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KDDI『大阪・堺AIデータセンター』2026年1月稼働!旧シャープ堺工場、わずか半年で「AIデータセンター」に転用、GPUクラウドサービス「KDDI GPU Cloud」提供開始!


KDDIは2025年10月28日、大阪府堺市の旧シャープ堺工場跡地(Green Front 堺)を活用し、「大阪・堺AIデータセンター」を建設したと発表しました!稼働は2026年1月下旬を予定しており、同社のGPUクラウドサービス「KDDI GPU Cloud」を支える中核拠点となります。

この施設は、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の学習・推論を目的とした、日本国内でも最大級のAI特化型データセンターです。従来3年以上を要する大規模開発を、土地取得からわずか半年で完了。液晶パネル工場時代の高電力受電設備・冷却システム・広大な建屋を再利用することで、スピードとコストの両立を実現しました。

KDDIは本施設を「AI時代の製造業インフラ」と位置づけており、AI開発に必要な計算資源を“国内で安定供給できる体制を整備することが狙いです。


建築概要と運用体制

項目 内容
所在地 大阪府堺市(旧シャープ堺ディスプレイプロダクト工場跡地)
構造 地上4階建
延床面積 約57,000㎡
稼働開始 2026年1月下旬(申込受付:2026年4月1日開始)
電力供給 再生可能エネルギー100%
冷却方式 液冷(ダイレクト液冷)
採用GPU NVIDIA GB200 NVL72

液冷技術を採用することで、発熱の大きいGPUを高密度に設置しながらも安定稼働を実現しています。電力使用効率(PUE)は国内トップクラスを想定。再エネ由来電力のみを使用することで、AI開発基盤としてのカーボンニュートラル対応も達成しています。

AIデータセンターの特徴と機能

AIデータセンターは、従来の情報保管型データセンターとは根本的に異なる構造を持ちます。CPU中心ではなく、GPUによる大規模並列演算処理を前提とし、生成AIや深層学習の学習・推論を支えます。


項目 従来型データセンター AIデータセンター
主目的 Web・業務システムの安定稼働 生成AI・LLM・推論演算処理
中核構成 CPU(Xeon等) GPUクラスタ(NVIDIA GB200/H100)
通信帯域 1〜10Gbps 最大400Gbps(InfiniBand)
電力密度 3〜10kW/ラック 最大100kW/ラック
冷却方式 空冷 液冷(ダイレクト液冷・液浸)
成果物 データ・サービス AIモデル・知的資産

従来のデータセンターが「情報を保管する箱」であるのに対し、AIデータセンターは「知能を生み出す工場」として機能します。学習済みAIモデルや企業特化型AIの開発、製造業・医療・金融などへの応用が進むとみられます。


「KDDI GPU Cloud」生成AI時代の共通基盤


KDDIが同時に発表した「KDDI GPU Cloud」は、AI開発に必要なGPUリソースをクラウド上で提供するサービスです。企業や研究機関は、初期投資を抑えながら大規模計算環境を即時利用できるようになります。


  • 提供GPU:NVIDIA GB200 NVL72

  • 利用単位:1台からクラスタ単位まで柔軟に構成可能

  • 主な用途


    • 大規模言語モデル(LLM)の学習・推論

    • 自動運転・創薬・ゲノム解析・金融モデリングなど

  • 連携技術:Googleの生成AI「Gemini」と連携し、国内環境で安全なAI開発を実現

この仕組みにより、従来は米国企業が独占していた大規模AI学習リソースを、国内から利用可能な形で提供する体制が整います。

KDDIとソフトバンクが狙う「構造的転換」

堺跡地では、KDDIに加えソフトバンクも独自のAIデータセンター整備を進行中です。両社が目指すのは、AI産業の基盤を国外クラウドに依存せず、日本国内で自立的に運用できる構造を築くことです。

この取り組みは、AI時代の「データ主権」確立に直結します。企業の学習データや機密情報を国外に持ち出さず、国内でAIモデルを学習・運用できる点は、製造業・医療・行政分野において大きな意味を持ちます。

また、堺工場跡地の再利用には明確な経済合理性があります。既存の超高圧受電設備・冷却管網・堅牢な建屋をそのまま活用できるため、新設に比べて建設コストを数十%削減。さらに、インフラ稼働までの時間を大幅に短縮できる点が決定的な優位性となります。


立地の戦略性「東京と同時被災しない距離」

堺エリアが選ばれた理由の一つが、地理的リスク分散です。データセンターは災害時のバックアップ拠点(DR:Disaster Recovery)としての役割を担うため、首都圏と同時被災の可能性が低い西日本拠点の整備は必須です。

大阪・堺は、


  • 首都圏から約400km離れ、地震・停電などの影響リスクが独立

  • 京阪神エリアの電力・通信インフラが充実

  • 製造業・バイオ・学術研究の集積地に近接

といった条件を満たしています。また、首都圏とは異なる独自の市場を持ち、関西圏企業や大学によるAI活用需要が急速に高まっています。堺データセンターは、東京集中構造を補完する「第二の知的インフラ拠点」として機能する見通しです。

「パネルベイ」から「AIベイ」へ──産業構造の転換点

かつて大阪湾岸は、液晶パネル生産で世界をリードした「パネルベイ」と呼ばれていました。そのインフラが、いまAIという次世代の基幹産業を支えるデータセンター群へと転用されつつあります。

旧シャープ堺工場跡地の再活用は、「製造の拠点」から「知能を生み出す拠点」への転換を象徴しています。再エネ100%運用という環境要素を加えたこのプロジェクトは、脱炭素とデジタル化を同時に推進する新しい産業モデルといえます。

AIデータセンターの整備は、単なる企業投資にとどまらず、日本が「AI時代の産業国家」として再び競争力を取り戻すための社会インフラ構築です。この動きが堺から始まることは、関西圏のポテンシャルを再定義する出来事と言えそうです。






出典

  • KDDI株式会社 ニュースリリース(2025年10月28日)

  • CNET Japan/ITmedia NEWS/Impress Watch(2025年10月28日報道)

 

 

 

 

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