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高島屋 店舗別売上ランキング2024年度(2025年2月期)大阪店が2年連続トップ、京都・新宿が「1000億円クラブ」入り【2024年度決算】

髙島屋、5大店舗が業績を牽引 都市富裕層・訪日客に的を絞った百貨店モデルへの進化

髙島屋は、2025年4月に発表した2025年2月期(2024年度)の決算において、営業収益が1兆円を突破し、営業利益・純利益ともに過去最高を更新しました。

国内百貨店事業が業績をけん引し、特に大阪・京都・日本橋・横浜・新宿の5大店舗が前年を大きく上回る二桁成長を記録。都市集中型の収益構造が顕著となる一方で、地方店舗や子会社店舗では減収や営業終了が続き、収益構造の見直しが求められる状況となっています。本記事では、店舗別の売上動向、インバウンド需要の回復状況、外商と一般顧客層の関係、そして今後の戦略について詳しく見ていきます。

2024年度(2025年2月期):高島屋・店舗別売上ランキング


店 舗 2024年度
(2025年2月期)
2025年度(予想)
(2026年2月期)
売 上 高 前年増減率 売 場 面 積 売 上 高 前年増減率
参考:JR名古屋タカシマヤ 213,600 12.90% 87,000
1 大      阪      店 180,981 13.7 65,995 191,400 5.8
2 日   本   橋   店 160,502 7.5 45,420 160,400 △0.1
3 横      浜      店 142,421 5.8 56,423 151,000 6
4 京      都      店 111,509 14.6 58,347 117,800 5.6
5 新      宿      店 100,016 13.5 53,693 104,600 4.6
6 玉      川      店 48,029 3.2 22,768 51,500 7.2
7 柏 店 33,665 △3.1 24,512 36,300 7.8
8 ㈱ 岡 山 髙 島 屋 16,971 △8.4 18,929 18,030 6.2
9 ㈱ 高 崎 髙 島 屋 16,734 2.4 19,885 17,870 6.8
10 泉      北      店 14,722 △2.4 17,500 14,900 1.2
11 EC店 10,474 11,500 9.8
12 堺 店 10,156 △1.7 15,890 9,500 △6.5
13 ㈱ 岐 阜 髙 島 屋 6,888 △46.8 26,157
14 大      宮      店 6,764 △2.8 13,635 6,800 0.5
合計 859,840 8.8 412,997 891,600 3.7
※(百万円) ※%
大阪店は前年同期比13.7%増となる1,809億円を計上し、売上高で日本橋店を上回って全店舗中トップとなり、髙島屋の“1番店”としての地位を確固たるものとしました。さらに、京都店と新宿店もそれぞれ1,115億円、1,000億円を超える売上高を記録しており、都市部の主力店舗が軒並み1,000億円の大台を突破したことが、都市集中戦略の成果を物語っています。

5大店舗が全体売上の7割以上を占める

店舗名 2024年度 売上高(百万円) 前年比 2025年度 売上高予想(百万円) 予想増減率
大阪店 180,981 +13.7% 191,400 +5.8%
日本橋店 160,502 +7.5% 160,400 △0.1%
横浜店 142,421 +5.8% 151,000 +6.0%
京都店 111,509 +14.6% 117,800 +5.6%
新宿店 100,016 +13.5% 104,600 +4.6%
店舗別売上高では、5大店舗(大阪・京都・日本橋・横浜・新宿)の合計が約696,000百万円となり、国内百貨店売上全体の9割以上を占めました。とりわけ大阪店は13.7%増の180,981百万円、京都店は14.6%増の111,509百万円と躍進。新宿店も13.5%増と、訪日客の回復や高額商品販売の好調を背景に、大都市圏の拠点店舗が高成長を遂げました。

特に大阪・京都店では免税品の売上が回復基調にあり、訪日観光客による化粧品や宝飾品の需要が堅調に推移しています。「化粧品」は前年比15.1%増、「美術・宝飾・貴金属」は同18.0%増と高い伸びを示しています。



なお、「ジェイアール名古屋タカシマヤ」は髙島屋の連結子会社ではないものの、グループ内で売上トップを誇り、2024年度には2,136億円(前年比12.9%増)を記録し、タカシマヤブランド全店のトップに君臨しています。

富裕層戦略の裏側で見えた課題 離れゆく一般・中間層

髙島屋の業績をけん引しているもう一つの要因が、外商顧客による高額商品の購入です。タカシマヤカードをはじめとした富裕層向けサービスを強化し、外商による個別対応や専用催事の開催などで高い顧客満足度を確保しています。

しかしその一方で、百貨店の基盤を支えてきた一般層・中間層の来店頻度や購買単価が減少傾向にある点が指摘されています。外商偏重の売場構成や高価格帯商品の比率上昇により、「敷居が高い」「普段使いしづらい」といった印象を与えてしまい、かつてのような日常利用が敬遠される要因となっている可能性があります。実際、全体の入店客数の伸びは前年比+2.1%にとどまり、売上の増加が主に高額商品の単価向上によるものであることが読み取れます。中間層の顧客離れがこのまま進行すれば、将来的な裾野の縮小につながるおそれもあります。

