大阪モノレール・万博記念公園駅前に計画されている『(仮称)万博アリーナ』。日本トップクラスのキャパシティを持つ大規模アリーナの開業は本当に楽しみです。しかし、懸念されるのが公共交通機関の輸送力。万博記念公園駅の周辺には、国内トップクラスの売上を叩き出す大型ショッピングモール「ららぽーとEXPOCITY」と4万人規模の収容人数を誇る「パナソニックスタジアム吹田」があり、さらに「万博アリーナ」が開業すると、大阪モノレールが押し寄せる観客を捌ききれるのか?少し心配になってきました。
今回は駅周辺の集客施設とモノレールの輸送力を比較しながら、万博アリーナへのアクセスを考えて見たいと思います。
出典元:
→大阪府統計年鑑(令和2年)
→最も人気なのは? Jリーグ2023観客数ランキング1~10位。浦和レッズに迫るクラブとは
→市立吹田サッカースタジアムにおける コンサート開催検討に係る 自主環境影響評価報告書
年商500億円以上を叩き出す「ららぽーとEXPOCITY」
駅周辺で日常的な賑わいを生み出している施設は「ららぽーとEXPOCITY」。商業施設面積:約71,000mに、27施設、約300店舗を展開、年間売上高は507億円。年間来客数は約2000万人以上で、来場者の約30%がモノレールを利用しています。
ららぽーとEXPOCITY
7施設 約300店舗
商業施設面積:約71,000m2 。
年商:507億円。
年間来客数:約2000万人以上(来場者の約30%がモノレールを利用)
4万人収容する「パナソニックスタジアム吹田」
EXPOCITYに隣接するのが「パナソニックスタジアム吹田」。国際試合にも対応する本格的なサッカー専用スタジアムで収容人数約40,000人。想定年間イベント 40試合+コンサート4回程度が開催されており、コロナ禍前の2019年の平均来場者数は27,708人。その約60%がモノレールを利用します。稼働日数は少ないですが、稼働日の集客力は抜群で、試合開始前、終了後に一気に利用者が押し寄せる特性があります。
パナソニックスタジアム吹田
サッカー専用スタジアム
収容人数約40,000人
想定年間イベント 40試合+コンサート4回程度
コロナ禍前の2019年の平均来場者数は1試合あたり27,708人
(来場者の約60%がモノレールを利用)
西日本最大の18000人を収容する「万博アリーナ」
万博アリーナ(目的アリーナ)の収容人数約18,000人、想定年間イベントは、パナソニックスタジアムよりもかなり多い 165回で、約180万人/年を集客する計画です。パナスタと同じく試合開始前、終了後に一気に利用者が押し寄せる特性があります。
万博アリーナ(仮称)
多目的アリーナ
収容人数約18,000人
想定年間イベント 165回
約180万人/年
モノレールの輸送力はどれぐらい?
万博アリーナの最寄り駅となる、大阪モノレール「万博記念公園駅」のコロナ禍前の2019年の万博記念公園駅の乗降客数は、1日あたりの乗車人数は10,761人でした。大阪モノレールは4両固定編成で、編成定員は400人。ラッシュ時の混雑率を150%に想定すると、1本あたりの輸送力は600人となります。現行ダイヤの現在のラッシュ時の最大運転本数は1時間あたり片道12本(5分ヘッド)なので、12本/h ✕ 600人= 7,200人(片道)。全ての列車の混雑率が御堂筋線の朝ラッシュ程度になりますが1時間で、約7,200人(片道)を輸送する事が出来ます。
モノレールの増発で乗客を捌ききれるか?
混雑する「万博記念公園駅」
コロナ禍前のバナスタの平均集客人数は27,708人。来場者の約60%がモノレールを利用しており、試合終了後に16,624人が駅に押し寄せる事になります。万博アリーナのキャパシティは18,000人。パナスタと同じく約60%がモノレールを利用した場合、約10,800人が駅に向かう事になります。仮に、パナスタと万博アリーナの来場者が同時に押し寄せた場合、パナスタ(16,624人)+万博アリーナ(10,800人)=27,424人となります。これにEXPOCITYの来店者など日常利用者がプラスされるので、おそらく2.9万人ほどの利用者が駅に殺到する事になりそうです。
この2.9万人を現行ダイヤの最大運転本数12本/時で捌くとして、千里中央方面と門真南方面の2方向に均等に分散したと仮定すると、輸送力は600人*24本/時=14,400人。全員を運び切るまで約2時間強かかる事になり、完全にパンク状態になります。
3分ヘッドに増発するか、6両編成に増結する?
