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『あいりん労働福祉センター建替え計画』が決まった「きっかけ」と「現状と課題」について


新労働施設 南立面図(基本設計時点でのイメージ)

あいりん労働福祉センターは、大阪市西成区萩之茶屋に立地する「あいりん地区の日雇い労働者の就労斡旋と福祉の向上」を目的に設置された福祉施設で、労働施設と病院、住宅の合築構造の建物です。旧総合センターには市営住宅、医療センター、職安、労働センター、寄り場、付随する福利厚生施設が設置されていました。

既存建物は1970年に竣工し、築50年以上が経過しており、建物が現行の耐震基準を満たしておらず老朽化が著しい事や、利用者の安全・安心確保のための早期の耐震化が課題となっていました。

 



国と府は、2015年に労働施設のあり方を検討するために建替改修手法等に関する調査を実施。2016年1月から、有識者、あいりん地域の町会、支援団体や労働関係団体等の関係者が参加した「労働施設検討会議」で、あいりん労働福祉センターの耐震化について検討が重ねられ、旧総合センター移転の是非、移転場所の確保、補強技術と使い勝手,改修工事期間と安全性、利用者への影響、費用対効果等を検討した結果、多数の方々の意見として「建替えやむなし」という方針が決まりました。

 

耐震性能が著しく低い

出展:Wikipedia

建替えのきっかけは「耐震性の問題」が露呈した為です。2008年度に実施された耐震診断で、旧総合センターの構造耐震指標である『Is値』は、北側棟 0.208,南側棟 0.214と判定されました。これは、震度6強~7程度の地震の振動及び衝撃に対して『倒壊又は崩壊する危険性が高い』とされる0.3未満を遙かに下回る数値であり、耐震上非常に危険な状態であると言えます。この為、大地震に至らない地震であっても、旧総合センターが潰れてしまう可能性があり、人命を守る観点から一刻も早く移転する必要があると判断されました。

Is値(構造耐震指標)とは

耐震診断により、建物の耐震性能を示す指標で、Is値0.6以上で耐震性能を満たすとされる。文部科学省では学校の耐震強度はIs値0.7以上を保つよう求めてる。

・Is値0.3未満:大規模な地震により倒壊や崩壊の危険性が高い建物
・Is値0.3以上0.6未満:大規模な地震により倒壊や崩壊の危険性がある建物
・Is値0.6以上:大規模な地震に対して倒壊や崩壊の危険性が低い建物

 

建て替えに反対する人たちの主張の一部



あいりん労働福祉センター建替えは、市営住宅(第1・第2)と医療センターは萩之茶屋小学校跡地に移転、ハローワークと労働センターは,いったん南海電鉄高架下に仮移転したのち旧総合センター跡地の新ビルに本移転する計画です。病院以外のスペースについては2019年3月31日をもって閉鎖。当初は2020年頃にも解体撤去し、2025年に新施設が完成する予定でした。

 

しかし、建て替え計画は数年間ストップしています。路上生活者の一部や、その支援者などが「新施設で休息場所が失われる」「建て替え後の具体像が示されていない」と計画に反発して、建物周辺の敷地で寝泊まりを重ね『不法占拠』を続けているためです。市は解体工事の入札も実施できない状態に陥っています。

大阪府が路上生活者22人に立ち退きを求めた訴訟で、大阪地裁は2021122日、大阪高裁は2022年12月に、立ち退きを命じる判決を言い渡しました。ただし「判決確定前でも立ち退きを強制できる仮執行宣言は認めない」としています。府・市は、路上で生活する人たちに近くに設けられたシェルターの活用や、生活保護の受給を勧め、路上生活から脱してほしいと呼びかけています。



建て替えに反対する人たちの主張の一部

1:新施設で休息場所が失われる
路上生活者はセンター内を休息場所としても活用してきた実態があり、新施設で休息場所が失われる。シャワー室、食堂、娯楽室、十分な広さの休息場所がない。

2:行政の世話にはなりたくない
市は占拠を続ける路上生活者に生活保護の受給を勧め、立ち退きを求めているが、「行政の世話にはなりたくない」などとして理解を得られていない

