地の有無そのものが誘致競争への参加条件になります。土地を先行して用意することで、企業進出を待つ側から、投資を能動的に呼び込む側へ転じる狙いです。

今後の焦点は造成そのものではなく、約253億円の先行投資を、どれだけ民間設備投資と雇用、税収、産業集積へ転換できるかに移ります。




出典

  • 滋賀県「滋賀県産業立地戦略」
  • 滋賀県「県と市の連携による産業用地開発事業について」
  • 滋賀県「令和7年 工場立地動向調査の結果概要」
  • 滋賀県「産業用地開発自然環境調査業務委託(高島地区)」
  • 滋賀県「産業用地開発環境影響評価業務委託(大津地区)」
  • 滋賀県「産業用地開発環境影響評価業務委託(東近江地区)」
  • 滋賀県知事定例記者会見
  • 滋賀報知新聞

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