奈良・国道169号「高取バイパス」3.4kmが10月31日に全線開通! 事業化から28年、吉野方面へのアクセス改善と現道渋滞緩和へ



奈良県は、国道169号「高取バイパス」の未供用区間、高取町松山~清水谷間2.0kmを2026年10月31日に開通します。2012年に先行供用した兵庫~松山間1.4kmと合わせ、全長3.4kmが全線開通します。

1998年度の事業化から28年。高取町内の国道169号で続いてきた混雑の緩和に加え、吉野方面と京奈和自動車道を結ぶ広域道路ネットワークの形成が一段前進します。

総事業費166.9億円、計画交通量は最大1.38万台/日

高取バイパスは、高取町兵庫から清水谷までを結ぶ全長3.4kmのバイパスです。国道169号は橿原市から高取、大淀、吉野方面を結ぶ主要幹線で、高取町内では市街地を通過する現道の混雑が長年の課題となってきました。
項目 内容
路線名 一般国道169号 高取バイパス
区間 高取町兵庫~清水谷
延長 3.4km
構造規格 第3種第2級
車線数 暫定2車線
幅員 8.5m
設計速度 60km/h
計画交通量 13,500~13,800台/日
事業化 1998年度
総事業費 166.9億円
既開通 兵庫~松山1.4km/2012年4月20日
今回開通 松山~清水谷2.0km
全線開通 2026年10月31日
2022年度の公共事業再評価では、事業全体の費用便益比(B/C)は1.2、残事業では4.9と算定されています。

トンネル・高架橋が連続



今回開通する南側2.0kmは起伏の大きい地形を通過し、トンネルや高架橋など大型構造物が連続します。
主な構造物 延長
松山高架橋 343m
高取トンネル 635m
上辻トンネル 82m
清水谷高架橋 154m
薩摩跨線橋 234m
供用済み区間から南へ、高取トンネル、上辻トンネルを抜け、清水谷高架橋などを経て国道169号現道に接続します。延長3.4kmに対して構造物の占める割合が大きく、地形・地質条件の厳しさが事業の特徴となっています。

事業費は144億円から166.9億円へ

総事業費は2017年度再評価時の約144億円から、2022年度には166.9億円へ約23億円増加しました。工事の進展と地質調査によって追加対策が必要になったことが主因です。
主な増額要因 増額
里道復旧に伴う法面工追加 +4.0億円
上辻トンネル・切土部の土質変更 +2.5億円
河川付替えに伴う土留め工追加 +2.5億円
清水谷高架橋の杭長など変更 +5.5億円
地質調査に伴う地盤改良 +6.0億円
清水谷高架橋下部工の土質変更 +2.5億円
合計 +23.0億円
地盤改良や清水谷高架橋の設計変更が大きく、山間部での道路整備の難しさが事業費にも表れています。

1998年度事業化、最後は法面対策で1年延期



高取バイパスは1997年に都市計画決定、1998年度に事業化され、2001年度に工事へ着手しました。北側1.4kmは2012年4月に部分開通しましたが、南側区間の整備にはさらに時間を要しました。
年度・時期 主な動き
1997年 都市計画決定
1998年度 事業化
2000年度 用地取得着手
2001年度 工事着手
2012年4月 兵庫~松山1.4km開通
2016~2019年 高取トンネルなどを施工
2022年度 再評価、総事業費166.9億円
2025年 法面対策などで完成時期を延期
2026年10月31日 全線3.4km開通
2022年度末に向けた再評価段階では用地取得率100%、事業進捗率約87%まで進んでいましたが、工事終盤に法面の脆弱箇所への追加対策が必要となり、当初の2025年度完成から2026年度へ延期されました。

現道の混雑度は「1.23→0.49」



最大の整備効果は、高取町内を通る国道169号現道から通過交通をバイパスへ転換できることです。

奈良県の試算では、高取町観覚寺付近の混雑度は1.23から0.49へ低下します。混雑度1.0を超える状態から大きく改善する見込みで、市街地の渋滞緩和に加え、沿道環境や交通安全面での効果も期待されます。

