出典:札幌市
札幌市東区の札幌丘珠空港で、新ターミナルビル整備が具体化してきました。札幌市議会の総合交通政策調査特別委員会は2026年7月2日、「丘珠空港機能強化に係るパブリック・インボルブメント(PI)」とあわせて、「丘珠空港ターミナルビル基本計画(素案)」を議題として扱いました。札幌丘珠空港ビル株式会社がまとめた素案では、現ターミナルの南東側に新ターミナルを整備し、2030年度の供用開始を目指す方針が示されています。
当ブログでは、2023年8月、丘珠空港の滑走路を現在の1,500mから1,800mへ延伸し、年間旅客数100万人規模を目指す計画を紹介しました。今回の新ターミナル計画は、その続報にあたります。前回が「滑走路を延ばして空港機能を高める計画」だったのに対し、今回は増加する旅客を受け止める「ターミナル側の整備」が具体化したニュースです。
現ターミナル南東側に新ビルを建設 新旧2棟体制へ

出典:札幌市
新ターミナルビルは、現在のターミナルビルの南東側に建設される計画です。規模は地上3階建て、延床面積6,500〜7,000㎡程度、事業費は最大70億円を想定しています。工程上は、2027〜2028年度に設計・詳細仕様の検討を進め、2029年度から建設段階に入り、2030年度の供用開始を目指す流れです。
特徴的なのは、現ターミナルを解体せず、新ビルと併用する点です。現ターミナルは事務室、航空貨物、ビジネスジェット対応などに再構築し、新ターミナルは出発・到着旅客エリア、飲食・物販などを担います。新旧の建物は渡り廊下で接続し、一体的に運用する計画です。
| 項目 | 現ターミナル | 新ターミナル |
|---|---|---|
| 主な役割 | 事務室、貨物、ビジネスジェット対応など | 出発・到着旅客エリア、飲食、物販など |
| 延床面積 | 約3,620㎡ | 約6,500〜7,000㎡ |
| 整備方針 | 解体せず再構築 | 現ビル南東側に新設 |
| 接続方法 | 渡り廊下で新ビルと接続 | 既存ビルと一体運用 |
前回から何が進んだのか
前回、2023年の記事で中心だったのは、滑走路延伸による空港機能の強化でした。丘珠空港は滑走路が1,500mと短く、冬季の運航制約や就航可能機材の制限が課題とされてきました。今回の続報では、その機能強化に対応するターミナル側の具体像が示されました。新ターミナル整備は、滑走路延伸とあわせて丘珠空港の将来像を形づくる重要な要素になりそうです。
| 比較項目 | 2023年時点の記事 | 今回の続報 |
|---|---|---|
| 主題 | 滑走路1,800m化 | 新ターミナル基本計画 |
| 施設面 | 滑走路・空港機能強化 | 旅客ターミナル拡張 |
| 想定需要 | 年間旅客100万人、1日70便規模 | 需要増を受け止める施設整備 |
| 事業費 | 滑走路延伸・関連施設を含む総額250〜350億円見込み | 新ターミナル単体で最大70億円 |
| 論点 | 就航機材、防災・医療、路線拡充 | 新旧ビル活用、旅客動線、商業機能、アクセス |
なぜ新千歳空港ではなく、丘珠空港も強化するのか

