「The World’s 50 Best Hotels 2025」発表! なぜ大阪の名前はなかったのか?富裕層の“都市指名力”から見る構造分析


世界のホテルランキングが映し出す都市の実力

「The World’s 50 Best Hotels」は、英国を拠点とする「50 Best」シリーズが主催する、世界のホテル業界における年次ランキングです。2025年版はシリーズ第3回目にあたり、2025年10月30日にロンドンの「Old Billingsgate」で最終ランキングが発表されました。

このランキングは、ホテルのスタイルを問わず、ラグジュアリーホテルからブティック、リゾートまで幅広く対象としています。審査は旅行・ホスピタリティ業界の専門家らによる投票制で、施設の設備だけでなく、「体験」「デザイン」「文化的価値」「滞在満足度」など総合的な観点から評価されます。


上位15軒の顔ぶれと日本勢の位置

2025年版のトップ15は以下の通りです。


順位 ホテル名 所在地
1位 Rosewood Hong Kong 香港
2位 Four Seasons Bangkok at Chao Phraya River バンコク
3位 Capella Bangkok バンコク
4位 Passalacqua イタリア・コモ湖
5位 Raffles Singapore シンガポール
6位 Aman Venice イタリア・ヴェネツィア
7位 Claridge’s 英国・ロンドン
8位 La Mamounia モロッコ・マラケシュ
9位 The Upper House 香港
10位 Six Senses Ibiza スペイン・イビサ
11位 The Connaught 英国・ロンドン
12位 One&Only Mandarina メキシコ
13位 Mandarin Oriental Bangkok バンコク
14位 The Newt 英国・サマセット
15位 Bulgari Tokyo 日本・東京

日本勢は以下6軒がランクイン


順位 ホテル名 所在地 系列
15位 Bulgari Tokyo 東京・八重洲 マリオット
25位 Aman Tokyo 東京・大手町 アマン
37位 Janu Tokyo 東京・虎ノ門 アマン
45位 The Tokyo Edition, Toranomon 東京・虎ノ門 マリオット
46位 Hotel The Mitsui Kyoto 京都・二条城前 マリオット
59位 Park Hyatt Kyoto 京都・東山 ハイアット

日本のホテルはいずれも東京と京都に集中しており、大阪の名前は一軒もありませんでした。


富裕層の評価軸で見る“都市としての指名力”


「The World’s 50 Best Hotels 2025」にランクインする施設は、いずれも世界的なラグジュアリーホテルです。したがって、このランキングは“富裕層から見た都市の評価”とも言えます。

東京と京都が選ばれた理由は明快です。それぞれの都市が、滞在そのものを「文化的体験」として成立させているからです。東京では、国際都市としての多様性や洗練された都市文化が、京都では、歴史的文脈や静謐な情緒、精神性が評価されました。

これに対して大阪は、ラグジュアリーホテルの数や品質では劣っていません。ザ・リッツ・カールトン大阪、セントレジス大阪、ウォルドーフ・アストリア 大阪、コンラッド大阪、インターコンチネンタル大阪、W大阪など、国際的に高い評価を受けるブランドが揃っています。

しかしながら、富裕層の視点では次の問いが浮かび上がります。


  • 「大阪に泊まる理由は何か?」

  • 「どのホテルに泊まれば大阪の文化や価値に触れられるのか?」

この問いに対して、現状の大阪はまだ明確な答えを示せていません。“行けば楽しい都市”ではあっても、“行く前から滞在を期待される都市”にはなっていないのです。大阪の都市体験が、国際的な文脈で「翻訳」されていないことが背景にあります。


体験再設計と「MGM大阪」の可能性


世界のホテル評価軸は、かつての“モノ(設備)”から、“体験(文化・ストーリー)”へと移行しています。この新しい潮流の中で注目されているのが、2030年秋に開業予定の「MGM大阪」です。MGMは、ラスベガスやマカオなど世界の主要都市で培ったリゾート運営の知見とネットワークを活かし、これまで日本では見られなかった世界レベルのエンターテインメント体験を大阪に導入する計画です。

インバウンド需要の急拡大により、大阪はすでに世界有数の国際観光都市となりました。しかし、これまで十分に取り込めていなかったのが「富裕層」でした。MGM大阪の開業は、これまで大阪に縁の薄かった層が訪れるきっかけをつくり、都市ブランドの新たな層を開拓する可能性を持っています。

この動きは、これまで「他所から語られてきた大阪のイメージ」、たとえばB級グルメ、コテコテ、お笑い、派手さといったステレオタイプ一辺倒から脱却し、“本当の大阪らしさとは何か”を問い直す取り組みでもあります。

“どのホテルに泊まれば大阪の文化や価値に触れられるのか”という問いに、大阪自身がその答えを生み出す段階に入ろうとしています。つまり、「自らの言葉で大阪を語り直す」ことが、都市ブランド再構築の第一歩であり、世界の評価軸に向き合うための出発点になると思います。


まとめ:ホテルは都市と旅人を接続するインターフェース


ホテルは、都市が外部の人に提示する最初の“インターフェース”であり、旅人が訪れた都市を記憶する最後の“感情のログ”でもあります。「The World’s 50 Best Hotels 2025」に大阪の名がなかったのは、単にホテルの完成度の問題ではなく、都市としての「物語」がまだ十分に整理されていないことを示しています。

大阪が次に世界の地図に刻まれるためには、「何を建てるか」ではなく、「どんな体験を設計するか」が問われます。都市の空気・文化・物語を一体的にデザインできるかどうか。それこそが、大阪が現在よりも1段階ステージを上げるために必要な、ポスト万博・IR時代に大阪が求められる課題となります。

