近鉄「Les Saveurs 志摩(レ・サヴール・しま)」を発表!名古屋〜伊勢志摩間を結ぶ新しいレストラン列車【2026年秋に運行を開始】


近畿日本鉄道は2025年10月31日、名古屋〜伊勢志摩間を結ぶ新しいレストラン列車「Les Saveurs 志摩(レ・サヴール・しま)」を発表しました!2026年秋に運行を開始し、既存の特急12400系(4両編成)を約7.5億円で全面改造。上質な空間で本格フレンチを楽しむ“走るレストラン”として登場します。

美食が誘う、優雅な列車旅


「Saveurs」はフランス語で「味」「風味」を意味し、伊勢志摩の多様な食材を象徴しています。コンセプトは「美食が誘う、優雅な列車旅」。4号車では志摩観光ホテルの樋口宏江総料理長が監修した本格フレンチコース、1・2号車では近鉄・都ホテルズが監修したフレンチ膳を提供します。いずれも三重県産食材を中心に構成され、旅の始まりから“志摩の恵み”を体感できる内容です。樋口シェフは2016年のG7伊勢志摩サミットでワーキングディナーを担当しており、「車窓の風景とともに三重の海と山の恵みを味わっていただきたい」とコメントしています。

運行概要とデザイン

外観は志摩の「海・白砂・太陽」をモチーフに、青と白、そして金のラインで上質さを表現。4号車は革張り家具と間接照明を備えた特別室仕様、1・2号車は斜め配置のペアシートで車窓を最大限に楽しめる設計です。全車にパウダールームと大型荷物置場を設け、1号車には車いす対応スペースも備えます。


  • 運行開始:2026年秋

  • 区間:近鉄名古屋〜賢島(約2時間半)

  • 停車駅:伊勢市・宇治山田・五十鈴川・鳥羽・鵜方

  • 運行日:週6日(繁忙期は週7日)

  • 座席数:全50席(全席指定)

クルージングトレイン第3弾としての位置づけ


近鉄の既存車両の改造による観光列車シリーズは、「青の交響曲(シンフォニー) Blue Symphony」(南大阪線)、「あをによし」(大阪〜奈良〜京都)に続き、今回の「Les Saveurs 志摩」で3作目となります。


・青の交響曲(シンフォニー):ラウンジスタイルで吉野線を高付加価値化

・あをによし:大和路の文化を表現した和モダンデザイン

・Les Saveurs 志摩:伊勢志摩の“食文化”を主題にしたガストロノミートレイン

これら3列車は、単なる移動手段ではなく、地域の物語や風土を「体験」として車内に閉じ込めるプロジェクトとして位置づけられています。


改造車としては異例の投資額


1両あたりの改造費は約1.88億円。豪華特急「しまかぜ」(約2.86億円/両)には及ばないものの、一般車両「8A系」(約1.85億円/両)の新造費用とほぼ同じです。改造車としては異例の水準であり、単なるリニューアルではなく“志摩観光ホテル級”の体験を列車に移植する本気投資といえます。「Les Saveurs 志摩」は、しまかぜに続くブランド・マーケティングの新たな柱となる位置づけです。

改造を選んだ理由


12400系は老朽化が進みながらも構体が良好で、改造ベースとして適していました。減価償却済みの車両を再生することで、投資を最適化しながら新ブランドを創出。新造ではなく改造という選択は、コスト抑制と開発スピードの両立を狙った合理的判断といえます。

また、料理監修は都ホテルズ、運営は近鉄リテーリングが担当。鉄道・ホテル・リテールのグループ連携によって「志摩観光ホテルの味を走らせる」仕組みを実現しています。列車そのものが広告・接客・販売促進を兼ねる、走るショーケースとして機能します。

グループ全体で見る投資回収モデル

改造で初期投資を抑えたとはいえ、7.5億円を運賃だけで回収するのは容易ではありません。近鉄はこの列車を単体収益ではなく、グループ全体の価値を高める装置として設計しています。


  • グループ施設への送客:志摩観光ホテル、都リゾート志摩ベイサイドテラス、賢島宝生苑など、近鉄グループの宿泊施設への導線を形成。

  • 走る広告塔:独自のデザインと体験価値がメディア露出を生み、伊勢志摩とグループ全体のブランド発信力を高めます。

  • 旅の動機づけ:「この列車に乗るために伊勢志摩へ行く」という新たな需要を創出し、地域全体の観光活性化に寄与します。

近鉄は、鉄道事業・観光事業・ホテル事業を横断するブランド戦略の一環として「Les Saveurs 志摩」を位置づけており、運賃収入にとどまらない広義の投資効果を見据えています。

「走る志摩観光ホテル」という体験設計

志摩観光ホテル(1951年開業)は、G7伊勢志摩サミットの舞台にもなった名門です。「Les Saveurs 志摩」は、その伝統と美食文化を鉄道という新しい形で再表現し、名古屋から賢島までの約2時間半を“志摩観光ホテルのプロローグ”と位置づけています。移動そのものを体験価値に変える設計思想が特徴です。

まとめ:輸送から体験へ、志摩ブランドの再創出

近鉄の観光列車シリーズは、既存インフラを「移動型体験資産」へと転換する取り組みです。、青の交響曲(シンフォニー) Blue Symphonyあをによししまかぜ、そしてLes Saveurs 志摩
いずれも路線の文化や風景をブランドとして磨き直し、グループ事業を横断的に結びつけています。「Les Saveurs 志摩」は、伊勢志摩という成熟ブランドを再構築し、しまかぜ以来となる近鉄グループの新たなブランド・マーケティングの柱として期待されています。





【出典元】
レストラン列車「Les Saveurs 志摩(レ・サヴ―ル・しま)」2026年秋デビュー! ~名古屋・伊勢志摩を結ぶ新たな観光列車~