出典:札幌市
ここで気になるのは、「新千歳空港があるのに、なぜ丘珠空港も強化するのか」という点です。新千歳空港は、2本の3,000m滑走路と大規模な旅客ターミナルを備えた北海道最大の空港です。国内幹線、国際線、インバウンド、物流を担う基幹空港であり、今後も北海道の空の玄関口であり続けます。
そのため、丘珠空港の強化は、新千歳空港を置き換えるものではありません。丘珠空港が目指す年間旅客100万人規模は、新千歳空港の年間2,000万人超という規模と比べると、旅客数ベースでは数%程度にとどまります。大型空港の容量対策として見れば、インパクトは限定的です。
一方で、丘珠空港には新千歳空港とは異なる強みがあります。札幌市内に近く、道内各地や地方都市へ向かう短中距離路線であれば、出発地・目的地によっては新千歳空港よりも移動時間を短縮できる可能性があります。
これは大量輸送ではなく、50〜100席程度のリージョナルジェットや小型機で成立する、規模は小さくても時間価値の高い需要です。つまり、丘珠空港の強化は「第2の新千歳空港」をつくる話ではなく、札幌都市圏の移動選択肢を増やし、新千歳空港では拾いにくい小規模・短中距離の需要を受け止める取り組みといえます。
| 観点 | 丘珠空港強化で期待される効果 |
|---|---|
| 都市機能 | 札幌市内に近い空港を活用し、移動時間の短縮につなげる |
| 航空ネットワーク | 新千歳では成立しにくい小規模・短中距離路線を拾いやすくする |
| 観光 | 札幌から道内各地への周遊ルートを増やす |
| ビジネス | 札幌市内から地方都市への日帰り・短時間移動をしやすくする |
| 医療・防災 | 既存の医療・防災拠点機能を高める |
| 空港運営 | 新千歳と丘珠を役割分担させ、北海道全体の航空ネットワークを厚くする |
それでも、札幌都市圏の使い勝手を高める都市インフラとして、丘珠空港の役割には一定の意味があります。幹線輸送の主役は新千歳空港ですが、丘珠空港は札幌市内に近い空港として、より細かな移動需要を支える存在になり得ます。
2030年度供用開始に向けたタイムテーブル
新ターミナル計画は、滑走路1,800m化と歩調を合わせながら進められます。現時点では、基本計画やPI活動を継続したうえで、設計・詳細仕様の検討、建設工事を経て、2030年度の供用開始を目指す流れです。| 時期 | 主な内容 |
|---|---|
| 2023年8月 | Re-urbanizationで、丘珠空港の滑走路1,800m化・年間旅客100万人規模を目指す計画を紹介 |
| 2026年7月2日 | 札幌市議会の総合交通政策調査特別委員会で「丘珠空港ターミナルビル基本計画(素案)」が示される |
| 2026〜2027年度 | 基本計画の検討、PI活動の継続 |
| 2027〜2028年度 | 新ターミナルの設計、詳細仕様の検討 |
| 2029年度 | 新ターミナルビル建設に着手する想定 |
| 2029〜2030年度 | 新ターミナルビル建設工事 |
| 2030年度 | 新ターミナルビル供用開始予定。滑走路延長は2030年を目標・想定 |
スマート化・防災拠点化も視野に
新ターミナル計画では、自動チェックイン機、自動手荷物預け機などを導入し、省人化とスムーズな旅客処理を進める方針です。また、避難者向けの滞留スペース、備蓄品、電源設備を確保し、隣接する丘珠駐屯地とも連動する防災拠点機能を担う計画も盛り込まれています。ZEB化や自然エネルギー活用も想定されており、旅客施設にとどまらない地域インフラとしての役割も意識されています。
課題はアクセス 冬季の都心直結性が焦点に

出典:札幌市
丘珠空港は札幌都心に近い一方で、鉄道駅直結ではありません。現在は地下鉄東豊線・栄町駅からバスやタクシーで接続する形で、札幌駅前からも空港連絡バスが運行されています。ただし、札幌丘珠空港の公式アクセス案内では、札幌駅前発着便について、12月1日から3月31日までの冬期間は運行しないとされています。丘珠空港の都心近接性を年間を通じて生かすには、冬季アクセスの安定性が大切なポイントになります。
今後、旅客数の拡大を見込むなら、栄町駅との接続強化、バス本数、冬季の運行体制、荷物を持った利用者の移動負担をどう軽くするかが注目されます。SNS上でも、地下鉄延伸や空港直結アクセスを求める反応が見られますが、当面は現実的なラストワンマイル改善が焦点になりそうです。
丘珠空港の新ターミナル計画は、新千歳空港に代わる巨大プロジェクトではなく、札幌都市圏の移動選択肢を増やすための実務的な空港機能強化です。滑走路延伸で広がる運航の可能性を、ターミナル整備とアクセス改善でどこまで生かせるか。今後の具体化が注目されます。
出典
・札幌市議会「総合交通政策調査特別委員会」・札幌丘珠空港ビル株式会社「札幌丘珠空港ターミナルビル基本計画[素案]」
・札幌市「丘珠空港の将来像」
・札幌丘珠空港公式サイト「アクセス」
・建設通信新聞「札幌丘珠空港ターミナルビル基本計画」関連記事
・HBC北海道放送、UHB北海道文化放送の関連報道
・Re-urbanization「札幌丘珠空港の滑走路を1800mに延伸!」
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