大阪インバウンドは本当に失速したのか?8月9.6%減の裏で「中国以外」は26.7%増、1〜8月も20%増 公式統計で見える中国急減と市場分散



大阪観光局が公表した2026年8月の来阪訪日外客数は、132.1万人、前年同月比9.6%減でした。1〜8月累計も1,097.1万人、同6.9%減と、総数では前年を下回っています。

ただし、国・地域別に分けると、動きは一様ではありません。中国は8月に59.0%減、1〜8月累計では61.5%減。一方、公表値から中国を差し引くと、中国以外は8月に26.7%増、1〜8月累計でも20.0%増となります。

現在の大阪で起きているのは、インバウンド需要が一斉に縮小しているというより、中国市場の急減が総数を押し下げる一方、他市場では増加が広がるという市場構成の変化です。

8月は14万人減、その中身は「中国▲36.5万人、中国以外+22.5万人」


来阪訪日外客数 2025年8月 2026年8月 増減 前年比
全体 146.1万人 132.1万人 ▲14.0万人 ▲9.6%
中国 61.9万人 25.4万人 ▲36.5万人 ▲59.0%
中国以外※ 84.2万人 106.7万人 +22.5万人 +26.7%

※「中国以外」は大阪観光局公表値から独自計算。台湾・香港は原表で中国とは別に集計されています。

8月の来阪客数を、中国とそれ以外に分けると構造が分かりやすくなります。全体では14万人減りましたが、中国だけでは36.5万人減っています。その一方、中国以外は22.5万人増えました。

つまり、

中国 ▲36.5万人 + 中国以外 +22.5万人 = 全体 ▲14.0万人

という関係です。

原表でも、韓国は17.1万人から22.0万人、台湾は14.7万人から15.7万人、香港は6.5万人から7.1万人へ増えています。 「大阪の外国人客が約1割減った」という数字はその通りですが、その背景には中国の大幅減と、他市場の増加が同時に存在しています。

1〜8月で見るとさらに鮮明、中国以外は157.8万人増



この傾向は8月だけではありません。1〜8月累計では、市場の違いがよりはっきり表れています。
来阪訪日外客数 2025年1〜8月 2026年1〜8月 増減 前年比
全体 1,178.9万人 1,097.1万人 ▲81.8万人 ▲6.9%
中国 389.7万人 150.1万人 ▲239.6万人 ▲61.5%
中国以外※ 789.2万人 947.0万人 +157.8万人 +20.0%
中国は8カ月間で239.6万人減。一方、中国以外は157.8万人増となりました。中国の減少分の約3分の2を、他市場の増加が補った計算です。それでも全体が6.9%減となったのは、中国の落ち込みが他市場の増加を上回ったためです。

中国以外19市場中17市場が前年超え、韓国210万人・台湾126万人・米国104万人

中国以外の増加は、一部の国・地域に限られていません。大阪への来訪推計を1〜8月累計で見ると、個別掲載された中国以外の19市場のうち、17市場が前年同期を上回りました。 前年割れはベトナムとオーストラリアの2市場です。
国・地域〈大阪・1〜8月〉 2025年 2026年 前年同期比
韓国 175.3万人 210.3万人 +20.0%
台湾 107.1万人 126.5万人 +18.1%
香港 47.0万人 51.5万人 +9.6%
タイ 23.6万人 24.2万人 +2.7%
シンガポール 14.2万人 15.2万人 +7.0%
マレーシア 15.6万人 18.4万人 +17.8%
インドネシア 20.1万人 21.9万人 +9.0%
フィリピン 20.1万人 20.3万人 +0.7%
ベトナム 25.0万人 24.4万人 ▲2.1%
インド 11.0万人 13.3万人 +20.9%
イギリス 18.3万人 19.6万人 +7.3%
フランス 18.9万人 20.5万人 +8.6%
ドイツ 15.4万人 16.1万人 +4.6%
イタリア 13.1万人 14.0万人 +6.8%
スペイン 11.3万人 13.0万人 +15.2%
ロシア 7.9万人 8.9万人 +12.1%
アメリカ 97.3万人 103.9万人 +6.8%
カナダ 22.8万人 23.7万人 +4.2%
オーストラリア 39.0万人 37.5万人 ▲3.9%

