大阪市が「令和9年度 国の施策・予算に関する提案・要望」を取りまとめ 万博後の成長戦略を国に売り込む“政策営業”の中身



大阪市は、令和8年6月に「令和9年度 国の施策・予算に関する提案・要望」を取りまとめました。国の予算編成や制度改正に向け、大阪市として国に求める政策メニューを整理した公式資料です。

この種の国要望は、単なる「お願い」ではありません。自治体だけでは動かせない道路、鉄道、港湾、空港、都市再生、子育て、防災、福祉などの分野について、国の制度や予算を引き寄せるための政策提案です。

民間企業にたとえれば、予算や制度を握る意思決定者に対し、自分たちの案件を採用してもらうための提案営業に近いものです。もちろん「政策営業」という表現は本稿の読み解きですが、今回の要望書は、大阪市が万博後の成長戦略を国に売り込む資料として読むと分かりやすくなります。

 要望の柱は「日本の成長エンジンとなる大阪」



今回の要望書で最初に掲げられているのは、「日本の成長エンジンとなる大阪の実現」です。

大阪・関西万博を終えた大阪にとって、焦点は万博の余韻ではありません。万博で得た技術、人流、国際的な注目度を、次の都市成長にどうつなげるかです。

主な成長メニューは次の通りです。
No. 分野 大阪市が国に求めた主な内容
1 万博レガシー 万博で披露された最先端技術の実装化・産業化支援
2 国際会議 「WHX Leaders Osaka」の継続開催支援
3 脱炭素 ペロブスカイト太陽電池、帯水層蓄熱、水素技術などの普及支援
4 都市魅力 食、歴史、文化芸術、エンタメなどの発信支援
5 次世代交通 空飛ぶクルマの商用運航に向けた制度整備・財政措置
6 ライドシェア 規制の少ないライドシェア制度の検討
7 都市開発 うめきた2期、大阪城公園周辺、夢洲第2期への支援
8 IR IR税制・カジノ管理規制、依存症対策、警察力強化
9 広域交通 リニア、北陸新幹線、淀川左岸線、新大阪駅、都市鉄道整備
10 特区・金融・港湾 国家戦略特区、国際金融都市、阪神港の機能強化
11 関西国際空港 ※重点要望 発着回数30万回、欧米路線拡充、新飛行経路の運用配慮
全体として、万博後の大阪を「観光イベントの開催地」から「技術、都市開発、交通、制度改革を組み合わせた成長都市」へ引き上げようとする構成です。

万博レガシーを「展示」から「実装」へ



最初の重点は、万博で披露された最先端技術の実装化・産業化です。

大阪市は、万博の成果を一過性のものにせず、次の時代へ継承する必要があるとしています。そのために、経済界、国、関西広域連合、大阪府・市が一体となる「未来創造会議」を軸に、技術の実装化、国際イベントの継承、夢洲でのレガシー発信を進める方針です。

国に求めているのは、次世代モビリティ、スタートアップ、ライフサイエンス、ヘルスケア、脱炭素技術などへの財政支援と制度支援です。ペロブスカイト太陽電池、帯水層蓄熱システム、水素関連技術なども具体的な対象に挙げられています。

大阪市が求めているのは、万博の記念事業ではありません。万博で見せた技術を、都市や産業の中で実際に使えるようにすることです。

うめきた、大阪城、夢洲を成長拠点に

都市開発では、うめきた2期、大阪城公園周辺、夢洲第2期が主要テーマです。
No. エリア 国への要望 狙い
1 うめきた2期 基盤整備への財源措置 令和9年度の全体まちびらき、令和10年度の基盤整備完成
2 うめきた2期 研究開発プロジェクト支援、国のイノベーション支援機関の関西機能拡充 新産業創出機能の強化
3 大阪城公園周辺 特定都市再生緊急整備地域等の指定、財政支援 大阪東側の国際拠点形成
4 夢洲第2期 記念公園・記念館整備への財政支援、地域未来交付金の拡充 万博跡地の国際観光拠点化
大阪市は、万博後の成長を夢洲だけに閉じ込めていません。梅田、森之宮・大阪城、夢洲をそれぞれ異なる成長拠点として位置づけ、都市全体の競争力を高めようとしています。

IRは成長期待とリスク対策をセットで要望



大阪IRについては、国際競争力の確保とリスク対策が同時に要望されています。

主な項目は、IR税制やカジノ管理規制の国際標準化、ギャンブル等依存症対策の強化、治安や地域風俗環境を守るための警察力強化です。

大阪市はIRを観光立国や経済成長に資するものと位置づける一方、依存症対策や治安対策についても国の支援を求めています。成長のための制度設計と、社会的リスクの抑制をセットで国に求めている点が特徴です。

