AI半導体の次の主戦場は「光」へ。タワーセミコンダクターが日本海側に6,000億円超を投資!日本海側にAIデータセンター向け光半導体の中核製造拠点を形成


出展:https://www.jp-tpsco.com/

AI半導体を巡る競争の焦点が、GPUの演算性能から、GPU同士を高速でつなぐ「光の回路」へと広がり始めています。

GPUの性能が向上しても、GPU間やサーバー間の通信が滞れば、AIデータセンター全体の能力は十分に引き出せません。さらに、電気信号は高速化し、伝送距離が長くなるほど、消費電力や発熱、信号劣化が大きくなります。大量のGPUを連携させる生成AIでは、データを高速かつ低消費電力で運ぶ通信技術が、新たなボトルネックになりつつあります。

こうした需要を見据え、イスラエルの半導体ファウンドリー大手、タワーセミコンダクターは2026年7月14日、日本で総事業規模6,000億円超の戦略的投資計画を発表しました。

対象は富山県魚津市と新潟県妙高市。300mmシリコンフォトニクス、シリコンゲルマニウム、先端光パッケージングの研究開発・生産能力を増強し、日本海側にAIデータセンター向け光半導体の中核製造拠点を形成します。

総事業規模は6,000億円超


項目 内容
総事業規模 6,000億円超
日本政府の支援 最大約1,600億円
タワーの投資額 政府支援を差し引いたネットベースで最大30億ドル
対象拠点 富山県魚津市、新潟県妙高市
対象技術 300mmシリコンフォトニクス、SiGe、先端光パッケージング
量産能力の確立 2027年第4四半期中
新工場の収益貢献 2029年以降
6,000億円超は、日本政府による最大約1,600億円の支援を含む総事業規模。タワーが単独で6,000億円を投資するわけではなく、同社の投資額はネットベースで最大30億ドルとされています。

GPUをつなぐ「光の回路」


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今回の計画の中心となるシリコンフォトニクス、略してSiPhoは、光を導く回路や変調器、受光素子などをシリコン基板上に集積する技術。電気信号だけに頼らず、半導体チップの近くから光で情報を送ることで、大容量通信と省電力化を両立しやすくなります。

AIシステムが巨大化するほど、GPU単体の性能だけでなく、GPU間を結ぶネットワークの帯域、遅延、消費電力がシステム全体の性能を左右します。AI半導体を巡る競争は、演算能力だけを競う段階から、演算と通信を一体で最適化する段階へ移りつつあります。

NVIDIAも、光部品をネットワークスイッチ用半導体の近くに配置する「CPO(コパッケージド・オプティクス)」の導入を進めています。

CPOは、光部品をスイッチ半導体と同じパッケージ内、または極めて近い位置に配置することで、電気信号が流れる距離を短くし、伝送損失や発熱を抑える技術です。NVIDIAは、従来の着脱式光トランシーバーと比べ、電力効率を最大5倍に改善できると説明しています。

SiPhoとSiGeを一体で供給

タワーは、シリコンフォトニクスだけでなく、シリコンゲルマニウム、略してSiGeの生産能力も増強します。

SiGeは、高速・高周波・低ノイズのアナログ回路を実現する半導体技術です。光トランシーバーでは、レーザーを駆動する回路や、受信した微弱な信号を増幅する回路などに使われます。

SiPhoが光を通す回路を担い、SiGeが光信号を送り出し、受け取り、電気信号へ変換する部分を支えます。タワーはSiPho、SiGe、先端光パッケージングを一体で手掛けることで、AIデータセンター向け光通信部品を包括的に供給できる体制を構築します。

同社は2026年2月、NVIDIAのネットワーク規格に対応した1.6Tbps級の光モジュール向けSiPho技術を発表しました。従来技術と比べ、最大2倍のデータレートを実現するとしています。

妙高と魚津で進める二段階計画


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投資計画は二段階で進められます。

第1段階では、新潟県妙高市の新井工場を300mmシリコンフォトニクスと先端光パッケージングの拠点として再活用します。同時に、富山県魚津市の既存300mm工場「Fab 7」を増強し、2027年第4四半期中に量産体制を確立します。

経済産業省の資料によると、300mmウエハー換算の生産能力は、シリコンフォトニクスが月産1万6,000枚、SiGeが月産2,000枚。供給開始はSiPhoが2027年5月、SiGeが同年9月を予定しています。

第2段階では、魚津市のFab 7隣接地に新たな300mm工場を建設します。既存工場と一体運用することで、設備や人材、品質管理体制を共有し、量産立ち上げまでの時間を短縮できるとみられます。

ただし、第2段階は関連契約の締結などが前提で、着工時期や建物規模、設備能力は現時点で公表されていません。

旧パナソニック系工場を先端拠点に転換

魚津工場と新井工場は、もともとパナソニックの半導体事業を母体とする生産拠点です。既存の建物や製造設備、人材、品質管理体制を活用できるため、更地から工場を建設する場合より早く生産能力を立ち上げられます。国内電機メーカーを支えてきた工場が、AI時代の光半導体拠点として再生されることになります。

工場の増強と新設が進めば、製造装置、材料、保守、物流、建設、人材育成など、周辺産業への波及も期待されます。一方、大規模な半導体工場には大量の電力や工業用水、専門人材が必要です。新工場の敷地面積、電力需要、用水量、雇用人数は今後の焦点となります。

AI競争はGPUだけでは決まらない

日本政府による最大約1,600億円の支援は、単なる海外企業の工場誘致ではありません。

AIデータセンターは、GPUだけでなく、高性能メモリー、ネットワーク半導体、光トランシーバー、電源半導体、冷却設備、先端パッケージングなど、多数の技術で構成されます。

GPUの製造能力を高めても、周辺の重要部品を海外に依存したままでは、AIインフラ全体の供給網は安定しません。政府が光通信用半導体を経済安全保障上の重要物資として支援するのは、AI時代の競争力が演算半導体だけでは決まらないためです。

タワーは今回の投資計画に合わせ、2028年の売上高目標を28億ドルから36億ドルへ、純利益を7億5,000万ドルから12億ドルへ引き上げました。市場も、AIデータセンター向け光半導体需要の拡大を高く評価しています。

AI半導体戦争の次の主戦場は、GPUそのものだけでなく、GPUをつなぐ光の回路へと広がりつつあります。その中核製造拠点が、富山県魚津市と新潟県妙高市を結ぶ日本海側に形成されようとしています。




出典

  • タワーセミコンダクター「日本における総事業規模6,000億円超の戦略的投資計画」
  • タワーセミコンダクター「1.6Tデータセンター光モジュール向け技術」
  • 経済産業省
  • JETRO
  • NVIDIA
  • Reuters

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