三菱電機は、SiCパワー半導体の生産体制強化に向けた新工場棟の建設をはじめ、パワーデバイス事業における2021年度から2025年度までの累計設備投資を従来計画から倍増させ、約2,600億円を投資すると発表しました!
同社は、世界初となるSiCパワーモジュールのエアコンや高速鉄道車両への提供など、家電、産業機器、鉄道車両分野でSiCパワーモジュールの市場をリードしながら、長年に亘ってスクリーニング技術などの高性能・高信頼性の作り込み技術を蓄積してきました。
近年、脱炭素社会の実現に向けた世界的な省エネ志向が高まっており、特にSiCパワー半導体は、電気自動車向け需要の拡大に伴い急速な市場拡大が見込まれるとともに、低損失・高温度動作・高速スイッチング動作等が求められる様々な応用分野において更なる市場の広がりが見込まれ、GX(Green Transformation)実現への貢献が期待されています。
【出展元】→三菱電機 SiCパワー半導体の生産体制強化に向け新工場棟を建設
三菱電機は、この市場拡大に対応するため、SiCウエハについて約1,000億円を投資して新工場棟の建設と設備増強を実施します。新工場棟は、熊本県泗水地区に有する拠点を活用し、大口径化(8インチ)に対応するとともに、最先端の省エネ性能を有するクリーンルームを導入し、徹底した自動化によって高い生産効率を実現します。また、市場の旺盛な需要に対応するため6インチウエハ製品の生産設備も増強し、さらなる事業拡大を目指します。
この他、約100億円を投資してパワー半導体の後工程の新工場棟を福岡地区に建設し、同地区内に点在する組み立て・検査工程を集約します。設計・開発から生産技術検証までを一貫して行う体制を構築して製品開発力を向上し、市場ニーズに合わせた製品のタイムリーな量産化を実現させる方針です。
パワー半導体とは?
”半導体”は、その名前が示すように電気を通しやすい”導体”と電気を通さない”絶縁体”の両方の特性を持った物質です。電気を一方向だけ通す”整流”、電気信号を大きくする”増幅”、電気を通したり止めたりする”スイッチング”などを行うことができます。
半導体といえば、マイコン(CPU)やメモリなどのLSIがよく知られていますが、これらは「演算」や「記憶」などの働きをする半導体です。
これに対しパワー半導体は、主に電圧、周波数を変えたり、直流を交流、交流を直流に変えるなどの電力変換に使われます。 モーターを低速から高速まで精度良く回したり、太陽電池で発電した電気を無駄なく送電網に送ったり、様々な家電製品、電気器具に安定した電源を供給する場面でパワー半導体は欠かすことのできない主役として活躍しています。近年、省エネ化・省電力化への意識が高まり電気の無駄を極力少なくできるパワー半導体の需要がより高まっています。
計画概要
名称:SiC 8 インチウエハ新工場棟
所在地:熊本県菊池市泗水町住吉 1576-1
生産品目 : SiC パワー半導体製品
担当する生産工程 : ウエハプロセス工程(前工程)
稼働開始 : 2026年4月予定
2023年4月の様子
現地の様子です。取材時点では特に動きは見られませんでした。
パワー半導体の売上上位10社のうち日本企業は三菱電機、東芝、富士電機、ルネサスですがシェアトップのドイツ、インフィニオンが1社で25%を占めるのに対し、日本勢は4社足しても20%しかありません。しかもインフィニオンがいち早くウエハーの大型化により生産開始したのに対し日本勢は出遅れました。今のままではシェアの差が開く一方なので国も巨額の補助金付けて巻き返しを図っています。ただ国としてはパワー半導体分野は4社を再編統合したいらしく補助金にも条件を付けていますが三菱はあくまでも自社で取り組みたいのか受給しないかもしれません。
東芝がTOBにより非上場化されますがその出資企業に京都のロームが入っています。EVにも使われるSiCパワー半導体ではロームが日本企業でトップです。出資の狙いも東芝の半導体事業を取り込むことでしょう。かつての東芝は世界トップクラスの半導体メーカーでロームは売上も規模も小さい企業でしたが今や立場は逆転しつつありますね。関西企業の躍進に期待したいです。