3:新しい施設の利用条件が厳しくなることへの懸念

4:旧:労働センターを国の登録有形文化財(稼働遺産)として残してほしい

5:仮設のハローワークがある南海線は緊急耐震補強がなされておらず危険。あいりん職安、労働福祉センターは活動をただちに停止を

変わろうとする地域の力・積極的な姿勢が報われて欲しい


新労働施設 北立面図(基本設計時点でのイメージ)

「あいりん総合センター」については、地域住民、商業団体、労働者団体、有識者などと国や府市行政が数年にわたり「ボトムアップの議論」を重ねて針に糸を通すような対話をつづけてきてようやく道筋が見えてきた所です。

当初の計画では、労働施設についても、2025年の大阪・関西万博までには整備が完了する予定でしたが「あいりん総合センター」の周辺敷地が不法占拠されたことに伴い、整備計画に遅れが生じています。まちづくりの中核をなす施設の再建の目処が立たない状況は、地域の将来にとっては大きな不確定要素となっています。

新今宮駅では 2031 年になにわ筋線の開業も控え、さらなる活性化が期待されています。一部の不法行為よりも、これまでの状況を肯定せず、変わろうとする地域の力・積極的な姿勢が報われる事を期待したいと思いました。

5 COMMENTS

アリー my dear

大阪・あいりん地区の野宿者立ち退き命令確定 最高裁(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF299VC0Z20C24A5000000/

大阪市西成区のあいりん地区にあり、2019年に閉鎖された複合施設「あいりん総合センター」の敷地で生活する野宿者らに、土地を所有する大阪府が立ち退きを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は、野宿者5人の上告を退ける決定をした。27日付。立ち退きを命じた一、二審判決が確定した。
府は判決確定に伴い、大阪地裁に強制執行を申し立てるとみられる。

日雇労働者

私はこの地域で雇い労働者をしてる者です。あいりん労働センターの建て替えじたいは反対していませんが、建て替えの真の目的がこの地域の再開発及び日雇い労働者の排除である可能に高いことから 建て替えの反対をしています。
センター 閉鎖とともに、求人プラカードを廃止して、日雇いの窓口照会を開始しましたが全く機能せず、早朝の窓口照会中止する方針になりました。
私たち 労働者が窓口 照会はうまくいかないと何度も説明したのに無視して、日雇い労働市場の寄場を廃止(あいりん労働センターを閉鎖)したのです。
これにより労働者が減り、労働者が減ったことにより業者も減りました。業者が減ったことによりさらに労働者が減るという悪循環に陥っています。
結局、あいりん労働センターの日雇い労働市場から、路上日雇い労働市場に変わっただけです。
労働施設検討会議には労働者は参加できず、見学さえもできない状態で、労働者の意見を無視して労働施設の計画を立てている段階です。
新しい労働施設が建設されても窓口紹介だけであれば利用する業者が少ないのあれば、新しい労働施設は何の意味もありません。
野宿者の立ち退き裁判においても仮執行宣言が出されなかったのは、新しい労働施設の具体的な建設計画がないことが原因です。

よっさんdsnmb

行政の世話になりたくないなら大阪から出ていってどこかで『行政が一切関わらない形で自力』で生活してくれよ。
当然、『行政の世話になりたくない』のだから電気ガス上下水道ごみ収集に道路携帯電話テレビラジオ郵便病院学校といったインフラも一切合切『行政は提供しない、されない』そういう場所を自分で見つけて自分だけの力で生活してくれ。

ポンタ

・おはようございます。行政による民間への民事訴訟は権力・財力の非対称性から容易には仮執行が認められないんですよね。近隣に設備の整った代替施設がありながらもここまで掛かりますか。
・反対に地震等の倒壊で負傷した場合大阪府を訴える等あれば容易に認められそうですね。国を相手取る民事訴訟は勝訴がもの凄く難しいですが都道府県を相手取るそれは意外と勝訴例があります(特に誤収監等)。
・Is値0.21ですか。今の基準なら話になりませんね。生活保護は不正でなければ意義があるのも分かりますし、社会的損失を考慮すれば必要な制度ですから使っていいはずの制度です。あとこの様な施設は無くなったら困るからこそ耐震面での建て替えが理解できないのでしょうか。

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