近鉄、新型レール削正車「きずな」を9月導入!施工距離を2倍に、全線区で予防保全を強化



近畿日本鉄道は、ミリング式を採用した新型レール削正車「きずな」を導入し、2026年9月頃から本線での作業を始めます。

カッター刃でレール表面を切削し、グラインディングで仕上げる方式で、1回の施工距離を従来の約400mから約800mへ倍増。輪軸交換により標準軌と狭軌の双方に対応し、近鉄全線で安全性や乗り心地、保守効率の向上を図ります。

「傷を見つけてから」から定期削正へ



列車が走行すると、車輪との繰り返し接触によってレール表面に金属疲労が蓄積します。傷を放置すると内部へ進展して亀裂となり、最終的にはレール折損につながる可能性があります。レール削正は、表面の金属疲労を初期段階で取り除き、傷の発生や進行を抑える作業です。レール頭部の形状を整えることで、騒音や振動を減らし、乗り心地を改善する効果もあります。

近鉄はこれまで、レール表面の傷を発見してから不定期に削正していました。しかし、対処が遅れると傷を除去できず、レールそのものを交換しなければならないケースもありました。

今後は、既存のグラインディング式削正車と「きずな」を併用し、削正の頻度と作業量を増やします。傷が深刻化する前に定期的に処置することで、レール折損のリスクを抑えるとともに、レール交換の頻度を減らします。従来の事後対応型から、予防保全型への転換です。

ミリング式で施工距離を約2倍に



現行の削正車は、回転する砥石でレール表面を削るグラインディング式を採用しています。これに対して「きずな」は、カッター刃で表面を切削するミリング式を採用し、最後にグラインディング式で仕上げます。1回の作業で施工できる距離は、従来の約400mから約800mへ延び、限られた夜間作業時間を有効に使えるようになります。

削正で発生した切りくずは車内のコンテナに回収し、すべてリサイクルします。作業中に火花がほとんど発生しないため、火花への対応要員も不要となり、作業の省力化と環境負荷の低減を同時に進めます。

輪軸交換で標準軌と狭軌の全線区に対応



近鉄の路線網には、奈良線や大阪線、京都線などで採用する標準軌1,435mmと、南大阪線、吉野線、長野線、御所線、道明寺線で採用する狭軌1,067mmが混在しています。

「きずな」は輪軸を交換することで、二つの軌間に対応します。軌間の異なる路線ごとに専用車両を用意するのではなく、1台で近鉄全線の削正作業を担える点が大きな特徴です。
項目 内容
車両形式 ROMILL 600
全長 17.0m
全幅 2.7m
全高 3.7m
総重量 約60t
削正方式 ミリング式+仕上げ用グラインディング式
対応軌間 標準軌1,435mm、狭軌1,067mm
車体製造 ローベル社(ドイツ)
ミリング装置製造 シュベアバウ・インターナショナル社(ドイツ)
仕上がり検測装置製造 フォーゲル&プレッチャー社(オーストリア)
配備先 近鉄京都線・宮津基地
本線作業開始 2026年9月頃
車体とミリング装置はドイツ企業、削正後の仕上がりを確認する検測装置はオーストリア企業が製造しています。

「傷を無くす」と現場の「絆」



「きずな」の愛称は、社内公募で集まった案から社員投票で決まりました。「レールの傷」を「無くす」という意味と、現場係員の団結や結束を示す「絆」を重ねた名称で、レール折損を未然に防ぐという思いが込められています。

車両は2026年5月28日に近鉄京都線の宮津基地へ到着しました。今後、整備や調整を進め、9月頃から本線で削正作業を開始する予定です。「きずな」の導入は、単なる保線車両の更新ではありません。限られた夜間作業時間で施工量を増やし、レール交換に至る前に劣化を抑える保守体制への転換です。

標準軌と狭軌が混在する広大な路線網を1台でカバーし、安全性の向上と省力化、設備の長寿命化を同時に進める、近鉄の予防保全を支える基盤投資といえます。




出典:近畿日本鉄道「新型レール削正車“きずな”を導入」

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