南海電気鉄道株式会社(以下、南海電鉄)は2025年10月29日、物流施設ブランド「NANKAI-LOGI(ナンカイロジ)」を制定しました。
同ブランドは、2025年4月に吸収合併した泉北高速鉄道株式会社(以下、泉北高速鉄道)の物流事業を継承・拡大するもので、今後は関西圏を中心に高機能型物流拠点の開発を進め、鉄道・不動産に続く“第3の収益軸”として育成していく方針です。
鉄道の外に広がる南海電鉄の成長戦略
南海電鉄はこれまで、鉄道・沿線開発・商業施設運営を中心に事業を展開してきましたが、人口減少や少子高齢化による鉄道需要の減退を見据え、非鉄道分野での安定収益の確立を重要課題としています。その中で注目されたのが、泉北高速鉄道が長年展開してきた「物流施設事業」です。南海電鉄はこの分野を本格的にグループ経営へ取り込み、持続的な利益構造を強化する狙いを明確に打ち出しました。
泉北高速鉄道の合併と物流事業の背景

南海電鉄は2025年4月1日付で泉北高速鉄道を吸収合併しました。泉北高速鉄道は、もともと泉北ニュータウンのアクセス鉄道として整備された鉄道会社ですが、実は北大阪トラックターミナル(吹田市)や東大阪トラックターミナル(東大阪市)など、大規模な物流センターも運営してきました。この物流事業は、同社の鉄道経営を下支えする重要な収益源であり、長年にわたり安定した経営基盤を築いてきた点が特徴です。
泉北高速鉄道の2023年3月期の売上高は136億7,500万円、営業利益は45億9,900万円と堅調で、鉄道単体ではなく“物流+交通”の二本柱による経営構造が高く評価されていました。南海電鉄はこの収益モデルを継承し、物流事業をグループ全体の新たな成長エンジンと位置づけています。
「NANKAI-LOGI」ブランドの意図とデザイン
新たに制定された「NANKAI-LOGI」は、南海グループが物流施設事業を体系的に展開するための統一ブランドです。ブランドロゴでは、「G」と「I」を右上がりに配置して“未来への加速”を表現し、「O」と「G」の重なりで“止まらない物流の流れ”を象徴しています。名称には、地域と産業をつなぐ「南海(NANKAI)」と、物流(LOGISTICS)の融合を意味するメッセージが込められています。単なる名称ではなく、南海グループが「鉄道の外へ事業領域を拡張する」という意思を象徴するブランドとなっています。
主な物流施設と開発計画
南海電鉄(旧・泉北高速鉄道)が運営する主要物流拠点は以下の通りです。
| 施設名 | 構造 | 延床面積(㎡) | 供用開始 |
|---|---|---|---|
| 北大阪トラックターミナル7号棟(Ⅱ期棟) | 6層ランプ型 | 約183,000 | 2026年予定 |
| 大阪府食品流通センターE棟 | 4層ランプ型 | 約49,975 | 2023年 |
| 北大阪トラックターミナル1号棟 | 4層スロープ型 | 約49,980 | 2020年 |
| 北大阪トラックターミナル2号棟 | 5層ボックス型 | 約48,228 | 2014年 |
| 東大阪トラックターミナル11号棟 | 4層ボックス型 | 約19,206 | 2011年 |
| 北大阪共同配送センター4号棟(冷蔵・冷凍倉庫) | 3層ボックス型 | 約21,924 | 2005年 |
特に2026年竣工予定の「北大阪トラックターミナル7号棟」は、延床約18万㎡超の6層ランプ型施設で、関西最大級の規模を誇ります。
免震構造、EVトラック充電設備、自然採光システムなどを備え、環境対応と効率性を両立した次世代型物流拠点として開発が進められています。
安定収益とサステナブル経営への展開

物流施設は長期賃貸契約による安定収入が見込めるため、景気変動の影響を受けにくい事業です。南海電鉄は、保有・運営する物流資産を軸に、外部投資家との共同開発やリート化など、資産活用の多様化も視野に入れています。
さらに、2025年4月には株式会社東京流通センター(TRC)と業務提携を締結しました。自動運転トラックや貨物鉄道とのモーダルコンビネーションを活用し、東京~大阪間の幹線輸送効率化を図る実証的取り組みが進められています。また、太陽光パネルや省エネ空調、緑化駐車場の導入など、環境負荷を低減するサステナブル運営にも力を入れています。
南海の新しい社会インフラ構想

鉄道事業が「人の移動」を支えるインフラであるのに対し、物流は「モノの移動」を支えるインフラです。南海電鉄はこの両者を統合的に位置づけ、輸送・不動産・物流を一体化した“循環型インフラ経営”を目指しています。「NANKAI-LOGI」は、その第一歩として、南海グループが鉄道の枠を超えて社会を支える基盤事業へと進化していく象徴的なブランドといえます。
出展元
→南海電鉄の物流施設ブランド「NANKAI-LOGI(ナンカイロジ)」を制定先進的な施設の開発・拡大を進め、物流の効率化に貢献します




