ANA、羽田T2ラウンジを2027年度に拡張へ!SFCはなぜ変わる?年300万円の壁と「一生モノ」制度の限界


出展:ANA

ANAは2026年9月29日、羽田空港第2ターミナルの国内線「ANA LOUNGE」を2027年度に拡張する方針を明らかにしました。2027年度早々にも工事へ着手し、同年度中に順次供用する予定です。具体的な増床面積や増席数は、現時点では公表されていません。

背景にあるのは、出発便が集中する時間帯や年末年始などに発生しているラウンジの混雑です。SFC会員規模は2019年比で約1.5倍に増え、ANAは2030年に現在比約1.2倍、2035年には約1.4倍まで増えると予測しています。

今回のラウンジ拡張は、2028年4月から始まるスーパーフライヤーズカード(SFC)の制度変更とも密接に関係しています。新制度では、年間決済額300万円以上の「SFC PLUS」と、300万円未満の「SFC LITE」にサービスを分けます。

ラウンジの収容力を増やしながら、制度面でも利用を調整する。羽田ラウンジ拡張とSFC制度改定は、増え続ける上級会員をどう受け入れるかという、同じ課題への二つの対応です。

そもそもSFCとは?



SFC=スーパーフライヤーズカードは、ANAの上級会員向けクレジットカードです。通常は、ANAの「プラチナサービス」「ダイヤモンドサービス」など所定の資格を得た人が申し込めます。

SFCが人気を集めてきた大きな理由が、取得後に毎年プラチナを取り直さなくても、カードを維持することで多くの上級会員特典を継続できることでした。
SFCの特徴 内容
入会 ANAプラチナ、ダイヤモンドなど所定条件達成者
維持 基本的にカードを継続保有
国内 ANAラウンジ、優先搭乗、専用保安検査場、手荷物優先など
海外 Star Alliance Goldとして提携ラウンジ・優先サービスなどを利用
人気の理由 毎年大量に飛ばなくても、多くの特典を長期間維持できた
ANA自身も過去の公式記事で、SFCについて「会員である限り永続的に」特典を享受できると紹介していました。

そこで広まったのが、いわゆる**「SFC修行」**です。

1年間集中的に飛ぶ
→ プラチナ取得
→ SFC発行
→ その後はカードを維持


従来SFCは、「取得時のハードルは高いが、その後は維持しやすい」制度として支持を広げてきました。

羽田ラウンジ増床とSFC改革はセット

今回ANAが進める対策を整理すると、次のようになります。
項目 内容
羽田T2国内線ANAラウンジ 2027年度に拡張
着工 2027年度早々
供用開始 2027年度中に順次
新SFC制度 2028年4月1日開始
SFC PLUS ANAカード・ANA Pay 年300万円以上
SFC LITE 年300万円未満
LITE国内線ラウンジ 混雑時を除いて利用可能
今後 LITE向け事前予約制度を導入予定
ANAは施設拡張に加え、ラウンジ利用者数を把握するシステムも改修します。LITE向けには事前予約制度を設ける予定です。

整理すると、

供給面ではラウンジを増やす。
運用面ではPLUS/LITEと予約制度で利用を調整する。


という組み合わせです。

2028年からSFCはどう変わる?

年間300万円に届かなくても、SFC資格そのものは失いません。翌年度はSFC LITEとしてサービスを受けます。2026年9月の再修正によって、4月の当初案よりLITEのサービスはかなり残されました。
主なサービス 従来SFC SFC PLUS SFC LITE
年300万円決済 不要 必要※ 不要
SFC資格 ◯ ◯ ◯
国内線ANAラウンジ ◯ ◯ △ 混雑時を除く
LITE向けラウンジ予約 ― ― 導入予定
羽田・成田・ホノルルのANA国際線ラウンジ ◯ ◯ △ ANAグループ便利用時
Star Alliance資格 Gold Gold Silver
Gold資格による海外加盟社ラウンジ ◯ ◯ ×
ANA優先チェックイン ◯ ◯ ◯※
ANA優先搭乗 ◯ ◯ ◯※
手荷物優先返却 ◯ ◯ ◯※
SFCマイル特典 ― 5,000マイル ×
※100万ANAライフタイムマイル達成者は年間決済額にかかわらずPLUS。5,000マイルの進呈には年間300万円以上の決済が必要です。LITEの主な空港優先サービスはANAグループ運航便利用時が対象です。

