【横浜花博】大屋根リングの木が『KAJIMA TREE(カジマツリー・仮称)』として再生する。万博から花博へ、「木のレガシー」が国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)に向けて動き出す

2025年の大阪・関西万博で建設された「大屋根リング」は、世界最大級の木造建築として注目を集めました。大屋根リングに使用された木材の一部が再利用され、2027年に横浜市で開催される国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)で新たな形として再登場します。

鹿島建設は同博覧会において、木造タワー「KAJIMA TREE(カジマツリー・仮称)」を建設する計画を発表しました。大屋根リングに使われた木材を再利用し、持続可能な都市づくりを象徴するモニュメントとするものです。

高さ約60m、大屋根リングの木材を再利用

KAJIMA TREEは、企業や団体が技術やビジョンを発信するエリア「Urban GX Village(アーバンジーエックスビレッジ)」内の約3,000㎡の敷地に建設されます。高さは約60mで、木造としては大規模な構造となる見込みです。

使用される木材は大阪・関西万博の大屋根リングで使用されたもので、鹿島建設は万博協会の木材リユース公募「ミャク市!」の譲渡契約候補者に選定されています。譲渡される木材量は、約2万7,000m³のうち3%に相当。KAJIMA TREEで使用する木材は、この譲渡分のみでまかなう予定です。

通り抜け可能、登れない「見るための建築」

KAJIMA TREEは内部に人が入る構造ではなく、現時点、展望機能を設ける予定はありません。足元を通り抜けることができる開放的なデザインとし、来場者が外側から木造構造のスケール感を体感できるように設計されます。来場者が入場して早い段階で視認できる位置に設置される見込みで、会場を象徴するランドマークとして計画されています。

鹿島建設の広報担当者は、「伝統的な木造技術と最新の構造解析を組み合わせ、木造建築の新たな可能性を探りたい」とコメントしています。

木造60mの挑戦、伝統と先端技術の融合

大屋根リングでは、日本古来の貫(ぬき)接合を現代的に応用し、金属製のくさびを加えた強化構造を採用していました。このノウハウをKAJIMA TREEにも継承し、伝統工法と最新の解析技術を組み合わせた設計が進められています。高さ約60mの木造タワーは国内でも前例が少なく、構造設計上の検討が続いています。鹿島建設は現在、詳細設計の段階にあり、構造形式や接合方法などの技術的な情報は後日公表される予定です。

万博から全国へ、そして花博へ。木材の再利用が進む

大屋根リングに使われた木材の再利用は、鹿島建設のKAJIMA TREEだけにとどまりません。愛媛県では、2026年5月に開催される全国植樹祭で一部を式典会場の整備に活用する方針を示しています。このほかの自治体や企業にも譲渡が検討されており、木材が全国で再利用される動きが進んでいます。

大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」と、横浜国際園芸博のテーマ「幸せを創る明日の風景」は、ともに自然と調和した持続可能な社会を目指す点で共通しています。大屋根リングからKAJIMA TREEへの木材再利用は、両博覧会の理念を具体的な形で接続する取り組みといえます。






出典元

  • 鹿島建設株式会社「GREEN×EXPO 2027 500日前記者発表会 出展内容発表」

  • 朝日新聞「大屋根リングをタワーに再生 国際園芸博、開幕500日目前」

  • 産経新聞「大屋根リングの木材を再利用 鹿島が花博に60m木造タワー」