 広域交通は新大阪、夢洲、関空をつなぐ骨格



交通インフラでは、リニア中央新幹線、北陸新幹線、淀川左岸線、新大阪駅、都市鉄道ネットワークが並びます。
No. 交通インフラ 国への要望
1 リニア中央新幹線 名古屋・大阪間の早期着手、早期全線開業
2 北陸新幹線 新大阪までの早期全線整備、ルート検討と合意形成
3 淀川左岸線2期・延伸部 早期整備に向けた国の財源確保
4 新大阪駅 広域交通結節点としての機能強化
5 なにわ筋線 関空アクセス強化に資する路線として財源確保
6 JR桜島線延伸 新大阪と夢洲のアクセス向上
7 京阪中之島線延伸 京阪神都市圏の鉄道ネットワーク強化
8 なにわ筋連絡線・新大阪連絡線 関空と新大阪のアクセス強化
ここで重要なのは、新大阪、夢洲、関空が一つの交通戦略の中に入っていることです。新大阪を広域交通の結節点とし、夢洲を国際観光拠点に育て、関空アクセスも強化する。これは単なる移動時間短縮ではなく、万博後の大阪を国内外から人を呼び込める都市へ変える骨格づくりです。

特区、金融、港湾で「稼ぐ力」を高める



制度改革や産業基盤の強化も、成長メニューに含まれます。
No. 分野 国への要望
1 国家戦略特区 規制改革メニューの拡充、柔軟な制度運営
2 民泊 特区民泊を含む各種民泊の適切な運営確保
3 スーパーシティ 規制・制度改革、財政措置
4 国際金融都市 金融・資産運用特区の活用、規制緩和、税財政措置
5 阪神港 AIターミナル、CONPAS、カーボンニュートラルポート、集貨・創貨支援
大阪市は、観光客を増やすだけでなく、ビジネス、金融、物流の拠点性も高めようとしています。特区制度で規制改革を進め、国際金融都市で海外企業や高度人材を呼び込み、阪神港で国際物流機能を強化する構図です。

7関空の要望は控えめだが、重要度は高い



関西国際空港については、最重点要望ではなく、後半の重点要望に位置づけられています。

要望内容は、発着回数30万回の実現、欧米をはじめとする就航ネットワークの拡充、新飛行経路運用時の安全性確保と住民生活環境への配慮です。
No. 要望項目 内容
1 発着回数30万回 関空の発着容量拡大
2 就航ネットワーク 欧米路線を含む国際線ネットワークの拡充
3 新飛行経路 安全性を前提に、住民生活環境へ配慮した運用
記述量は多くありません。ただし、万博後の大阪を国際都市として成長させるうえで、関空は欠かせないインフラです。夢洲第2期、IR、国際会議、広域観光、国際金融都市を海外とつなぐ入口になるからです。

要望書では、なにわ筋線やなにわ筋連絡線・新大阪連絡線も、関空アクセス強化に関係する路線として挙げられています。関空そのものへの記述は控えめですが、交通戦略の中では重要な位置を占めています。

まとめ:大阪市の要望は「万博後の成長装置」を国に売り込む資料



今回の要望書は、万博後の大阪が国に何を求めているのかを示す資料です。

大阪市が求めているのは、万博の成果を都市成長に変えるための制度、財源、交通インフラ、国際競争力です。最先端技術の実装、国際会議の継続、夢洲第2期のまちづくり、IRの実現、うめきたや大阪城周辺の拠点形成、リニア・北陸新幹線・都市鉄道の整備、特区や国際金融都市、阪神港の機能強化が並びます。

これは単なる“ほしいものリスト”ではありません。国の政策と予算を、大阪の成長戦略に引き寄せるための政策提案です。

関空は要望書上の扱いこそ控えめですが、万博後の大阪を海外とつなぐ重要なインフラです。発着回数30万回、欧米路線の拡充、関空アクセスの強化は、大阪が国際都市として次の段階へ進むための前提条件になります。

万博後の大阪は、国に何を求めているのか。

答えは、万博の成果を都市の成長に変えるための総合支援です。そして、その成長メニューを動かすための基盤として、交通、制度、拠点整備、国際ゲートウェイの強化を求めています。




出典:大阪市「令和9年度 国の施策・予算に関する提案・要望」

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