学研高山地区第2工区288ha、企業誘致戦略策定へ 三菱UFJリサーチを受託候補者に特定、NAIST×大阪東部で「研究から製造」へ



奈良県生駒市の「学研高山地区第2工区」約288haが、企業誘致を具体化する段階に入りました。

生駒市は「学研高山地区第2工区企業等立地誘導戦略検討調査業務」の公募型プロポーザルで、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)大阪を受託候補者に特定しました。

全国と大阪東部を中心に2分野で延べ600社以上へアンケートを送り、敷地規模、電力・水・通信、人材、研究環境、支援制度などを調査します。狙いは単なる企業誘致ではなく、高山にどの産業を集積させるべきかを企業需要から逆算することです。

人口約2万3,000人のニュータウンとして始まった巨大開発は、NAIST(奈良先端科学技術大学院大学)の研究力と大阪東部の製造力を結ぶ産業拠点へ、役割を大きく変えようとしています。

延べ600社以上から「高山に必要な条件」を探る


項目 内容
対象 学研高山地区第2工区 約288ha
発注者 生駒市
受託候補者 三菱UFJリサーチ&コンサルティング大阪
業務期間 契約締結~2027年3月31日
予定価格 約1,197万円(税込)
研究成果活用型 NAIST・J-PEAKSと親和性のある企業300社以上へアンケート、約10社をヒアリング
ASEAN連携型 大阪東部などの製造企業300社以上へアンケート、約20社をヒアリング
調査項目 敷地、電力、水、通信、住宅、人材、大学連携、支援制度など
誘致戦略は二本立てです。

一つは、NAISTの研究成果を製品化・生産へつなげる「研究成果活用型生産施設」。もう一つは、東大阪、八尾、大東、四條畷、枚方など大阪東部の製造業とASEANの生産ネットワークを結ぶ「ASEAN連携型・阪奈東西軸生産施設」です。

企業向けインセンティブやインキュベーション施設、国際人材の受け入れ、誘致組織、プロモーションに加え、街びらきまで企業の進出意向を維持する仕組みも検討します。

先に造成して売るのではなく、企業が求める条件を把握してから都市機能やインフラへ反映する、需要起点の開発です。

住宅ニュータウンから産業都市へ、30年近い軌道修正


時期 主な動き
1997年 学研都市に追加。約288ha、人口約2万3,000人の住宅開発を想定
2007年 UR都市機構が事業中止
2016年 生駒市がUR所有地を取得
2022年 マスタープラン策定。産業・研究機能を軸とする段階開発へ転換
2024年 南エリア約48haの事業化が具体化
2025年 奈良県が上位計画を「住宅中心」から「産業中心」へ変更
2026年 MURCを受託候補者に特定
2027年度 南エリアの事業認可を目指す
288haを一括開発するのではなく、概ね30haを基本に30~50ha程度の個別地区へ分けて段階的に整備します。

先行する南エリア約48haでは土地区画整理準備組合が発足し、フジタが一括業務代行予定者に選定。その次となる国道163号バイパス側のゲートエリア約43haも事業化が進んでいます。

現在は、計約91haで具体化を進めながら、288ha全体の産業構成を固める段階にあります。

狙いは「脱ベッドタウン」と研究成果の社会実装



 

出展:奈良先端科学技術大学院大学

生駒市は大阪のベッドタウンとして成長しましたが、事業系用地が少なく、市外通勤への依存度が高い都市構造を抱えています。人口減少局面では、住宅供給を中心とした成長モデルにも限界があります。

高山第2工区は、雇用を増やし、「住む街」から「住み、働き、事業を生み出す街」へ転換する拠点です。

同時に、けいはんな学研都市に蓄積された研究成果を産業へつなぐ役割も担います。

隣接する高山第1工区にはNAISTなどの研究施設が集積する一方、一般的な製造施設を幅広く展開しにくい土地利用上の制約があります。第2工区に生産機能を受け入れれば、

研究 → 共同開発 → 試作 → 製品化 → 生産

を近接地域でつなぐことができます。

第2工区は、第1工区に不足していた社会実装・生産機能を補完する地区という位置づけです。

大阪東部のものづくりを取り込む


東大阪のものづくりのイメージ
出展:アマダ関西テクニカルセンター

もう一つの軸が大阪東部です。

東大阪や八尾などは国内有数の製造業集積地ですが、市街化が進み、新工場や研究開発拠点を拡張するまとまった用地を確保しにくいという課題があります。

その生駒山の東側に約288haの開発余地があり、隣接地にはNAISTがあります。

今回の構想を端的に表せば、大阪東部の製造力 × NAISTの研究力 × ASEANの生産ネットワーク です。奈良県内だけを対象とする工業団地ではなく、大阪経済圏の企業を取り込む広域産業戦略として設計されている点が重要です。

勝ち筋は「土地の安さ」ではなく「知識密度」

生駒市はこれまで、AI、バイオ、量子、マテリアル、環境・エネルギーに加え、半導体、蓄電池、データセンターなどの立地も視野に入れてきました。

ただ、今回の調査で鮮明なのは、成長産業を広く集めるのではなく、「高山に立地する理由」を持つ企業を探す姿勢です。

高速道路IC直結の平坦な産業団地と土地価格や物流効率だけで競えば、高山の優位性は限られます。

一方、研究開発型製造、試作、高機能材料、バイオ、AI・ICT、精密製造など、大学・研究機関との近接性が競争力になる高付加価値産業では、高山固有の強みを生かせます。

高山の勝ち筋は、土地の安さではなく「知識密度」にあります。

課題はスピードとインフラです。

企業の設備投資にはタイミングがあり、進出意向を確認できても、造成まで長期間待ってくれるとは限りません。また大型工場やデータセンターでは、大容量電力、用水、通信、道路、BCP性能などが立地可否を左右します。

今回の調査は、企業を探すと同時に、高山で現実に成立する産業を造成前に見極める作業でもあります。

288haを「産業循環」に変えられるか

高山第2工区が目指す産業循環は明快です。

NAISTで研究

企業と共同開発

高山第2工区で試作・製品化・生産

大阪東部の製造技術と接続

国内・ASEAN市場へ展開

今後の焦点 ポイント
企業需要 調査から具体的な立地案件が生まれるか
アンカー企業 大型の研究・生産拠点を獲得できるか
NAIST連携 研究成果を製品化・事業化へ結び付けられるか
インフラ 電力、用水、通信、道路が企業要求を満たすか
スピード 企業の投資サイクルに間に合うか
30年近く土地利用を模索してきた高山第2工区は、「何を造るか」から「どの産業を育てるか」へフェーズを進めました。

MURCによる今回の調査は、その構想を具体的な企業投資へ転換できるかを測る最初の試金石になります。




出典

・生駒市「学研高山地区第2工区企業等立地誘導戦略検討調査業務」関連資料
・生駒市「学研高山地区第2工区まちづくり」関連資料
・生駒市「学研高山地区第2工区マスタープラン」
・奈良県「関西文化学術研究都市建設計画」関連資料
・奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)
・東大阪市 製造業関連調査
・国土交通省近畿地方整備局「国道163号 清滝生駒道路」
・建設新報

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