4月の当初案では、LITEはANAラウンジも原則利用できない内容でした。9月の修正では、国内線ラウンジは混雑時を除いて利用可能に変更。国際線でもANAグループ便利用時には羽田・成田・ホノルルのANAラウンジを利用できるようになりました。

一方、年間300万円という基準と、LITEをStar Alliance Silverへ変更する方針は維持されています。

なお、新制度開始後にSFCへ新規入会する場合、100万ANAライフタイムマイル達成者を除き、原則としてSFC LITEからスタートします。入会した時点で自動的にPLUSになるわけではありません。

なぜ決済額300万円なのか?現在の会員なら約6割がLITE

ANAが現在のSFC会員の利用状況を新制度へ当てはめると、次のようになります。
区分 現在の利用実績を当てはめた試算
SFC PLUS 約4割
SFC LITE 約6割
ANAは200万円への引き下げや、搭乗実績との組み合わせも検討しました。しかし、200万円ではラウンジ混雑の緩和効果が十分ではなく、LITE向けに確保できる利用枠も小さくなるため、300万円を維持したと説明しています。

SFC会員のカード利用実績を見ると、年間100万円未満が約4割、50万円未満が約3割。会員数が増える一方、カード決済額は減少傾向にあるとしています。

年間300万円は月平均25万円です。これは資産額や年収を測る基準ではありませんが、日常の決済をどこまでANAへ集約するかを分けるラインになります。初年度の判定期間は暦年ではなく、2026年12月16日~2027年12月15日です。この期間の実績を基に、2028年4月1日からPLUS/LITEの新しいサービス区分が適用されます。

ANAが重視する顧客像も変わる

今回の制度設計からは、ANAが重視する利用実績も見えてきます。
顧客との関係 主な評価制度
現在も大量に飛ぶ プラチナ・ダイヤモンド
日常的にANAカード等を使う SFC PLUS
長年ANA便を利用してきた 100万ANAライフタイムマイルでPLUS
過去にSFCを取得したが現在の利用が少ない SFC LITE
ANAは、SFC会員のカード決済額が一般的なクレジットカード利用水準を下回り、減少傾向にあった背景として、従来SFCがラウンジなど航空関連の特典に偏っていたことや、他社経済圏カードの台頭を挙げています。

新制度ではSFCを、「過去に一度条件を達成した人への長期優待」から、「現在もANAに乗る、あるいはANAへ決済を集約する人をより厚く優遇する制度」へ近づけようとしていることが分かります。ANAは、決済から得た収益をラウンジ拡張などへ再投資する循環をつくりたいとも説明しています。

なぜSFCはここまで増えたのか?



従来SFCには、一般的な年間ステータスとは違う特徴がありました。通常の上級会員資格は、翌年も一定の搭乗実績を積まなければ失効します。SFCは取得後もカードを継続することで会員として残るため、

新規会員が増える + 過去の会員も残る

という「ストック型」の制度です。

さらに「SFC修行」はブログやSNS、YouTubeへ広がり、テレビでも繰り返し紹介されるようになりました。日本テレビ系「沸騰ワード10」では、2018年以降、ANAやJALのステータス修行が複数回取り上げられ、2026年2月にもANAのステータス修行や羽田空港ラウンジが紹介されています。

