2025年6月2日、日銀大阪支店は「BCP大阪連絡会」を開催し、メガバンクや証券会社など32の金融機関・団体が参加しました。首都直下地震などのリスクを前提に、業務継続計画(BCP)として東京・大阪のデュアルオペレーション体制をどこまで進めているか、その実態と課題が共有されました。
調査によると、参加機関の約9割が2拠点体制を導入済みで、円貨・外貨の資金繰り、決済、証券・デリバティブ業務まで広がっています。さらに約4割が3年以内の業務拡大を計画しています。注目すべきは、非常時対応にとどまらず、**平時から機能を分担する“実働型の多核化”**が本格化している点です。
なぜ大阪が選ばれるのか。それは、西日本最大の経済圏であり、電力・通信・交通が東京と独立系統であること、阪神・淡路大震災を経た防災意識の高さ、そして人材・オフィス・物流など都市基盤の総合力にあります。距離ではなく、構造と冗長性の設計が求められているのです。
大阪拠点ではフロント人員が増加する一方で、転勤を前提としないバック部門では人材確保が課題となっています。OJT、社内公募、東京研修を組み合わせる形で定着と育成の両立が図られています。
BCP対応では在宅勤務の制度化も進展し、国債や外貨決済、デリバティブ取引でもリモート対応が一部で可能に。訓練も震度6弱で大阪に指揮系統が自動移管される想定や、終日・サプライズ型、在宅連携訓練など多様化しています。外部委託先のSLA契約や大阪スイッチ訓練といった、サプライチェーン全体での対応強化も進みます。
今回の会合は、東京一極集中に依存しない金融システムの再設計が、静かに“現実の選択肢”として動き始めていることを示す象徴的な場となりました。BCPは、リスク管理の枠を超えて、都市の構造を見直す契機になりつつあります。