なにわ筋線、総事業費6,425億円で精査完了 B/Cは1.05、利用者24.3万人/日でも2031年春開業を維持



大阪都心を南北に貫く「なにわ筋線」の総事業費が、6,425億円で精査されました。従来の3,291億円から3,134億円増え、事業費はほぼ倍増します。

一方、最新の費用便益分析(B/C)は1.05、想定利用者は24.3万人/日となりました。採算性の余裕は小さくなったものの、第三者委員会は事業継続を妥当と判断。現時点で工期延長につながるリスクは顕在化しておらず、2031年春の開業目標は維持されます。

大阪都心を南北に貫く7.2kmの新線



なにわ筋線は、大阪駅(うめきたエリア)から中之島、西本町を経て南下し、JR難波駅と南海新今宮駅方面へ分岐する約7.2kmの新線です。
項目 内容
建設延長 約7.2km
構造 地下6.5km、堀割・盛土0.3km、高架0.4km
新駅 (仮称)中之島、西本町、南海新難波
整備主体 関西高速鉄道
運行主体 JR西日本、南海電鉄
総事業費 6,425億円
想定利用者 24.3万人/日
B/C 1.05
開業目標 2031年春
大阪・梅田、中之島、本町、難波を一本の鉄道軸で結ぶことで、大阪都心の回遊性を高めるとともに、新大阪や関西国際空港へのアクセス強化を担います。

1989年の構想から、40年近くを経て建設段階へ

なにわ筋線の構想は古く、1989年の運輸政策審議会答申にまでさかのぼります。その後、長期にわたる検討を経て、2017年以降に事業化が本格化しました。
年月 主な動き
1989年5月 運輸政策審議会答申第10号に位置付け
2004年10月 近畿地方交通審議会答申で中長期的に望まれる路線と位置付け
2017年5月 大阪府・大阪市、JR西日本、南海電鉄、阪急電鉄が早期事業化で一致
2017年11月 府・市、JR西日本、南海電鉄、関西高速鉄道が事業推進の覚書を締結
2019年3月 国の予算で新規事業化
2019年7月 鉄道事業許可を取得
2020年2月 工事施行認可、都市計画決定
2021年10月 本体工事に着手
2023年3月 大阪駅(うめきたエリア)が開業
2023年度 総事業費約3,300億円、利用者26.4万人/日、B/C1.49で再評価
2026年4月 事業費が約6,500億円へ増える見通しが判明
2026年7月29日 精査結果を報告。総事業費6,425億円、B/C1.05
2026年8月 府・市が事業継続を確認
構想段階から実に40年近い時間をかけ、現在は本格的な建設フェーズに入っています。

事業費倍増、最大の要因は物価上昇


出展:JR西日本

今回の精査では、資材費や人件費、用地価格の上昇に加え、詳細設計や現地調査の進展に伴って追加工事が具体化しました。
増減要因 金額
工事費単価の上昇 +1,645億円
用地費単価の上昇 +459億円
現地調査による追加 +390億円
詳細設計による追加 +285億円
安全対策 +349億円
環境対策 +92億円
建設中利息 +25億円
コスト縮減 ▲111億円
増額合計 +3,134億円
工事費と用地費の単価上昇だけで2,104億円に達し、増額分の約3分の2を占めます。

つまり、今回の事業費膨張は計画そのものの拡大というより、建設コストの上昇と、事業が具体化する過程で顕在化した追加条件の積み重ねによるものです。

ただし、6,425億円は最終的な上限額ではありません。今後も物価上昇が続けば、事業費がさらに変動する可能性があります。

利用者予測は8%減、B/Cは1.05まで低下

事業費の増加に加え、需要予測も下方修正されました。
2023年度 2026年度
想定利用者 26.4万人/日 24.3万人/日
B/C(30年) 1.49 1.05
利用者予測は約8%減少。費用便益比も1.49から1.05へ低下し、経済性の余裕は大きく縮小しました。一方、今回の評価では、便益算定に用いる「時間評価値」を2010年パーソントリップ調査ベースから2021年調査ベースへ更新しています。このため、両年度のB/Cは完全な同一条件での比較ではありません。

それでも最新条件でB/Cが1を上回ったことなどから、第三者委員会は事業継続を妥当と判断しました。

工事進捗は18%、難度の高い工程はこれから

2025年度末時点では、事業全体の進捗は約18%、工事は約12%、用地取得は約38%です。
項目 進捗
事業全体 約18%
工事 約12%
用地取得 約38%
中之島、西本町、湊町交差点、道頓堀川周辺などで工事が進んでいますが、事業はなお前半段階にあります。今後は駅部の大規模掘削、立坑、シールドトンネル、既存地下構造物との近接施工など、技術的難度の高い工程が本格化します。
時期 主な予定
2026~2027年度 駅部掘削、立坑、シールドトンネルなど本体工事を本格化
2028~2030年度 土木構造物を順次完成し、軌道・電気・駅設備を整備
2030年度末 開業前の最終工程
2031年春 なにわ筋線開業予定
~2032年3月 都市計画事業としての認可上の事業期間
一部では用地取得に時間を要していますが、取得済み区間や駅部を先行施工することで工程を調整しています。

「造るか」ではなく、「予定通り完成させられるか」が焦点に


出展:JR西日本

今回の精査で、なにわ筋線を巡る論点は明確になりました。事業費は大幅に膨らみ、需要予測も下方修正されました。それでも事業継続は妥当と判断され、2031年春開業という工程も維持されています。

ここから問われるのは、計画の必要性そのものではありません。

物価上昇、用地取得、地下工事という不確実性をどこまで制御し、コストと工期を管理しながら完成まで持ち込めるか。

大阪都心の交通軸を再構成し、新大阪・梅田・中之島・難波・関空を一体的につなぐなにわ筋線は、いよいよ「構想の成否」ではなく、事業遂行力そのものが問われる段階に入ったといえます。




出典

  • 大阪府「令和8年度 第2回コストマネジメント会議 なにわ筋線整備事業」
  • 大阪市「大阪市大規模事業リスク管理会議」
  • 関西高速鉄道「なにわ筋線」
  • JR西日本「なにわ筋線 2031年春 開業に向け」

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