もちろん、SFC会員増加の何割がこうしたメディア露出によるものかは分かりません。

ただ、「知る人ぞ知る制度」から「取得方法まで広く知られた制度」へ変わった ことは、SFCを取り巻く環境の大きな変化でした。

そして、会員資格は積み上がる一方、ラウンジの収容力には限りがあります。

今回の増床と制度改定は、この需給差への対応でもあります。

LITEになると差が大きいのは「海外」


出展: シンガポール航空  KrisFlyer Gold Lounge

9月の修正でANA国内サービスの多くがLITEにも残ったため、新旧の差が特に分かりやすいのが海外です。従来SFC/SFC PLUSならStar Alliance Goldとして、条件を満たせばエコノミークラス利用時でも世界各地の加盟社ラウンジを利用できます。

代表例は次の通りです。
都市・空港 航空会社 代表的ラウンジ SFC資格による利用
シンガポール・チャンギ シンガポール航空 KrisFlyer Gold Lounge SFC PLUS:◯
SFC LITE:×
香港国際空港 シンガポール航空 SilverKris Lounge SFC PLUS:◯
SFC LITE:×
台北・桃園 エバー航空 The Star SFC PLUS:◯
SFC LITE:×
バンコク・スワンナプーム タイ国際航空 THAIの対象ラウンジ SFC PLUS:◯
SFC LITE:×
※対象となるStar Alliance便への搭乗など所定の条件があります。ビジネスクラス搭乗など別の入室資格があれば、SFC LITEでも利用できる場合があります。

従来SFCの魅力の一つは、日本で取得した資格を、世界中のStar Allianceネットワークでも利用できることでした。

ANAは、LITEにラウンジ利用の制限を設けながらStar Alliance Goldだけを維持することは、Goldと加盟航空会社のラウンジ利用権が一体となったアライアンスの共通ルール上難しいと説明しています。

なぜ反発が大きかったのか―「一生モノ」から毎年300万円へ

今回の反発は、「300万円という金額が高い」という理由だけでは説明しきれません。従来SFCの商品価値の一つが、一度取得すれば、その後の搭乗回数が減っても長期間利用できることだったからです。

ANA自身も「会員である限り永続的」と紹介していました。今回の説明会でも、過去に終身的なステータスを想起させる案内をしてきた経緯について言及しています。

そこへ、従来と同じStar Alliance Goldを維持するには、毎年300万円の決済が必要という条件が加わりました。さらに4月の当初案では、LITEはANAラウンジも原則利用できない設計でした。

9月に国内線ラウンジなどの利用条件が緩和されたことで影響は小さくなりましたが、制度の方向性そのものは維持されています。

従来は、

修行費用+時間
→ SFC取得
→ 長期間Star Alliance Gold


でした。

これからSFC PLUSまで求める場合は、

修行費用+時間
→ SFC取得
→ その後も毎年300万円決済
→ Star Alliance Gold維持


となります。SFCは「最初に条件を達成すれば長く使える制度」から、取得後もANAとの取引を続ける制度へ性格を変えていきます。

年300万円決済すると、何マイル貯まるのか



一方、年間300万円をANAカードへ集約すれば、その分のマイルも貯まります。

代表例として、ANAスーパーフライヤーズ ゴールドカード(VISA/Mastercard/JCB)で年間300万円を通常決済した場合を見ます。同カードでは通常決済で100円あたり1マイル相当、カード継続で年間2,000マイル。SFC PLUSでは、年間300万円以上の決済でさらに5,000マイルが加わります。
獲得要因 年間獲得マイル
300万円の通常決済 30,000マイル
カード継続ボーナス 2,000マイル
SFC PLUS特典 5,000マイル
合計 37,000マイル
飛行機に一度も乗らなくても、年間約3.7万マイルです。対象となる支出をANA Pay経由で利用すると、条件次第ではさらに積算率を高められます。年間300万円のすべてを対象支出としてANA Payで利用できた場合の理論値では、継続・PLUS特典を含めて約4万マイルが視野に入ります。

ただし、ANAカードからANA Payへチャージした金額そのものはPLUS判定の300万円には含まれません。実際にANA Payで支払った利用額が判定対象となります。チャージと利用を二重にカウントする仕組みではありません。