出典:大阪観光局「訪日外客数推計」の大阪・1〜8月累計欄。日本全体ではなく、大阪への来訪推計

実人数でも、韓国は175.3万人→210.3万人、台湾は107.1万人→126.5万人、アメリカは97.3万人→103.9万人と増えています。東アジアだけでなく、東南アジア、欧州、北米へと増加市場が広がっている点が特徴です。

なお、「中国以外+20.0%」には大きく増えた「その他」も含まれますが、中国と「その他」の双方を除いて計算しても、8月は約9.8%増、1〜8月累計は約11.4%増となります。中国以外の伸びが「その他」だけで生じているわけではありません。

万博開催中の前年と比べても増加、ただし数字は暫定推計



比較対象となる2025年8月は、大阪・関西万博の開催期間中でした。万博は2025年4月13日から10月13日まで開催されています。その2025年8月と比べても、中国以外は26.7%増。1〜8月累計でも20.0%増となっています。

一方、今回の数字には重要な注意点があります。大阪観光局は2026年4〜8月について、前年の大阪訪問率を使って来阪客数を試算しています。2026年の都道府県別訪問率がまだ公表されていないためです。

そのため、「大阪が8月に9.6%減った」という数字は、今年の外国人旅行者が大阪を選ぶ割合そのものが9.6%低下したことを意味するものではありません。同様に、中国以外の26.7%増も、今年の大阪訪問率を反映した確定値ではありません。

現段階では、万博開催年と比べても多くの市場が増える推計になっているところまでが確認できる内容です。

「約1割減」という見出しだけでは、印象はかなり変わる



今回の統計について、MBSは「大阪の観光『非常に厳しい』」「8月の外国人観光客が前年同月比約10%減少」と速報しました。9.6%減という数字自体は、大阪観光局の公表値と一致しています。また本文では、韓国や台湾など複数市場の増加についても紹介しています。

ただ、見出しだけを見る場合と、元データ全体を見る場合では印象がかなり変わります。
2026年8月 前年比
来阪外国人全体 ▲9.6%
中国 ▲59.0%
中国以外 +26.7%
全体は減っています。しかし、その主因は中国市場の急減です。その一方、中国以外では多くの市場が前年を上回っています。

一部報道の見出しからは「大阪インバウンド全体の失速」という印象を受けやすいものの、市場別に見ると、中国の急減と他市場の拡大が同時に進んでいることが分かります。

大阪インバウンドは「全面失速」より、市場構成が変わる局面へ



今回の数字をまとめると、ポイントはシンプルです。
区分 8月 1〜8月累計
全体 ▲9.6% ▲6.9%
中国 ▲59.0% ▲61.5%
中国以外 +26.7% +20.0%

大阪のインバウンド総数が前年を下回っていることは事実です。ただ、その内訳を見ると、中国市場が大きく縮小する一方、韓国、台湾、アメリカ、東南アジア、欧州など多くの市場が伸びています。

今回の公表推計から見えるのは、「外国人が大阪から一斉に離れている」という姿ではなく、中国の比重が急低下し、来阪客の市場構成がより多国籍な方向へ変化している姿です。もちろん、中国客の大幅減少はホテル、小売、飲食などへの影響も考えられます。また、4〜8月は前年訪問率を使った暫定推計です。

今後、2026年の大阪訪問率や外国人宿泊者数、旅行消費額がそろえば、万博後の大阪インバウンドがどこへ向かっているのか、さらに輪郭が見えてきそうです。




出典

  • 大阪観光局「訪日外客数推計」2026年9月公表。JNTO「訪日外客統計」、観光庁「インバウンド消費動向調査(都道府県別訪問率)」を基に算出。 01_gaikyo0930
  • MBSニュース「大阪の観光『非常に厳しい』 8月の外国人観光客が前年同月比約10%減少 中国からの観光客は約59%減」2026年9月30日。TBS News Dig
  • 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会「大阪・関西万博 開催概要」。大阪万博2025
 

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