大阪メトロ、万博効果で過去最高益!増収効果222億円、輸送の85%を担う、2025年度第2四半期(4〜9月期)連結決算



大阪メトロは2025年11月11日、2025年度第2四半期(4〜9月期)の連結決算を発表しました。営業収益は前年同期比25.3%増の1,277億円、営業利益は45.2%増の346億円、純利益は41.3%増の229億円で、2018年の民営化以降で過去最高を更新しました。

業績を押し上げたのは、4月から半年間開催された大阪・関西万博による輸送需要です。大阪メトロによると、万博関連の増収効果は222億円、営業利益への寄与は97億円に達しました。

万博輸送が収益を牽引、来場者の約85%を輸送



万博会場・夢洲に唯一乗り入れる中央線の利用が想定を上回り、期間中の1日平均乗車人員は前年同期比15%増の252.7万人となりました。
大阪メトログループは、EVバス「e Mover」や会場シャトルバスを含め、来場者輸送の約85%を担いました。

昼間時間帯は2分30秒間隔の高頻度運行を実施し、保安員・警備員を増員。安全輸送を最優先とする体制を構築しました。EVバスでは自動運転レベル4相当の実証運行も行われ、累計100万人以上が利用しました。

業績概要(2025年度第2四半期)


指標 金額 前年同期比 備考
営業収益 1,277億円 +25.3% 民営化後で最高
営業利益 346億円 +45.2% 万博輸送が寄与
経常利益 338億円 +43.1% コスト吸収力向上
純利益 229億円 +41.3% 過去最高益更新

万博関連の収益効果


区分 営業収益 営業利益
交通事業 219億円 97億円
その他事業 7億円 1億円
合計 222億円 97億円

交通・広告・都市開発の3部門が増収増益



主力の交通事業では、鉄道運輸収入が前年同期比22%増の965億円、営業利益は314億円(+48.8%)に拡大しました。バス事業も営業収益107億円(+52.0%)、営業利益18億円と大幅に増加しています。

広告事業は万博関連出稿で営業利益5億円(+75.8%)を計上。中央線の新型車両内ビジョン広告や主要駅サイネージが高稼働しました。
都市開発事業では、分譲販売の反動減を吸収し、営業収益92億円(+35.4%)、営業利益21億円(+15.9%)と好調。「Metrosa」や「メトライズ森ノ宮中央」などの物件が堅調に推移しました。

万博を契機とした交通インフラ投資



大阪メトロは、万博を契機に安全性・輸送力・利便性の強化を目的とした大規模投資を実施しました。2023〜2025年度の3年間で総額1,240億円を計画しており、内訳は以下の通りです。
投資項目 金額 主な内容
鉄道輸送力強化 398億円 新造車両(400系等)・臨時列車運行
安全対策 69億円 可動式ホーム柵・保安員増員・防犯カメラ
利便性向上 638億円 駅リニューアル・EVバス導入・乗換改良
その他 135億円 警備・運営効率化など
合計 1,240億円 (2023〜2025年度累計)

設備更新と車両戦略:短期対応と長期更新を両立


谷町線へ転属する「30000A系」

大阪メトロは、万博の開催に向けて。主要駅のグランドリニューアル、新型車両導入、ホームドア整備、顔認証改札導入など、設備更新を総合的に推進。これらの投資により、地下鉄ネットワークの品質向上と都市イメージの刷新を同時に実現しました。

中央線では新型「400系」を投入し、さらに谷町線へ転用可能な「30000A系」を導入。万博輸送と将来の車両更新を両立させる計画的な投資で、公共交通としての合理性を確保しました。

非接触・顔認証対応システムの導入により、安全性と快適性を強化。これらの取り組みは万博対応を超え、夢洲エリアのMGM大阪(IR)開業を見据えた都市交通の進化へとつながっています。

通期見通しを上方修正、純利益318億円へ

2026年3月期の通期業績予想は、営業収益2,360億円(前期比+16%)、純利益318億円(+9%)を見込みます。純利益は前回予想の294億円から24億円上方修正されました。
指標 今回予想 前回予想 前期実績 増減
営業収益 2,360億円 2,360億円 2,029億円 ±0
営業利益 470億円 435億円 404億円 +35億円
経常利益 445億円 410億円 396億円 +35億円
純利益 318億円 294億円 293億円 +24億円
河井英明社長は「万博を訪れた人が広い範囲に足を延ばすと思っていたが、想定ほど行ってもらえなかった」と述べる一方、
「下期も安全・安心を最優先にしながら効率的な運営を続け、事業成長を持続させたい」とコメントしました。

万博後の展開と課題



短期的には万博特需で好業績となりましたが、今後は需要を平常運行へとスムーズに移行させることが課題です。増強した体制の最適化と、夢洲エリア開発への持続的な関与が求められます。河井社長は「夢洲駅周辺の開発は連続性・親和性が高い」と述べ、万博跡地や将来のIR開発への参画に意欲を示しました。

まとめ:万博レガシーを次世代都市開発へ



大阪メトロは、万博を契機に地下鉄ネットワークの質を大きく引き上げました。主要駅のリニューアルや新型車両の導入、デジタル化などの施策により、利便性・安全性の向上とともに、都市の印象そのものを刷新する効果を生み出しました。これらの投資は輸送改善にとどまらず、都市ブランドの向上という長期的価値をもたらした点で意義があります。万博で得た経験を今後の都市開発に活かすことで、公共交通の新たな役割を築くことが期待されます。

大阪メトロは、夢洲のMGM大阪(IR)開業や森之宮再開発などに連動し、都市とともに進化し続ける存在へ。派手さよりも実直な進化を重ねることで、次の大阪の都市力を支える基盤となるでしょう。




出典

  • 大阪市高速電気軌道株式会社「2025年度(2026年3月期)第2四半期決算説明資料」