さらに実際にANA便へ搭乗すれば、搭乗マイルやフライトボーナスも加わります。ANAスーパーフライヤーズ ゴールドカードのフライトボーナス積算率は40%です。

ただし、PLUS独自の上乗せは別に考える

年間3.7万~4万マイルのすべてが、SFC PLUSになったことで新しく得られるわけではありません。
内容 PLUS独自か
300万円決済で約3万マイル × 通常のカード利用還元
継続2,000マイル × 従来からある
PLUS追加5,000マイル ◯
Star Alliance Gold維持 ◯
LITEより制約の少ないラウンジ利用 ◯
SFC PLUSで追加される主な価値は、Star Alliance Gold + 年間5,000マイル + LITEより制約の少ないラウンジ利用です。300万円決済で得る約3万マイルは、PLUSの追加ボーナスではなく、通常のカード利用で得られるマイルです。

「300万円を使えるか」より「ANAへ集約する価値があるか」

年間300万円をカードで支払えることと、その300万円をANAへ集約することは別の話です。例えば、他社カードの方が実質還元で1ポイント有利なら、300万円で年間3万円の差になります。ホテル系カードから乗り換えると、年間利用額に応じたホテルの無料宿泊などを失う可能性もあります。
ANAへ300万円を集約して得るもの 他社へ300万円を使った場合に得られる可能性があるもの
Star Alliance Gold 高いポイント還元
SFC PLUS追加5,000マイル 無料宿泊など年間利用特典
ANA決済で貯まるマイル 他社マイル・ポイント
ラウンジ・優先サービス 他の上級カード特典
海外旅行が年2~3回程度なら、利用スタイルによって評価は変わります。

LITEでもANAグループ便利用時には羽田・成田・ホノルルのANA国際線ラウンジを利用でき、国内線ラウンジも混雑時以外は利用できます。そのため、年間300万円に届かなければラウンジがすべて使えなくなるわけではありません。

海外加盟航空会社のラウンジやStar Alliance Goldの優先サービスを年に何回使うのか。ANAマイルをどこまで活用するのか。他社カードの特典をどの程度評価するのか。SFC PLUSの価値は、利用スタイルによってかなり変わりそうです。

羽田ラウンジ拡張は、SFC40年目の転換点



SFCは長年、取得後も利用しやすい上級会員制度として支持を広げてきました。一方、取得方法が一般化し、会員が積み上がるにつれて、ラウンジなど物理的なサービスとのバランス調整が必要になってきました。

ANAは今回、

ラウンジを広げる。
予約・利用人数管理を導入する。
LITEにも一定のサービスを残す。
従来に近いサービスには年300万円という継続条件を設ける。


という形で制度を再設計しました。

SFCは、「一度取得すれば長く使えるカード」から、「取得後もANAとの関係を続ける人に、より厚いサービスを提供する制度」へ変わろうとしています。

利用者側から見ると、年間300万円をANAへ集約し、年間3.7万~4万マイル前後を貯めながらStar Alliance Goldを維持する。その組み合わせにどれだけ価値を感じるか。2028年以降のSFCでは、この判断が以前より重要になります。

羽田T2ラウンジの拡張は、新しいSFC制度とサービス品質をどう両立させるのかを見るうえでも、注目される設備投資になりそうです。




出典元

  • ANA「ANAスーパーフライヤーズカードのサービスについて」
  • ANA「スーパーフライヤーズカード」
  • ANA「グローバルに輝くANAスーパーフライヤーズカード」
  • ANA「ANA Pay」
  • Aviation Wire「ANA、羽田国内線ラウンジを27年度拡充」
  • Aviation Wire「ANA、LITEもラウンジ一部可 SFC見直し、300万円基準維持」
  • TRAICY「ANA、SFC制度の見直し背景を説明」
  • TRAICY「SFC制度見直しで『300万円未満』は全体の約6割と試算」
  • シンガポール航空「KrisFlyer Gold Lounge」「SilverKris Lounge」
  • エバー航空「The Star」
  • ITmedia ビジネスオンライン「ANA SFC制度変更」に関する報道

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