JR西日本は2020年9月17日付けのニュースリリースで、来春のダイヤ改正で繰り上げられる最終電車の時間を発表しました。対象は大阪環状線など近畿エリアの主要在来線計12線区で、最大で30分繰り上げられます。終電繰り上げの方針は以前のニュースリリースでアナウンスされていましたが、今回は具体的な削減後のダイヤが明らかになりました。
【出展元】
→深夜帯ダイヤ見直しの実施~メンテナンス部門の働き方の改善に向けて~
大阪駅のダイヤを見てみます。平日の普通電車で、大阪駅から京都方面への最終電車は現行の午前0時31分(高槻行き)から21分繰り上げの同0時10分に、神戸方面へは同0時28分(西明石行き)から24分繰り上げられて同0時4分となります。
また、環状線は、西九条方面への大阪駅発最終電車が同0時11分(天王寺行き、繰り上げなし)に、京橋・鶴橋方面へは同0時8分(天王寺行き、繰り上げ1分)、同0時15分(京橋行き、繰り上げ18分)に変更となります。宝塚方面への宝塚線最終電車は、尼崎発が22分早まることにより、0時14分の尼崎発新三田行きが最終となります。
JR西日本によると夕方ラッシュのピークタイムが早まっており、17-20時台の利用客が増加する一方、21-23時台の利用者は減っており、特に24時台は5年前に比べ12~19%も減少しています。これは労働人口の減少による変化に加え、働き方改革や労働に対する価値観の変化が影響していると思われます。これらの利用状況を踏まえ24時以降を中心に最終電車の時刻を繰り上げる、深夜帯ダイヤの見直しの検討に着手する事になりました。仮に、大阪駅発の最終電車を24時に繰り上げた場合、おおむね年間10%作業日数の減少が期待できるとの事です。
近畿エリアでは毎日100カ所以上で保線作業が行われ、社員や建設会社従業員約1500人以上のが最終列車の運行後にメンテナンスを実施しています。深夜時間帯のダイヤ見直しにより保線作業などの夜間の作業時間を拡大させ、一晩あたりの作業量を増やすことで作業総日数の縮減を図り、労働環境を改善する事で若い働き手を増やし人手不足解消に繋げたい考えです。
働き方改革とナイトエコノミーが二律背反
かつてバブルの頃は「24時間働けますか?」のキャッチフレーズが流行するなど、昼夜を問わず働き遊ぶモーレツ・サラリーマンがもてはやされました。その後も、平成不況により労使の力関係のバランスが崩れ雇用者の立場が強くなった為に「サービス残業」が状態化するなど、『夜型社会』がもてはやされました。小売店の営業時間はどんどに延びて閉店時間は遅くなりましたが、多くの企業は人件費を抑制するため人員を増やさなかった為に、ワンオペなど劣悪な職場環境が出現し、労働環境は破綻して行きました。また、夜型社会に対応するため終電の時間は徐々に延びてゆきました。
さらに時代が進むと、今度は若者の人口が減り、今までの様に「低賃金で、文句を言わず、長時間労働、サービス残業する都合の良い人材」は、だんだんと居なくなり、ブラック企業にとっては人材不足の時代が訪れました。若年人口減少のトレンドはこれからも続く為に、企業側もやり方を変えざる得ない状況に追い込まれてきました。その様な時代背景から『働き方改革』のキーワードが浮上し、帰宅時間が徐々に早まりつつあります。
そんな中で、JR西日本が打ち出した終電の繰り上げは、まさに社会環境の変化を先取した、先進的な取り組みとして評価したいと思います。
一方、コロナ禍で一時的に需要が無くなりましたが「インバウンド」が別の角度で社会に影響を及ぼし始めました。順調に増加していたインバウンドの次の課題として、ナイトタイムエコノミーへの取り組みが挙げられていました。日本では、地方のみならず大阪・京都であっても訪日外国人にとって魅力的な観光・買物スポットが夜の時間帯に少ないという課題があり、これらの市場の掘り起こしが重要であるとされています。
例えばイギリスの場合、関連業界によって構成される「ナイトタイム産業協会」の調査によると、国内のナイトタイムエコノミーの経済規模は、年間で国全体の約6%に及ぶと分析しており、日本円換算で9兆5700億円に達しています。イギリスを例に取り、その6%を日本に当てはめると約80兆円もの「眠った市場」があると言われています。
「眠った市場」を掘り起こすためには『夜型社会』への取り組みが必要です。関連産業での需要創出は当然ですが、インバウンド客が利用する『交通機関の整備』が必要になります。少し前まで盛んに言われた地下鉄の24時間運転などが有効になってくるでしょう。しかし、ナイトタイムエコノミーへの取りみは、先に説明した『働き方改革』とは矛盾しており、まさに二律背反の施策と言えます。
テクノロジーを駆使して二律背反の克服を目指せ!
サービス残業を撲滅し労働環境の改善を目指す『働き方改革』と、眠った膨大な需要を掘り起こす『ナイトタイムエコノミー』を如何に両立させるか。前時代的な、気合いと根性、俺の背中を見て覚えろ!的なやり方は、もはや通用しません。
交通機関にターゲットを絞って考えると、やはり電車やバス・タクシーの『自動運転』が有効になると思います。というかそれしか対案が思いつきません。
自動運転といっても実施するには莫大なコストがかかるので、路線と区間を絞ってピンポイントで24時間運転を実現させるのが得策です。具体的には大阪メトロであれば御堂筋線の新大阪ー天王寺間、環状線の天王寺ー大阪ーユニバーサルシティ間、が一番効果的ではないでしょうか?御堂筋線や環状線から外れるエリアは自動運転バスがカバーするのが良いと思います。交通量が減る終電後の夜中であれば、日中よりも定時運転が可能になります。
JR西日本が打ち出した終電の繰り上げと共に、ナイトタイムエコノミーへの対応策を同時並行で考える必要があります。今後は、大阪府市やマスメディアでも、この二律背反を克服する方法が論議される事になると思います。
ナイトタイムエコノミーは一定規模以上の都市や国際的観光地での実施が主となるでしょうから都心と郊外の連絡を目的とするJR各線の終電繰り上げは特に問題とならないと思います。大阪市内で有れば地下鉄御堂筋線とJR環状線東回り~ユニバーサルで十分かと思います。
ただ関西はナイトタイムエコノミーに適した都市が大阪以外に京都・神戸と有りますのでこの三都市の深夜連絡も必要なら考慮しなければならないかと。
幸いにも鉄路がそれぞれ3路線が連絡してますので日曜日を運休としてそれぞれ週2日ずつ深夜連絡をするのも手かもしれません。
24時間開港の関空を持つ国際金融都市を目指す大阪にとって残念なニュースです。海外市場が動く深夜に電車が走っていない都市は、国際競争から脱落します。
ナイトタイムエコノミーは都市内の過ごし方だと思います。
そのため、都市内移動の地下鉄は24時間、
都市間移動のJRは終電早め、と住みわけがされているのではと思いました。
計画どっかいっちゃいましたけど、御堂筋トラムなんて実現していたらまさに夜間の自動運転にうってつけですよね。。