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TSMC熊本工場 JASM(tsmc Fab23)熊本県菊陽町の約21.3haの敷地に約1.1兆円投資、経済効果は約4.29兆円、鹿島建設が施工、建設工事の最新状況 23.04 【2024年12月出荷開始】



半導体受託生産の世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)は、ソニーグループとデンソーと共同で、熊本県菊陽町で国内初となる新工場の建設を進めています。

TSMC熊本工場(JASM)は、熊本県菊陽町の工業団地「セミコンテクノパーク」に近接する約21.3haの敷地に建設中の日本最大級の半導体工場です。ソニーの半導体製造子会社であるソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(SSS)の熊本TECに隣接しています。

新工場は、TSMCが過半数を出資する子会社で、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)とデンソーが少数株主として参画する、『Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(JASM)』が手掛けています。

スマートフォンや車載向けなどで需要が大きい、ロジック半導体(22/28nmと12/16nmプロセス)を、12インチウエハ換算で月産5.5万枚を生産する計画で、初回出荷は2024年12月を予定してます。

 

 



工場の規模は、建築面積約21.3ha、建築面積:72,208㎡、延床面積は不明ですが、FAB棟やオフィス棟など4棟のほか、ガスヤード、駐車場を設ける計画で、総従業員数は1,700 名です。工場への投資規模は86億ドル(約1兆1000億円)を見込んでおり、日本政府は経済安全保障の観点からその半分にあたる最大4,760億円を補助します。

ロジック半導体とは?


”半導体”は、その名前が示すように電気を通しやすい”導体”と電気を通さない”絶縁体”の両方の特性を持った物質です。電気を一方向だけ通す”整流”、電気信号を大きくする”増幅”、電気を通したり止めたりする”スイッチング”などを行うことができます。

半導体にはいつくかの種類がありますが、TSMC熊本工場で生産されるのは『ロジック半導体』です。ロジック半導体は、スマートフォンや自動運転車などの「頭脳」を担うもので付加価値が高く、2021年の世界市場規模は1548億ドル(約21兆円)と半導体全体の3割弱を占めるとされています。TSMC熊本工場では、ソニーのイメージセンサーの裏に搭載されている「ロジック処理用LSI」や、エンジン制御や自動運転などに使われる「車載用LSI」などとみられます。

経済安保で鉄、石油に次ぐ「第3の戦略物資」となった半導体



半導体は、電子機器を製造する時に欠かす事はできない、現代の産業において重要な役割を担っていることから「産業の米」と言われるほど重要な物資となっています。スマートフォンやパソコン、 IoT機器、クルマの自動運転や電動化など、多くの製品のデジタル化が進むにつれ、半導体の需要は伸び続けています。

また、戦車や戦闘機、ミサイルなどの防衛装備品には多くの半導体が使われており、最新兵器には人工知能(AI)をはじめとする先端技術が取り入れられており、これらの技術を可能にしているのも先端半導体です。

サプライチェーンはグローバルに広がっていることから、多くの脆弱性を抱えています。コロナ禍では半導体不足が世界的な問題となり、自動車や電子機器の生産が停止するなど、多くの事業影響が出る事態となりました。この事から半導体は、経済安全保障にも直結する死活的に重要な「戦略物資」となっており、その安定確保が喫緊の課題となっています。

 

TSMCが熊本に進出した理由は「アップル」と「水」!?



日本政府は半導体を国内で安定的に調達できるようにするため、日本での投資を促す法整備に動き、TSMCは熊本県菊陽町への進出を決めました。中国、米国に次ぐ3カ国目の海外工場となります。

半導体生産には材料メーカーや製造装置の開発・管理企業が必要で、TSMC単体では半導体の生産を行えません。

半導体関連企業が集積している九州は「シリコンアイランド」と呼ばれています。

また、TSMCの最大顧客はアップルです。ソニーはアップルのiPhoneに搭載するカメラ向けの画像センサーを供給しており、熊本工場は主要生産拠点です。ソニーはTSMC熊本工場から画像センサー向けに演算用のロジック半導体の供給を受ける予定です。さらにイメージ繊細製造装置大手の東京エレクトロンの工場はTSMCの新工場の近接地にあります。その他にも、半導体関連企業が多数集積しています。

九州には多くの半導体関連企業がある事や、TSMCの最大顧客である「アップル」の主要サプライヤーである「ソニー」が隣接している事、半導体に欠かせない水資源が豊富である事、日本政府からの多額の補助金によるインセンティブなどが、熊本進出の直接的な理由として挙げられます。

 

熊本進出のもう一つの理由は「地政学的リスク」



TSMCは、米国、日本、欧州に大規模な生産拠点整備を計画しています。世界で半導体需要が増加している中、需要が地域高いでの生産能力を向上させ、顧客との接近性を高め、よりスピーディーなサービスを提供する為です。

また、アメリカは、中国企業が米国製の高度な半導体技術を入手することに懸念を抱いており、中国がこの技術を軍事目的に使用することを防ぐため、半導体技術を輸出規制の対象としました。

TSMCは、台湾に本社を置く企業ですが、台湾と中国との関係が緊張しており、地政学的なリスクが高まっています。そのため、米国、日本、欧州に工場を建設することで、地政学的なリスクを分散させる目論見があります。TSMCが熊本に進出した理由には、これらの地政学的なリスクが強く関係しています

【出展元】
https://www.asahi.com/articles/ASR2Q6S64R10TLZU001.html
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC173DS0X11C22A0000000/
https://job.rikunabi.com/2025/company/r187972046/
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20220301-OYTNT50005/
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/0001/05.pdf
https://kumanichi.com/articles/911251

計画概要

名称:(仮称)TSMC熊本工場 JASM(tsmc Fab23)
敷地面積:約21.3ha
建築面積:72,208㎡
延床面積:不明
従業員数:1,700 名
総投資額:86億ドル(約1兆1000億円)
建築主:Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(JASM)
施工者:鹿島建設
着工:2022年04月
竣工:2023年09月(10月頃から機器搬入開始)
稼働:2024年12月出荷開始

 

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2023年4月の様子


現地の様子です。ANAのキャンペーンを活用し往復6000マイルで日帰り取材を敢行しました!!

 

 


南西側から見た様子です。敷地が21.3haもあるので、端から端まで歩くのも一苦労でした。

 

 


南東側から見た「FAB棟」の様子です。

 

 


南側から見た様子です。写真左が「FAB棟」、右が「オフィス棟」です。

 


「FAB棟」

 


「オフィス棟」

 

 


「オフィス棟」を近くで見た様子です。

 


撮影ポイントを変えて、北西側から見た様子です。

 


小高いの上に建屋があるので、一段と大きく見えます。

 


さらに撮影ポイントを変えて、北西側から見た様子です。距離をとった方が工場の大きさが実感出来ます。

 


北側から見た様子です。

 


最後はメチャクチャ離れて南西側から見た様子です。手前の住宅との遠近感が、おかしくなる程で圧巻の眺めでした!

 

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