出展:地域計画建築研究所
大阪府が、府内に残る古民家集落を観光拠点として再生する取り組みを本格化させます。府は2026年7月30日、「古民家を活用したまちづくり推進業務」の最優秀提案事業者に、地域計画建築研究所大阪事務所を選定しました。今後、府内の古民家集落を調査し、事業化の可能性が高い地域を絞り込みます。
今回の事業は、古民家を1棟だけ保存・改修するものではありません。複数の建物を宿泊、飲食、物販、交流施設などへ転用し、景観、食、歴史、文化、体験コンテンツと組み合わせることで、集落全体を一つの滞在先として再生する取り組みです。
古民家を残すだけでなく、観光客の滞在と地域内消費を生み出し、地域経済の中で使い続けられる仕組みへ転換することを目指します。
約20地区から4地区へ絞り、2地区を重点支援

出展:八尾市
仕様書では、府内の古民家集落から約20地区を一次候補として抽出します。所有者、自治体、地域団体、民間事業者などへのヒアリングを通じて約4地区に絞り込み、うち2地区で2027年度以降の事業化に向けた準備を進めます。| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 候補抽出 | 府内の古民家集落から約20地区を選定 |
| 絞り込み | 関係者へのヒアリングを経て約4地区へ |
| 重点支援 | 2地区で事業化に向けた体制や事業内容を検討 |
| 2027年度以降 | 地域組織の構築や所有者とのマッチングを支援 |
将来的には、各地区で3~5件程度の古民家を活用する構想です。一つの大型施設に機能を集約するのではなく、宿泊、飲食、物販、交流などの機能を複数の建物へ分散させ、集落全体を滞在型の観光拠点へ変えていきます。
昭和25年以前の木造住宅は約5万3,000戸

出展:八尾市
大阪府内には、1950年(昭和25年)以前に建てられた木造住宅が約5万3,000戸あり、都道府県別では全国最多とされています。一方、2013年(平成25年)から2023年(令和5年)までの10年間で、約1万8,000戸減少しました。この数字は建築年代と構造による集計であり、すべてが伝統的な古民家を意味するものではありません。
それでも、府内に多くの古い木造住宅が残る一方、所有者の高齢化や相続、維持費の負担、空き家化によって急速に失われている実態が浮かび上がります。
大阪府は、こうした建物を宿泊や飲食などの収益を生む用途へ転換し、保存から「稼働」へつなげようとしています。古民家での滞在を地域の飲食店や物販、歴史散策、農業体験、サイクリングなどへ結び付け、観光客の滞在時間と地域内消費を増やすことも狙いです。
成否を分けるのは、改修後も回り続ける仕組み

出展:八尾市
古民家の再生には、耐震、防火、避難動線、空調、水回りなどの改修が欠かせません。しかし、建物を整備するだけでは事業は成立しません。古民家の多くは個人所有であり、相続や権利関係、所有者の意向を整理する必要があります。施設を運営する事業者や集客を担う人材、地域住民との調整役も必要です。
また、単独の古民家を改修しても、周辺に飲食や買い物、体験の機会がなければ、地域への経済効果は限られます。複数の古民家と地域資源を一体的に活用する「エリアリノベーション」を成立させるには、建物の改修と地域運営を同時に進めなければなりません。
畳や障子、縁側、土間、太い梁、庭とのつながりといった古民家特有の空間は、現代的なホテルでは提供しにくい滞在体験です。海外旅行者にとっても、日本の生活文化や土地の歴史を体感できる観光商品になり得ます。
大阪府は2027年度以降、専門家、地域団体、所有者、運営事業者などが連携する地域組織の構築や、所有者と活用希望者のマッチングを支援する方針です。モデル地区で事業性と運営体制を確立し、得られたノウハウを府内各地へ広げます。
行政支援が終了した後も、地域側で事業を継続できる体制をつくれるかが最大のポイントです。
最安値ではなく「地域を動かす提案」を選定
企画提案公募には4者が参加しました。地域計画建築研究所大阪事務所の評価点は100点満点中80.5点、提案金額は1,895万3,000円でした。提案金額は最安値ではありませんでしたが、古民家集落の調査から地域との合意形成、担い手の発掘・育成まで、事業化に必要なプロセスを具体的に示した点が評価されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最優秀提案事業者 | 地域計画建築研究所大阪事務所 |
| 評価点 | 80.5点/100点 |
| 提案金額 | 1,895万3,000円 |
| 業務委託上限額 | 2,104万8,000円 |
| 令和8年度事業費 | 2,591万2,000円 |
| 契約期間 | 契約締結日から2027年3月24日まで |
次の焦点は「どの地域が選ばれるか」

出展:大阪府
今回決まったのは、古民家ホテルなどの整備場所ではなく、候補地区を調査し、事業化へ導く事業者です。今後の焦点は、約20地区の候補にどの地域が入り、約4地区への絞り込みを経て、最終的にどの2地区で事業化準備が始まるかです。大阪府の構想が実現すれば、都心部に集中しがちな大阪観光を府内各地へ広げる新たな選択肢になります。古民家を地域の負担として残すのではなく、滞在、交流、消費を生み出す資産へ転換できるか。選ばれる地区と、その後の事業運営が注目されます。
出典
- 大阪府「古民家を活用したまちづくり」
- 大阪府「古民家を活用したまちづくり推進業務」の企画提案公募
- 大阪府「古民家を活用したまちづくり推進業務 仕様書」
- 大阪府「企画提案公募に関する質問への回答」
- 大阪府「令和8年度知事重点事業一覧」
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