地方店は選別と撤退が進行 光と影が交差する再編の現場


店舗名 売上高(百万円) 前年比 備考
堺店 10,156 ▲1.7% 2024年に営業終了
泉北店 14,722 ▲2.4%
大宮店 6,764 ▲2.8%
柏店 33,665 ▲3.1% 来期7.8%増を計画
高崎髙島屋 16,734 +2.4% 子会社店舗、安定推移
岐阜髙島屋 6,888 ▲46.8% 2024年7月末で営業終了予定
堺店は2024年に営業を終了、泉北店(▲2.4%)、大宮店(▲2.8%)、柏店(▲3.1%)も前年を下回る結果となりました。岐阜髙島屋は46.8%の大幅減となり、2024年7月末での閉店が決定しています。

唯一、地方子会社店舗である高崎髙島屋は2.4%増と安定した業績を維持しており、地域に根ざした営業戦略が奏功していると見られます。地方店舗全体の構造改革は避けられず、今後も収益性に応じた再編が進められる見通しです。

都市集中×再接続戦略 二極化市場への柔軟な布石

こうした課題に対応するため、髙島屋は以下の取り組みを進めています。
  • 正価品販売や重点ブランドとの連携を通じた商品力強化
  • 外商サービスの拡充によるロイヤル顧客への対応深化
  • タカシマヤカード制度の刷新による新規会員の獲得強化
  • 一般層向けの催事やイベント、カジュアル商品の拡充による来店機会の創出
  • 店舗の選別投資と資源の効率配分
  • DXによる顧客ID統合とオムニチャネル戦略の構築
さらに、2031年の創業200周年に向けては、リアル店舗、外商、オンラインを横断する全社統合型プラットフォームの構築を目指し、「一気通貫」の顧客体験提供を実現しようとしています。

来期も都市部がけん引 インバウンド回復でさらなる成長へ



2025年度(2026年2月期)の売上高予想においても、主力5店舗は引き続き堅調な成長を見込んでいます。大阪店は前年比5.8%増の1,914億円、日本橋店は前年並みの1,604億円を予想しています。京都店は1,178億円(+5.6%)、横浜店は1,510億円(+6.0%)、新宿店は1,046億円(+4.6%)と、いずれも安定した伸びを見せる見通しです。

さらに、玉川店や柏店、岡山髙島屋、高崎髙島屋などの地方店舗でも増収が予測されており、特に柏店は前年比7.8%増を見込むなど、再成長の兆しも一部で見られます。一方、堺店は営業縮小の影響で6.5%減と予想されています。2026年2月期(2025年度)の見通しでは、国内百貨店売上を5.7%増の802,400百万円と予測。大阪・京都・横浜・新宿などの主力店舗では5〜6%の成長を見込んでおり、日本橋店は横ばいながら高水準を維持する見通しです。インバウンド消費の回復や訪日観光客の増加に支えられ、免税品売上も引き続き好調を維持する見込みです。設備投資も大阪・京都・新宿など高収益店舗に重点配分され、百貨店の都市集中・高収益化が一層進むと見られます。

都市と地方、二つの現実に挑む 百貨店モデル転換の最前線



髙島屋が発表した2024年度決算は、百貨店業態が都市部の富裕層や訪日観光客を軸とした「高付加価値型モデル」へと移行している現実を端的に示しました。同社はその変革の先陣を切り、百貨店の役割そのものを見直す挑戦を続けています。

特に注目すべきは、都市部における高収益店舗への集中投資と、現実的な経営戦略の着実な実行です。立地条件や顧客層を見極め、「勝てる場所で勝つ」戦略を徹底する姿勢は、同業他社との厳しい競争環境の中で安定成長を遂げる原動力となっています。外商・インバウンド・DXを三本柱とする取り組みも、過度な冒険を避けつつ時代の変化に応じた柔軟な対応として評価されています。


出展:https://www.chuo-kanko.or.jp/

一方で、課題となっているのが、大都市圏と地方店舗の収益格差です。東京や大阪などの都市型店舗が順調に業績を伸ばす一方、地方店舗では人口減少や消費の冷え込みに直面しており、売上の鈍化や採算の悪化が続いています。こうした構造的な格差は今後さらに拡大する可能性があり、髙島屋は地方店舗の在り方を見直す局面に差し掛かっています。

今後のカギを握るのは、富裕層・インバウンド需要を軸とした高収益戦略を深化させながらも、一般層・中間層との接点をどう維持・再構築するかという点です。都市では高付加価値戦略を追求しつつ、地方では地域との連携や店舗機能の再定義を通じて、持続可能な運営モデルを模索する必要があります。髙島屋の動向は、百貨店が生き残りをかけてどう変わっていくのか、そのひとつのモデルケースとして注目されます。都市と地方、それぞれの市場に最適化されたアプローチの成否が、次世代の百貨店像を大きく左右していくでしょう。




出典・参考資料

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