The World’s 50 Best Hotels 2025 全ランキング一覧


順位 ホテル名 所在地
1 Rosewood Hong Kong 香港
2 Four Seasons Bangkok at Chao Phraya River バンコク
3 Capella Bangkok バンコク
4 Passalacqua イタリア・コモ湖
5 Raffles Singapore シンガポール
6 Atlantis The Royal ドバイ
7 Mandarin Oriental Bangkok バンコク
8 Chablé Yucatán メキシコ・チョチョラ
9 Four Seasons Firenze イタリア・フィレンツェ
10 Upper House Hong Kong 香港
11 Copacabana Palace ブラジル・リオデジャネイロ
12 Capella Sydney オーストラリア・シドニー
13 Royal Mansour モロッコ・マラケシュ
14 Mandarin Oriental Qianmen 中国・北京
15 Bulgari Tokyo 日本・東京
16 Claridge’s イギリス・ロンドン
17 Four Seasons Astir Palace ギリシャ・アテネ
18 Desa Potato Head インドネシア・バリ
19 Le Bristol フランス・パリ
20 Jumeirah Marsa Al Arab ドバイ
21 Cheval Blanc Paris フランス・パリ
22 Bulgari Roma イタリア・ローマ
23 Hôtel de Crillon フランス・パリ
24 Rosewood São Paulo ブラジル・サンパウロ
25 Aman Tokyo 日本・東京
26 Hotel Il Pellicano イタリア・ポルトエルコレ
27 Hôtel du Couvent フランス・ニース
28 Soneva Fushi モルディブ
29 The Connaught イギリス・ロンドン
30 La Mamounia モロッコ・マラケシュ
31 Raffles London at The OWO イギリス・ロンドン
32 The Emory イギリス・ロンドン
33 Maroma メキシコ・リビエラマヤ
34 The Calile オーストラリア・ブリスベン
35 The Lana ドバイ
36 Hôtel de Paris Monte-Carlo モナコ
37 Janu Tokyo 日本・東京
38 The Taj Mahal Palace インド・ムンバイ
39 One&Only Mandarina メキシコ・リビエラ・ナヤリット
40 Singita – Kruger National Park 南アフリカ・クルーガー国立公園
41 Mandarin Oriental Hong Kong 香港
42 Hotel Bel-Air アメリカ・ロサンゼルス
43 The Mark アメリカ・ニューヨーク
44 Las Ventanas al Paraíso メキシコ・ロスカボス
45 The Tokyo Edition Toranomon 日本・東京
46 Hotel The Mitsui Kyoto 日本・京都
47 Estelle Manor イギリス・ウィットニー
48 Grand Park Hotel Rovinj クロアチア・ロヴィニ
49 Hotel Sacher Vienna オーストリア・ウィーン
50 Mandapa インドネシア・バリ
51 Aman Nai Lert バンコク
52 Badrutt’s Palace スイス・サンモリッツ
53 Borgo Santandrea イタリア・アマルフィ
54 The Peninsula Hong Kong 香港
55 Four Seasons Tamarindo メキシコ・ラ・マンザニージャ
56 Nihi Sumba インドネシア・スンバ島
57 Hotel du Cap-Eden-Roc フランス・アンティーブ
58 Four Seasons at The Surf Club アメリカ・サーフサイド
59 Park Hyatt Kyoto 日本・京都
60 Dusit Thani Bangkok バンコク
61 Aman New York アメリカ・ニューヨーク
62 Rosewood Bangkok バンコク
63 Borgo Egnazia イタリア・サヴェレートリ
64 The Carlyle アメリカ・ニューヨーク
65 The Beverly Hills Hotel アメリカ・ロサンゼルス
66 Four Seasons Madrid スペイン・マドリード
67 Montage Los Cabos メキシコ・カボ・サンルーカス
68 San Ysidro Ranch アメリカ・サンタバーバラ
69 Southern Ocean Lodge オーストラリア・カンガルー島
70 The Siam バンコク
71 Mandarin Oriental Ritz Madrid スペイン・マドリード
72 Hotel Cipriani イタリア・ヴェネツィア
73 Mount Nelson 南アフリカ・ケープタウン
74 Aman Kyoto 日本・京都
75 The Fifth Avenue Hotel アメリカ・ニューヨーク
76 Hotel das Cataratas ブラジル・イグアスの滝
77 The Greenwich Hotel アメリカ・ニューヨーク
78 Gleneagles イギリス・オークターラーダー
79 Aman Venice イタリア・ヴェネツィア
80 Plaza Athénée フランス・パリ
81 Reschio イタリア・リシャーノ・ニッコーネ
82 Casa Maria Luigia イタリア・モデナ
83 Splendido イタリア・ポルトフィーノ
84 Six Senses Zighy Bay オマーン・ジギーベイ
85 The Datai マレーシア・ランカウイ
86 Four Seasons Hong Kong 香港
87 Palacio Nazarenas ペルー・クスコ
88 Huka Lodge ニュージーランド・タウポ
89 Ett Hem スウェーデン・ストックホルム
90 Eden Rock セント・バーズ
91 Suján Jawai インド・ジャワイ
92 Soneva Secret モルディブ
93 The Johri インド・ジャイプール
94 Le Sirenuse イタリア・ポジターノ
95 Rosewood Mayakoba メキシコ・プラヤ・デル・カルメン
96 Maçakızı トルコ・ボドルム
97 Amangalla スリランカ・ゴール
98 Amangiri アメリカ・ユタ州キャニオンポイント
99 Portrait Milano イタリア・ミラノ
100 Amanbagh インド・アジャブガール




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