ドバイを拠点とする大手デベロッパー Binghatti Holding は2026年1月14日、ドイツの高級自動車ブランド Mercedes-Benz と共同で、世界初となる“ブランドシティ”型の大規模都市開発 「Mercedes-Benz Places | Binghatti City」 を発表しました!
この計画の特徴は、単一の高級タワーを売る不動産開発ではなく、都市そのものをブランド体験として設計する点にあります。建築、公共空間、生活動線、都市機能を一体で構想し、ブランドの思想を都市スケールへ転写するという、従来の不動産開発とは異なるアプローチが採られています。
約3時間で2,000件超のEOI!市場が即座に反応した理由
初速が示した「商品設計」への市場評価

ローンチイベントでは、マスタープランおよび建築・都市コンセプトが公開され、約3時間で2,000件を超えるEOI(購入意思表示) が記録されたと報じられています。この初速の強さは、立地や仕様といった個別要素以上に、「ブランド協業 × マスタープラン型都市」 という商品設計そのものに、投資家マネーが反応したことを示すシグナルと読み取れます。
Nad Al Sheba/Meydan「いまのドバイ」と「次の成長」をつなぐ場所
計画地は Nad Al Sheba / Meydan 周辺。ドバイ中心部へのアクセス性と、高級住宅地としての性格を併せ持つエリアです。既存の成熟エリアの延長線上にありながら、次の成長フロンティアと接続できる立地を押さえた点は、都市拡張戦略としても合理的な選択と言えます。
12棟・13,000戸超・総額AED300億規模の“都市案件”

プロジェクトは、12棟のタワー群から構成され、13,000戸超の住戸供給が計画されています。敷地規模は約1,000万平方フィート(報道により約900万平方フィート表記もあり)、開発総額(GDV)は AED300億(約80億ドル規模) とされています。
計画の核となるのが、中心塔 Vision Iconic。高さは約341mとされ、このランドマークタワーを中心に、周囲へ段階的に高さを抑えたタワーを配置することで、スカイラインに視覚的な奥行きを与える構成が語られています。
自動車の哲学を都市へ Mercedes-Benzデザインはどこまで転写されたのか
設計思想の中核に据えられているのが、メルセデス・ベンツのデザイン哲学「Sensual Purity(官能的純粋さ)」 です。外装デザインにとどまらず、公共空間、動線、ライフスタイル施設、都市体験までを一貫したデザイン言語で統合し、居住体験全体をブランド体験へと接続する設計方針が示されています。
敷地中央には、プロムナード型の公共空間 「Grand Promenade」 を配置。緑地、リテール、ウェルネス、回遊性を組み込むことで、高密度でありながら「歩いて完結する生活圏」を成立させる構成となっています。
不動産 × ブランド × 金融工学の“三位一体”構造
本開発の本質は、建築的な派手さではなく、不動産・ブランド・金融が高い精度で噛み合う構造設計にあります。
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都市は「世界初」という唯一性を都市ブランド資産として獲得
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ブランドは建設リスクを負わず、思想と信用を提供することで収益化
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デベロッパーはブランド信用を担保に販売速度と資金循環を加速
建物は主役ではなく、意味・物語・金融回収を成立させるための媒体として機能しています。
整理すべき構造的リスク条件

このプロジェクトは高度に組み上げられた設計を持つ一方、構造が洗練されているほど、前提条件が崩れた際の影響も増幅されやすいという側面を併せ持ちます。
以下は否定ではなく、専門的に押さえておくべき条件整理です。
まず挙げられるのが、希少性の劣化リスクです。価値形成が「世界初」という唯一性に依拠する以上、類似するブランドシティが増加すれば、相対的な物語価値は調整される可能性があります。
次に、転売市場への依存度。ドバイ不動産は流動性が高い反面、市況悪化時には価格調整が早く表出しやすい市場でもあります。ブランドレジデンスは価格帯が高いため、調整局面では値動きが大きくなる可能性があります。
三点目は、ブランド毀損リスクです。品質や運営がブランド期待に届かなかった場合、物件価値だけでなくブランド側にも評判リスクが波及する構造となっています。都市規模で展開する本件では、その影響範囲は限定的ではありません。
加えて、時間軸リスクも無視できません。マスタープラン型の長期開発である以上、工期、コスト、完成時体験のズレが、価値認識に影響を与える可能性があります。
最後に、マクロ環境要因。金利、為替、規制、地政学リスクといった外生変数は、物語価値を組み込んだ案件ほど投資心理に影響を与えやすい点も留意が必要です。
まとめ:不動産開発は「実体」から「物語の統合設計」へ
Mercedes-Benz Places | Binghatti City は、立地や建物仕様といった実体評価を超え、都市・ブランド・金融を一体で設計し、「語れる唯一性」を価値の中核に据えた都市開発です。
ドバイは「世界初」という称号を都市資産として組み込み、Mercedes-Benzは製造業の外側にブランド収益の回路を広げ、Binghattiはブランド信用を金融的な加速装置として活用する。三者の利害は、建築を超えたレイヤーで精緻に噛み合っています。
重要なのは、購入者が不動産だけでなく「世界初のメルセデス・ベンツ・ブランドシティの一部である」という立場を同時に取得している点です。この“語れる所有”こそが、本プロジェクトの価値形成の核と言えるでしょう。
不動産開発はもはや、「良い立地に、良い建物を建てる」段階を越え、何を語れるかを統合的に設計するフェーズへ移行しています。本件は、ドバイ市場が次のフェーズに入ったことを可視化した、極めて象徴的なプロジェクトです。
出典・参照元
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Binghatti / Mercedes-Benz 関連プレス情報(Zawya)
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Gulf News
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TradeArabia
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Retail & Leisure International
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公式・プロモーションサイト