対策としては、運転本数の増加が考えられます。車両が足りないので、実際はこんなに増発出来ないと思いますが、仮に20本/h(3分ヘッド)にすると12,000人(片道)、2方向で24,000人の輸送力が確保できます。これなら、1時15分ほどで捌く事ができます・・・。いや、これもパンク状態ですね。
その他、4両編成→6両編成に増強の上、現実的な最大運転本数15本/h (4分ヘッド)に増発できれば、混雑率150%想定で1列車900人 ✕ 15本/h ✕ 2方向=27,000人になります。これならなんとか1時間強で捌く事ができますが、相当厳しい状況に変わりありません。4両編成を6両編成に増結するには、全駅のホーム施設を6両対応に改造し、車両も増備する必要があり莫大な費用がかかりそうです。
モノレール車両 4両編成
1本あたりの輸送力 編成定員約400人 混雑率150%想定で600人/本
現在のラッシュ時の最大運転本数は1時間あたり片道12本(5分ヘッド)
・12本/h ✕ 600人= 7,200人(片道)
・15本/h ✕ 600人= 9,000人(片道)
・20本/h ✕ 600人= 12,000人(片道)
4両編成→6両編成に増強
・15本/h (4分ヘッド)1列車900人=13,500人(片道)
モノレール+今里筋線延伸で混雑に対応!
出典:GoogleMAP 筆者加筆。現時点でこの様な構想は無く完全なる妄想です!
これは完全な僕の妄想ですが、万博アリーナの開業を見据えて、中途半端な場所が終点になっている大阪メトロ・今里筋線を北進させ、場万博記念公園駅とJR、阪急を接続するのが良いと思います。モノレールの輸送力に今里筋線の輸送力が加わり、処理能力が大幅に増加する他、岸辺駅と正雀駅でJR、阪急と接続する事で広域からの集客が可能となり、今里筋線に接続する各路線からのアクセス性が向上します。万博記念公園駅の混雑緩和と当時に、利用が伸び悩んでいる今里筋線の活性化に繋がり、鉄道空白地帯に新駅を設ける事で、公共交通機関へのアクセス可能エリアの拡大にも繋がります。
<今里筋線>
1日あたりの1日の利用者数 約6.2万人
ミニ地下鉄車両 4両編成
1本あたりの輸送力 編成定員約377人 混雑率150% で565人
現在のラッシュ時の最大運転本数は1時間あたり片道11本(5.4分ヘッド)
11本/h ✕ 565人= 6,215人(片道)
ちなみに今里筋線はミニ地下鉄規格なので、同じ4両編成でも大阪モノレールよりも若干輸送力が少なくなります。モノレールを4両のまま15本/hに増発し、今里筋線を延伸させ15本/hに増発した場合の輸送力の合計は26,475人/hとなります。
必要な輸送力を確保するためには、大規模な投資が必要になります。モノレールを4両→6両に増強するにも莫大な費用がかります。せっかく大規模投資を行うのであれば、万博記念公園エリアのアクセス性を根本的に向上させる事ができる今里筋線の延伸と、モノレールの増発の2方面作戦で対応するのがベストだと考えています。
モノレール+今里筋線北伸して増発した場合の輸送力
モノレール:15本/h ✕ 600人= 9,000人 ✕2 方向=18,000人/h
今里筋線:15本/h ✕ 565人= 8,475人/h
合計:18,000人 + 8,475=26,475人/h
どっちにせよ投資総額は1000億円を超えるでしょう。果たして、それを良しとするか否か。最近は現実的を通り越して卑屈になり、節約を通り越してケチになってる人が多い気がするので、難しい気がしますね。
私も今里筋線を万博記念公園駅まで延伸したらよいと以前から思っていました。
ただ、ルートは図示された市場池公園を経由するのではなく、紫金山公園を経由するほうがよいと思います。
紫金山公園の西側には、多くのマンションが建っているからです。