和倉温泉「加賀屋」再建計画が再び大幅変更!7階建て・33室、全室オーシャンビュー+半露天風呂へ 233室の巨大旅館から“少室数・高付加価値化”が鮮明に



2024年の能登半島地震で被災し、休業が続く石川県七尾市・和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」。2026年8月25日に新館建設予定地で地鎮祭が行われ、地上7階建て・33室、全室オーシャンビュー+半露天風呂付きという最新計画が明らかになりました。営業再開は2028年度末を目指します。

今回の計画で注目すべきなのは、建物の規模以上に客室数の変化です。

震災前の加賀屋は233室を擁する国内有数の大型温泉旅館でした。しかし再建計画は、当初の約50室から約40室、そして最新案では33室へと段階的に縮小しています。

これは単なる規模縮小ではなく、宿泊人数を追う大型旅館から、限られた客室に料理・接客・温泉・景観を集中させる旅館へ転換する方向性が一段と鮮明になったと見ることができます。

新「加賀屋」は7階建て・33室

新館は、加賀屋グループの高級旅館「加賀屋別邸 松乃碧」を解体した跡地と隣接地に建設されます。
項目 最新計画
建設地 加賀屋別邸 松乃碧跡地+隣接地
敷地面積 約9,630㎡
建物 地上7階建て
客室数 33室
客室 全室オーシャンビュー
客室風呂 全室半露天風呂付き
食事 客室での提供を計画
設計 隈研吾建築都市設計事務所
施工 トーケン
営業再開 2028年度末を目標
33室すべてを七尾湾側に配置し、各客室には半露天風呂を設置します。客室で食事を楽しめる構成も計画されており、宿泊者一組当たりの滞在価値を高める仕様となります。

設計を担当する隈研吾氏は、能登の文化や職人の技術を建築へ取り込み、旧加賀屋の美術品だけでなく、建築の一部も新館へ継承する考えを示しています。

約50室→約40室→33室、計画は二度縮小


初期計画の完成予想図

加賀屋の再建計画は、この約2年間で大きく変化してきました。
2024年12月案 2025年8月案 2026年8月最新案
客室数 約50室 約40室 33室
建物 5階建て+離れ 詳細未公表 7階建て
建設地 旧加賀屋から西約550m 松乃碧跡地へ変更 同左
再開時期 2026年度冬 2027年度末 2028年度末
2024年12月の当初案では、旧加賀屋から西へ約550m離れた約3万㎡の所有地に、約50室の新旅館を建設する計画でした。

しかし2025年8月、加賀屋は建設地を温泉街中心部に近い松乃碧跡地と隣接地へ変更。加賀屋と松乃碧を集約し、客室数を約40室へ縮小するとともに、営業再開を2027年度末へ延期しました。

そして2026年8月の最新計画では、さらに33室まで絞り込まれ、再開目標も2028年度末へ変更されました。

計画が具体化するほど、少室数化が進んでいることが分かります。

233室から33室へ、客室数は約86%減



震災前の加賀屋は、複数棟からなる総客室数233室の巨大旅館でした。

新館33室はその約14%にすぎず、客室数は約86%減となります。

数字だけを見れば大幅な縮小ですが、加賀屋側は、客室数を絞ることで、より充実した食事やおもてなしを提供できるという考えを示しています。

2025年には、従来の団体客中心のビジネスから個人客へターゲットを移し、旧加賀屋の中でも上位カテゴリーだった「浜離宮」や「特選階」をイメージした旅館を目指す考えも報じられました。

つまり新館は、233室をそのまま再現するのではなく、旧加賀屋の上質な客室・サービスを33室へ濃縮する方向へ進んでいると考えられます。

「33室」は松乃碧の31室に近い

もう一つ興味深いのが、新館の客室数です。

建設地となる「加賀屋別邸 松乃碧」は、震災前、全31室の小規模高級旅館として営業していました。

新しい加賀屋は33室。巨大旅館だった旧加賀屋233室より、むしろ松乃碧31室に極めて近い規模です。

松乃碧では、31室という小規模性を生かし、スタッフがフロント業務から食事提供まで幅広く担当する運営が行われていました。

加賀屋は2025年の再建計画変更時に、**「加賀屋と松乃碧を集約する」**方針を公式に示しています。

したがって新館は、旧加賀屋のブランド力と「おもてなし」を核としつつ、松乃碧に近い少室数・高サービス密度の運営思想を組み合わせる再編と見ることもできます。

これは加賀屋が公式に定義したものではありませんが、233室→33室という規模変化を理解するうえで重要なポイントです。

団体旅行の大型旅館から、個人旅行の高付加価値旅館へ



加賀屋の変化は、同社だけの事情ではありません。

国内旅行市場では、団体旅行から個人旅行への移行が進み、宿泊客が求める価値も「大宴会場を備えた大型旅館」から、プライベート性の高い客室、食事、温泉、地域文化を組み合わせた滞在体験へ変化しています。

一方、旅館業界では深刻な人手不足が続いています。

233室規模の旅館を従来と同じサービス水準で再建するには、大量の従業員確保も必要になります。客室数を33室まで絞れば、人材を一組一組の宿泊客へ集中させやすくなります。

加賀屋が説明する「より充実した食事とおもてなし」は、こうした市場環境にも対応した再建戦略と考えられます。

旧加賀屋は解体、新館とは別に巨大跡地が残る



一方、震災前の加賀屋を構成していた旧館4棟は、営業再開を断念して解体が進められています。

跡地利用については現時点で具体化しておらず、今後検討するとされています。

新館は松乃碧跡地に建設されるため、新加賀屋の建設と旧加賀屋跡地の再生は別のプロジェクトとして進むことになります。

和倉温泉の中心部に残る大規模な旧加賀屋跡地を将来どう活用するのかは、新館完成後を見据えた次の重要テーマになりそうです。

「元に戻す」のではなく、新しい加賀屋をつくる

今回の再建計画を象徴しているのは、旧加賀屋233室を再現しないことです。

約50室から約40室、そして33室へ。

客室数が減るたびに、新しい加賀屋の方向性はむしろ明確になっています。

七尾湾を望む33室すべてに半露天風呂を設け、食事、建築、伝統工芸、温泉、人的サービスを少数の宿泊者へ集中させる。

「規模で圧倒する加賀屋」から、「一室当たりの密度で勝負する加賀屋」へ。

能登半島地震からの再建は、単なる復旧ではなく、120年にわたり続いてきた加賀屋の宿泊モデルを時代に合わせて組み替えるプロジェクトになりつつあります。

2028年度末の営業再開は、和倉温泉復興の大きな節目になると同時に、日本を代表する大型温泉旅館が震災を契機にどのような姿へ生まれ変わるのかを示す、象徴的な事例となりそうです。




出典

  • 加賀屋「休業中の加賀屋グループ 営業再開時期について」2025年8月1日
  • 石川テレビ/FNNプライムオンライン「和倉温泉の老舗旅館『加賀屋』7階建て新館建設へ」2026年8月25日
  • MRO北陸放送/TBS NEWS DIG「加賀屋グループが和倉温泉に新旅館建設へ地鎮祭」2026年8月25日
  • 共同通信「加賀屋、28年度末に再開へ」2026年8月25日
  • トーケン「加賀屋新館プロジェクト 地鎮祭」2026年8月25日
  • 旅行新聞「加賀屋、26年度冬に新旅館開業へ」2024年12月
  • 加賀屋公式「客室」
  • 加賀屋別邸 松乃碧公式「館内」
  • 加賀屋採用情報「松乃碧」

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