出典:札幌市
札幌市は、札幌丘珠空港の滑走路を現在の「1500m」から300m延伸し「1800m」にする延伸計画を進めています。丘珠空港は、札幌市の都心部から約6kmに位置する陸上自衛隊との共用空港で、函館や釧路、女満別のほか、三沢や松本、静岡、名古屋(小牧)など道内外に9路線の定期便が就航しています。しかし、滑走路の長さが1500mと短いことや施設規模が小さいことなどから、十分に利活用されているとは言えない状況です。そのため札幌市では、丘珠空港の活用策を検討するための委員会を設置し、滑走路延伸の必要性や方法を議論してきました。
市は、2023年7月31日の市議会総合交通政策調査特別委員会で、丘珠空港の滑走路延伸時期について、2030年を目標とすることを明らかにしました。同市はこれまで滑走路の延伸時期を2032年頃としてきましたが、北海道新幹線の札幌延伸開業と同じタイミングで丘珠空港の滑走路延伸を実現させる構想が動き出しました。
滑走路を延伸する目的は?
出典:札幌市
滑走路が1800mに延伸されると、冬季は離着陸できなかった、DHC8-Q400のような高性能ターボプロップ機やERJ-170/175のような70席クラスのリージョナルジェット機が通年就航可能になります。これにより、道内路線や東北地方へのアクセスが向上し、地域経済や観光振興に寄与すると期待されます。また、医療・防災機能も強化されます。丘珠空港は高度医療が必要な道内各地の患者を医療用のジェット機で札幌の病院に運ぶ北海道の「メディカルウィング」事業の拠点にもなっていますが、冬場は医療ジェットが運航できない状況となっています。現在、冬の間は新千歳空港を経由して陸路で札幌の病院まで運んでいますが、滑走路の延伸により冬場の搬送がスピードアップが期待されます。
ただし、延伸後の1800mの滑走路ではベストセラー機として知られるB737型機やA320型機といった小型ジェット機は通年運航できません。さらなる本格活用には2000m以上の滑走路が必要になりますが、これは将来の課題として残ります。
年間旅客数100万人目標、整備費は250〜350億円見込み
出典:札幌市
札幌市は将来、滑走路延伸に加えてターミナル機能の強化や路線を拡充することで、道内各地に6路線程度、全国各地に10路線程度の通年就航を想定し、1日30便前後から70便程度、年間利用客数を27万人程度から100万人に増やす目標を掲げています。丘珠空港は国土交通省と防衛省が管理しており延伸は国の事業となります。 滑走路の延伸や駐機場の増設など直接の事業費として150〜200億円、このうち札幌市と道の負担額は23〜30億円と試算されています。 このほか、延伸に伴うターミナルビルの拡張やボーディングブリッジの整備など空港施設の整備事業費として100〜150億円がかかる見通しで、総額は250〜350億円が見込まれています。札幌市の試算では丘珠空港に道外路線1便が通年で1往復すると、年間約10億円の観光による経済効果が見込めるとしています。
潜在的なニーズは高いが費用対効果が見込めるか?
出典:札幌市
丘珠空港は札幌都心部から近く潜在的なニーズは高いと考えられますが、道外地域への路線開設、札幌都心部とのアクセス改善、空港運用時間の1時間程度の拡大、などが課題になります。また新千歳空港との棲み分けをどうするのか?など。北海道全体の空港戦略を見据えた上で考える必要がありそうです。