関西エアポート株式会社は、2024年度(2024年4月〜2025年3月)の決算で営業収益2,454億円を計上し、過去最高を更新しました。国際線旅客の急回復と、第1ターミナルの商業リニューアルによる非航空収益の拡大が業績を大きく押し上げました。
国際線の復調で航空収益が急回復
出展:関西エアポート
2024年度の連結決算では、営業利益646億円(前年比+90%)、経常利益540億円(+132%)、当期純利益368億円(+138%)と、大幅な増益となりました。最も大きな要因は、関西国際空港を中心とする国際線旅客需要の回復です。
出展:関西エアポート
関西3空港(関空・伊丹・神戸)をあわせた航空旅客数は5,086万人と、前年度から15%増加。中でも関空の国際線は、発着回数151,275回、旅客数2,508万人を記録し、いずれも年間で過去最多となりました。外国人旅客は1,983万人にのぼり、訪日需要の回復が数字に表れています。国内線も安定しており、伊丹と神戸を中心に2,578万人が利用。神戸空港では、旅客数が初めて年間360万人を突破しました。
T1リニューアルが商業収益を押し上げ、非航空系事業も過去最高に
出展:関西エアポート
非航空系の事業収益も、前年を大きく上回る1,471億円を計上しました。2019年度(コロナ前)実績を超え、過去最高を更新した形です。
収益拡大の鍵となったのが、関空第1ターミナルの大規模リノベーションです。2023年12月にグランドオープンした新商業エリアは、免税店・物販・飲食の直営・テナント両面で構成されており、2024年度からはほぼ通年で稼働。動線と購買行動を一体化した空間設計により、旅客1人あたりの購買単価も向上しました。
さらに、円安の影響や高まるインバウンド需要も追い風となり、空港内の消費活動が活発化。関西エアポートは「直営・テナントともに売上は好調に推移」としており、空港が“交通インフラ”から“商業都市機能”へと進化していることを物語っています。
国際貨物は高付加価値物流へ移行、Eコマースも堅調
国際貨物についても堅調に推移しています。2024年度の関空における総取扱量は11,795千トン、貿易額は20,488億円でいずれも前年比増。特に欧州・北米向けの高付加価値貨物(医薬品、半導体、自動車部品など)が需要を支えました。
また、越境EC需要の高まりにより、中国から日本へのEコマース物流も好調を維持しています。コロナ禍以降、航空貨物は量より質へとシフトしており、関空が担う国際物流ハブとしての役割も強まっています。
万博・地域連携を通じた空港の“地域起点化”
2025年の大阪・関西万博に向けた取り組みも進行中です。空港内では、特設カウンターや装飾、SNS発信を通じて機運醸成を展開。伊丹空港では特別塗装機の展示イベント、神戸空港ではUSJと結ぶ直行バスの運行開始や体験型イベントが実施され、空港が地域社会と一体で動いています。
これらの施策は、空港が単なる“出入り口”ではなく、地域や観光と直結する“都市の起点”であることを示しており、関西エアポートが目指す方向性と一致しています。
空港は“交通拠点”から“都市機能の核”へ
今回の決算は、空港が単に旅客や貨物を運ぶだけの施設ではなく、商業・観光・都市政策の中核として機能しはじめていることを示唆しています。特に、T1リニューアルによって創出された「新しい空間価値」は、空港というインフラが都市の成長戦略とリンクできる可能性を実証するものでした。
万博を契機とした関西3空港の進化はまだ序章にすぎません。空港が“経済”と“都市”の双方向をつなぐトリガーとなる時代に、関西エアポートはその中心に立ちつつあります。
出典:
関西エアポート株式会社「2024年度 期末連結決算」プレスリリース(2025年6月17日公表)
https://www.kansai-airports.co.jp/