
国土交通省は2026年8月7日、全国11か所の「かわまちづくり計画」を新規登録しました。京都府久御山町が宇治川左岸の西一口地区で進める「久御山町かわまちづくり計画」も正式登録され、あわせて災害時と平時の双方で活用する「久御山MIZBEステーション」の整備計画も決定しました。
最大の特徴は、河川防災施設と水辺のにぎわいづくりを一体化する点です。災害時には緊急復旧用資材の備蓄や水防活動の拠点として機能する一方、平時にはBMX、芝生広場、カフェ、フードトラック、SUP・カヌー、舟運などに活用します。
防災インフラを日常的な交流・レジャー拠点として使う、いわゆる「フェーズフリー」の考え方を具体化するプロジェクトです。
久御山町かわまちづくり計画とは

計画地は、一級河川・淀川水系宇治川の左岸、久御山町西一口地区です。国土交通省のストックヤード周辺を中心に、宇治川の高水敷から堤防側の高台までを一体的に整備します。
計画期間は2026年度から2030年度までです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計画名 | 久御山町かわまちづくり計画 |
| 所在地 | 京都府久世郡久御山町 西一口地区 |
| 対象河川 | 一級河川 淀川水系宇治川 |
| 推進主体 | 久御山町 |
| 登録日 | 2026年8月7日 |
| 計画期間 | 2026年度~2030年度 |
| 中核施設 | 久御山MIZBEステーション |
| 主な平時利用 | BMX、芝生広場、イベント、カフェ、フードトラック、水辺アクティビティ、舟運 |
| 災害時 | 水防活動、緊急復旧活動、復旧資材備蓄 |
水辺のにぎわい創出だけでなく、治水・防災機能の強化が計画の根幹にあります。
「久御山MIZBEステーション」を整備

MIZBEステーションは、河川防災ステーションを平時にも積極的に活用する国の取り組みです。
河川防災ステーションは、大規模水害時に土砂やブロックなどの緊急復旧用資材を備蓄し、建設機械や水防活動の拠点となる施設です。MIZBEステーションでは、その敷地や高台、水防センターなどを日常的にも開放し、地域交流やレクリエーション、民間事業に活用します。

久御山では、国土交通省が盛土造成、高水敷整正、管理用通路、緊急復旧用資材の備蓄、ヘリポートなどを整備。久御山町が水防センター、多目的広場、芝生広場、駐車場、アーバンスポーツゾーンなどを整備します。
災害時には淀川河川事務所管内で発生した堤防決壊などへの緊急復旧を支える一方、平時は高台上を芝生やフードトラック、イベントなどに活用します。新設する水防センターも、防災・河川学習だけでなく、カフェなどの飲食機能を持たせる構想です。
高水敷にBMXや水辺アクティビティ

宇治川側の高水敷には、多目的広場や芝生広場、駐車場、アーバンスポーツゾーンを整備する計画です。
中でも注目されるのがBMX場です。国の登録資料には、久御山町が整備する施設として「アーバンスポーツゾーン(BMX場)」が明記されています。
| エリア | 主な整備・利用内容 |
|---|---|
| アーバンスポーツゾーン | BMXなど |
| 多目的・芝生広場 | イベント、交流、休憩 |
| 水辺 | SUP、カヌー、水遊び |
| 自然学習エリア | 河川環境、生き物観察 |
| 高台 | MIZBEステーション、水防センター |
| 水防センター | 防災学習、交流、カフェ等 |
| MIZBE上面 | 芝生、フードトラック、多目的利用 |
一方、施設の詳細は今後の設計で詰められるため、規模や配置などは変更される可能性があります。
宇治川に舟運を再生へ
もう一つの柱が舟運です。久御山周辺では、かつて淀と一口を結ぶ渡し舟が、人や物の移動を支えていました。近年は大阪・関西万博を契機に淀川舟運を再生する動きが進んでおり、久御山町も宇治川の水辺を広域回遊の拠点として活用する考えです。町の計画には、小型船舶や電動ボートを運航し、かつての渡し舟を現代版として再生する構想が盛り込まれています。
さらに、船上で地元食材を使った料理を提供するプログラムや、前川堤の桜、東一口集落、旧山田家住宅、巨椋池排水機場など周辺資源との連携も想定しています。国の登録資料でも、久御山を周辺の「かわまちづくり」拠点と舟運で結び、流域の結節点として機能させる方向性が示されています。
ただし、定期航路の開設が決まったわけではありません。運航事業者や航路、船着場の仕様などは今後の検討事項です。
社会実験には約700人が来場

今回の登録に先立ち、久御山町は2024年に「KUMIYAMA MIZUBE STATION PROJECT」を始動しました。
2025年5月11日には西一口地区で「KUMIYAMA MIZUBE TRIAL VOL.1」を開催。川遊びや防災体験、ワークショップなどを実施し、町によると約700人が来場しました。行政が施設を完成させてから利用者を集めるのではなく、事前の社会実験を通じて利用ニーズを確認し、計画に反映する進め方です。将来的には「MIZUBEパートナーズ(仮)」を中心に民間事業者や地域団体のネットワークを形成し、運営を担う体制も想定されています。
防災施設を「日常使い」する意味
この計画の本質は、防災施設とにぎわい施設を別々に整備しないことにあります。大規模な河川防災施設は災害時には不可欠ですが、平時は利用機会が限られがちです。久御山では、高台を芝生広場やイベント、フードトラック、BMXなどに開放し、水防センターにもカフェや防災学習機能を持たせます。
普段から地域住民が施設を訪れ、場所や動線を知っていることは、災害時の円滑な利用にもつながります。
単に「防災施設を平時にも使う」のではなく、日常的に使われる場所そのものを防災拠点にする。久御山MIZBEステーションは、こうしたフェーズフリー型インフラの実装例になりそうです。
今後は詳細設計へ

国の登録によって計画は具体化の段階に入りましたが、施設仕様がすべて確定したわけではありません。今後は、BMXコースの規模、水防センターの建築計画、カフェなど収益施設の運営事業者、舟運の運航形態、事業費、工事発注、供用時期などが焦点になります。
宇治川沿いに整備されるのは、単なる公園でも、単なる防災施設でもありません。防災、スポーツ、アウトドア、飲食、舟運、環境学習を一体化した新しい水辺拠点です。これまで日常利用が限られていた宇治川の河川空間を、地域内外から人を呼び込む「目的地」に変えられるか。久御山町かわまちづくりの今後が注目されます。
出典
国土交通省「全国11か所の『かわまちづくり』計画を新規登録」国土交通省近畿地方整備局「宇治川で『久御山町かわまちづくり』をスタート!」
久御山町「久御山町かわまちづくり計画(案)概要版」
久御山町「KUMIYAMA MIZUBE STATION PROJECT」
久御山町「KUMIYAMA MIZUBE TRIAL VOL.1」
Visited 3,036 times, 3,036 visit(s) today

