別荘シェアリング事業のNOT A HOTEL株式会社は12月15日、新ホテルブランド「HERITAGE」と「vertex」を発表しました。これまでオーナー向けシェア型別荘を展開してきた同社が、一般利用可能なホテル事業に本格参入します。文化財保全と収益性を両立させる新モデルを構築します。
会員制から一般客向けへ、戦略を転換

今回の展開は同社にとって大きな転換点です。従来の10泊単位からシェア購入する会員制モデルから、誰でも宿泊できるホテル運営へ移行。建築アプローチも変化し、HERITAGEでは歴史的建築物のリノベーション、vertexでは実験的な未来志向の新築と、明確に差別化しています。より幅広い顧客層へのリーチと収益の多様化を図り、「日本の価値を上げる」というミッションのもと、社会的意義を持つ事業への進化を目指します。
HERITAGE:収益を保全費用に循環させる文化財ホテル

「HERITAGE by NOT A HOTEL」は、寺院や美術館などを現代の視点で再解釈するホテルシリーズです。第一弾は世界遺産・京都・東寺(教王護国寺)の旧宿坊をリノベーション。最大の特徴は、ホテル収益を建造物の修復・保全費用として循環させる持続可能なモデルです。
背景には深刻な課題があります。京都市の調査では、京町家の11.7%が7年で消失。全国的にも価値ある建築が、維持管理の難しさから活用されないまま老朽化・解体されています。同社は「単なる保存ではなく、現代の人々が泊まり、集い、体験する空間へ昇華させ、文化財を持続可能な形で未来へつなぐ」と説明。京都を起点に、全国の未活用歴史的資産を「未来への遺産」として再生する計画で、成功すれば文化財保全の新たなアプローチとして、地域活性化やリノベーション活用の好事例となる可能性があります。
vertex:ザハ事務所が日本初のホテルプロジェクト

「vertex by NOT A HOTEL」は、未来のライフスタイルを具現化するシリーズです。第一弾は沖縄で、故ザハ・ハディッド氏が設立したZaha Hadid Architectsが、日本初となるホテルプロジェクトを手がけます。
プロジェクトディレクターのルドヴィコ・ロンバリ氏は、「敷地の卓越した地形から着想を得たデザインで、海岸線から熱帯雨林へと柔らかくつながり、環境との深い一体感をもたらす」とコメント。全ヴィラから遮るもののないオーシャンビューとプライバシーを確保し、琉球石灰岩を踏襲した段状テラス、沖縄伝統建築の深い軒を再解釈したキャノピー、地元の石灰岩や陶器など地域の職人技を活用します。
構造体は高潮線から6.5m以上の位置に配置し、台風・地震に対応。再生骨材など循環型建設を採用し、環境負荷を低減します。
5年で累計契約高624億円、次のステージへ

NOT A HOTELは2020年の創業から5年で9拠点を開業。2025年11月末時点で、累計契約高624億円、オーナー数1,115名を達成しました。世界的建築家やクリエイターが手がけるデザイン性と、IoT技術による快適性を両立したハイエンド別荘で、全施設を相互利用できるネットワーク性が特徴です。
今回の2ブランド展開により、事業ポートフォリオを強化。既存オーナーにはより多様な施設ネットワークという付加価値を提供し、一般客からの収益確保、文化財保全による企業イメージの向上、世界的建築家との協業によるブランド価値の上昇など、多面的な効果が期待されます。
HERITAGEとvertexという対照的な2ブランドで「歴史の継承」と「未来の創造」を明確に打ち出し、ラグジュアリーホテル市場で独自性を確立します。開業予定時期などの詳細は今後随時発表予定。文化財保全と最先端建築という話題性の高い両プロジェクトが、どのような滞在体験を生み出すか注目されます。
【出典元】
→NOT A HOTEL初となるホテルブランド「HERITAGE」「vertex」を発表。第一弾は、京都東寺内の宿坊をリノベーション、沖縄にはZaha Hadid Architectsによるホテルを展開


