金沢駅西で計画が進むライブホール「Zepp」の外観イメージが明らかになりました。報道によると、建物には加賀五彩や縦格子を取り入れ、全体の色調は落ち着いたグレーを基調とする方針です。庇には石川県産スギを活用し、周辺景観との調和にも配慮した仕様となります。西松建設は2027年11月末の完成、同年内の開業を目指しています。
計画地は金沢市広岡3丁目の約3,000㎡です。建物は鉄骨造2階建てで、延べ床面積は2,666㎡。収容人数は1,221人で、1階は立ち見1,000人、2階は座席と立ち見を合わせて221人となります。設計は浦建築研究所、施工は真柄建設が担当し、着工は2026年5月7日を予定しています。
Zeppの定番デザインを、そのまま持ち込まなかった理由
Zepp Osaka Bayside
Zeppは一般に、巨大飛行船ツェッペリンに由来する名称や、「都市に降り立つ宇宙船」といったコンセプトを背景に、現代的で存在感の強いデザインが採用されることが多い施設です。これに対し、今回の金沢計画では、そうした方向性を前面に出さず、地域の景観や文化的な文脈に寄せた外観が選ばれました。
建物側面には、ひがし茶屋街を思わせる縦格子を採用し、加賀五彩の臙脂、藍、黄土、草、古代紫の5色を一部に使用します。夜間は照明によってやわらかな光を放つ演出も計画されています。全国共通の施設イメージをそのまま持ち込むのではなく、金沢の街並みに合わせて意匠を調整した点が、今回の大きな特徴です。
計画の焦点は「新設」ではなく「受け入れ方」
当初Zeppが計画されていた西金沢駅周辺の敷地
今回のニュースで注目すべきなのは、金沢にZeppができること自体より、ライブホールという外来型の施設を金沢の都市環境の中でどう成立させるかが、具体的な計画に落とし込まれたことです。
駅西エリアは、マンションやオフィスビルが立ち並ぶ市街地です。こうした場所では、集客力だけでは計画は成り立ちません。景観、騒音、周辺環境との整合まで含めて、丁寧に条件を整える必要があります。今回の計画では、派手な色使いを避けて景観との調和を優先したほか、防音面でも騒音シミュレーションを踏まえた対策を講じ、金沢市景観審議会の了承も得ています。
こうした進め方の背景には、過去の経緯があります。Zeppをめぐっては、2019年に西金沢駅周辺で浮上した当初案が、周辺住民の騒音や治安悪化への懸念などから前に進みませんでした。今回は立地を金沢駅西口の広岡3丁目へ移し、周辺環境との整合を取りながら計画が具体化しています。前回と比べると、施設の規模や機能だけでなく、地域の中でどう受け入れられるかまで含めて、計画の組み立て方そのものが変わったと見ることができます。
ライブホール1棟では終わらない、駅西に広がる波及効果
この計画の意義は、新しいライブ施設が1つ増えることにとどまりません。金沢駅西エリアに1,200人規模の集客装置が加わることで、駅周辺の滞在時間が伸び、宿泊、飲食、物販などへの波及も期待されます。
昨年時点では、年間100~150公演、1公演あたり平均1,000人来場、1人あたり平均1万円消費という前提で、最大10億円超の経済効果を見込む試算も紹介されていました。もちろん、実際の稼働率や消費単価には幅があります。それでも、中規模ライブホールが周辺経済に与える影響は小さくありません。
立地面でも意味のある計画です。金沢の都心はこれまで香林坊や武蔵を中心に発展してきましたが、近年は駅西から県庁方面にかけても都市機能の集積が進んでいます。今回のZepp計画は、そうした駅西側の都市軸の強化と重なる動きでもあります。ライブホールの新設という個別案件であると同時に、金沢の都市構造の変化を映す計画としても位置付けられます。
“派手さ封印”は後退ではなく、実現のための調整
全国のZeppと比べると、今回の金沢案は外観としてかなり落ち着いた印象です。ただ、それは魅力を弱めたというより、都市の中で無理なく成立させるための調整と見るべきでしょう。
ライブホールに求められるのは、十分な収容力、アクセス性、防音性、運営のしやすさを備えたうえで、地域に受け入れられることです。金沢案は、その条件を満たす方向で意匠と実装方法が整理されています。加賀五彩や格子、県産スギといった要素を取り入れ、色調も抑えた今回の外観は、景観意識の強い金沢で事業を進めるうえでの現実的な解答と言えます。
まとめ
金沢駅西で進むZepp計画は、外観イメージの具体化によって事業の輪郭がより明確になってきました。加賀五彩や縦格子、県産スギを取り入れたデザインは、景観や周辺環境への配慮を織り込んだ今回の計画の方向性をよく示しています。
2019年に浮上した西金沢案では、地域との摩擦が計画の壁になりました。今回の駅西案は、その経験を踏まえ、立地や景観、防音対策を整理しながら前進している点に意味があります。
金沢駅西のZeppは、単なる新しいライブ会場ではありません。都市機能と景観の両立を図りながら整備が進む、金沢らしい大型集客施設として注目したい計画です。
出典元
- 北國新聞「駅西ゼップ、金沢らしく 加賀五彩や格子 色調は景観配慮 派手さ封印、来年末までに開業」




