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南海電鉄による『通天閣』の子会社化の理由は「なにわ筋線」の開通を見据えた危機感の現れ?


大阪のシンボルである通天閣が、南海電気鉄道(以下、南海電鉄)の子会社となることが正式に発表されました。南海電鉄は2024年12月4日、通天閣を運営する通天閣観光株式会社の発行済株式の70.8%を取得し、同社をグループ企業として迎え入れることを決定しました。これにより、大阪・新世界エリアのさらなる活性化が期待されています。

 



通天閣観光は、大阪市浪速区新世界エリアを拠点に長年運営を行い、大阪を代表する観光スポットとして成長してきました。近年はインバウンド需要の拡大とともに訪問者数を増やしており、新たなアトラクション導入など、施設の魅力向上にも取り組んでいます。

一方、南海電鉄は沿線の人口減少を見据え、なんばエリアを中心とした街づくり戦略「グレーターなんば」を推進してきました。通天閣をその一環として取り込み、新世界エリアの観光資源としての価値を高め、地域の活性化につなげることが狙いです。



南海電鉄の子会社化により、通天閣は単なる観光施設にとどまらず、より広範な開発プロジェクトの中心的役割を果たすことが期待されています。特に、南海電鉄が手がける不動産開発との連携を強めることで、新世界エリア全体の観光資源との相乗効果を生み出し、訪日外国人観光客の誘致を強化するため、イベントやプロモーションの充実が計画されています。また、通天閣周辺の再開発が進められることで、より魅力的な観光拠点として成長が見込まれます。

さらに、南海電鉄は通天閣の維持・発展を目的に、施設の耐震補強やバリアフリー化を進める方針を示しています。これにより、高齢者や海外観光客の利便性を向上させ、より幅広い層の来訪を促す狙いがあります。

南海電鉄の戦略と天王寺駅の事例


南海電鉄は、沿線地域の人口減少や競争環境の変化に対応するため、「グレーターなんば」構想を推進し、不動産開発と観光資源の強化を図っています。特に、2031年に開業予定の「なにわ筋線」が関西国際空港とJR大阪駅を直結することで、訪日客がなんばエリアを経由せずに移動する可能性が指摘されており、これに対応するためミナミの魅力を強化する必要があります。

 



周辺の事例として、近年の鉄道網の拡充による、天王寺駅の拠点性の変化があげられます。「くろしお」「はるか」の新大阪直通を可能にした短絡線の整備、おおさか東線の開通による迂回ルートの整備、再開発の進展による梅田の吸引力の増加などが、南大阪エリアのターミナル機能に影響を与えています。これを受け、天王寺駅周辺では駅施設のリニューアルや、あべのハルカスの開発、天王寺動物園などの観光資源との連携強化が進められています。

 



この事例は、なんばエリアにも当てはまります。交通網の変化による影響を最小限に抑えるためには、都市開発と一体となった戦略が必要不可欠です。南海電鉄も同様に、なんばエリアの競争力を維持・向上させるために、商業施設や交通インフラの整備を進めています。不動産開発の専門性を高めるため、2024年10月に不動産開発を担う親会社を設立し、鉄道事業と不動産事業を分社化。さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、モビリティサービスのデジタル化や駅施設のスマート化を進めることで利便性を高めています。

南海電鉄が矢継ぎ早に、様々な施策に着手している理由は、なにわ筋線の開通を見据えた危機感の現れと言えそうです。

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