橿原高田IC~吉野山は33分→25分



広域的なアクセス改善も大きな効果です。

奈良県の試算では、京奈和自動車道・橿原高田ICから吉野山までの所要時間は33分から25分へ8分短縮されます。

吉野山は春の観桜期を中心に交通が集中します。高取町内のボトルネックを解消することで、吉野地域への観光アクセスの速達性だけでなく、所要時間の安定化も期待できます。

国道169号は吉野町から川上村、上北山村、下北山村を経て三重県熊野方面へ続くため、その効果は吉野山だけにとどまりません。

救急搬送は平均2分、混雑時には大幅短縮



奈良県が重視するもう一つの効果が救急医療です。

大淀消防署から奈良県立医科大学附属病院までの所要時間は、平均で21分から19分へ約2分短縮する試算です。混雑時には54分から30分まで短縮するケースも示されており、救急搬送時間の安定化という面でも効果が見込まれます。

2023年には国道169号を利用して奈良・大和高田方面へ搬送された患者が322人に上っています。奈良県南部では高度医療機関が北部に集中しているため、幹線道路の速達性と信頼性は地域医療を支える重要なインフラでもあります。

吉野材の物流にも効果



国道169号は観光道路であると同時に、吉野地域の産業道路でもあります。

下市町、黒滝村、天川村、川上村、東吉野村などから原木や木材を運ぶ主要ルートとして利用されており、奈良県の再評価資料では、観光シーズンの渋滞を避けるため集荷を1日早めるケースがあるとの事業者の声も紹介されています。

バイパスによる効果は単純な所要時間短縮だけではありません。輸送時間のばらつきを抑え、物流の定時性を高めることは、吉野材をはじめとする地域産業の競争力にもつながります。

次の焦点は「御所高取バイパス」

高取バイパスは10月31日で完成しますが、広域道路ネットワークとしてはまだ途上です。北側では、京奈和自動車道・御所ICと高取バイパスを結ぶ「御所高取バイパス」が事業中です。
比較 高取バイパス 御所高取バイパス
延長 3.4km 事業区間2.3km※
車線数 暫定2車線 4車線
幅員 8.5m 21.25m
設計速度 60km/h 60km/h
事業化 1998年度 2017年度
事業費 166.9億円 45.2億円
状況 2026年10月全通 事業中
※都市計画上の御所高取線全体は約3.4km。

御所高取バイパスは2017年度に事業化され、御所市柏原~本馬間2.3kmを中心に整備が進められています。完成すれば高取バイパスと京奈和道・御所ICが直接結ばれ、吉野方面から高速道路網へのアクセスはさらに改善します。今回の開通は、高取町内のバイパス完成というだけでなく、その広域道路軸を構成する重要なピースが一つ埋まることを意味します。

約130km「奈良中部熊野道路」の北側を形成



さらに広域で見ると、高取バイパスは奈良県中部から紀伊半島南部へ延びる「奈良中部熊野道路」約130kmの一部に位置付けられています。北側で京奈和自動車道、南側で吉野、大台ヶ原、熊野方面へ延びる国道169号につながり、「紀伊半島アンカールート」を構成する道路軸の一角を担います。

紀伊半島は急峻な地形が多く、豪雨や土砂災害による道路寸断リスクを抱えています。このため道路整備には、平常時の時間短縮だけでなく、災害時の代替経路を確保し、南北交通の信頼性を高める役割があります。

高取バイパスは全長3.4km。しかし、その効果は高取町内だけでは完結しません。

1998年度の事業化から28年を経て、10月31日に国道169号北部のボトルネックが一つ解消されます。今後、御所高取バイパスまで完成すれば、京奈和道と吉野地域を直結する道路軸が形成され、高取バイパスの効果はさらに広域へ波及することになります。




出典

・奈良県「一般国道169号 高取バイパスの開通について」
・奈良県「一般国道169号 高取バイパス 公共事業再評価資料」
・奈良県「一般国道169号 高取バイパス」
・奈良県「一般国道169号 御所高取バイパス」
・奈良県「御所高取バイパス説明会資料」
・奈良県公共事業評価監視委員会議事録

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