近畿大学『おおさかメディカルキャンパス』 近大医学部と近大病院が大阪狭山市から堺市・泉ケ丘へ移転!現地取材から読み解く新拠点の施設概要と計画意図


2025年11月1日、近畿大学医学部および大学病院は、大阪狭山市から堺市南区・泉ケ丘へ移転し、新拠点「おおさかメディカルキャンパス」として運用を開始しました。総事業費978億円、敷地約115,837㎡、延床約143,956㎡、800床(35診療科)という大規模整備です。

南海泉北線泉ケ丘駅から徒歩約6分。屋根付きペデストリアンデッキで主要動線が直結し、駅前の歩行者ネットワークと緑道を引き込む計画が採られています。単なる大学病院の機能更新にとどまらず、駅前動線と一体化したキャンパス形成として注目される理由です。

本記事では、2026年1月の現地取材で確認した印象を踏まえ、

①施設・医療機能の整理
②「ひとつながり」を軸とした空間計画
③近畿大学と自治体の利害が泉ケ丘で噛み合った背景

を順に読み解きます。

1.「おおさかメディカルキャンパス」の概要

「おおさかメディカルキャンパス」は、近畿大学創立100周年・医学部開設50周年記念事業の中核として整備された医療・教育拠点です。最大の特徴は、駅前立地を前提に屋根付きペデストリアンデッキをキャンパス内部に引き込み、病院と直結させた点にあります。

キャンパス内は外来棟・診療棟・教育棟・管理棟などを機能分離しつつ、渡り廊下やデッキで立体的かつ明快に接続。来院者・学生・職員の動線が交錯しすぎないよう整理されています。


項目 内容
計画名称 近畿大学 おおさかメディカルキャンパス
事業主体 近畿大学
移転時期 2025年11月1日
所在地 大阪府堺市南区三原台1丁14番1号
最寄駅 南海電鉄・泉北線「泉ケ丘駅」(徒歩約6分)
総事業費 978億円
敷地面積 約115,837㎡
延床面積 約143,956㎡
病床数 800床
診療科数 35診療科
計画の核 アクセス改善/医療機能・救急体制の強化/地域に開いた外部空間
設計コンセプト 駅前デッキ・緑道をキャンパスに引き込み、医療・教育・地域動線を連続化

2.移転の背景と位置づけ

出展:近畿大学 大阪狭山市にある現:畿大学病院

近畿大学医学部は1974年設置、翌1975年に大学病院を開院。以降約50年、南大阪の中核医療を担ってきました。一方、既存施設では老朽化に加え、


  • 患者を受け入れながらの建て替えが困難

  • 市道等による敷地分断

  • 耐震改修に伴う診療制限

といった制約が重なり、全面移転が現実的な選択となりました。

今回の移転は、大学の節目事業であると同時に、大阪府・堺市との連携プロジェクトとして位置づけられてきました。単なる場所替えではなく、立地と都市の再設計が前提に置かれています。

3.病院機能の再構築(高度急性期医療とDX)


併設される近畿大学病院は、800床・35診療科の特定機能病院です。南大阪の中核として、がん、心臓・脳血管、救急医療を軸に次の役割を担います。


  • 特定機能病院

  • 災害拠点病院

  • 地域がん診療連携拠点病院

  • がんゲノム医療拠点病院

  • 地域周産期母子医療センター ほか

想定患者数は外来約2,300人/日、入院約760人


医療機能の強化

  • 高精度放射線治療装置(リニアック)

  • ハイブリッド手術室(手術+血管撮影・透視の同時実施)

  • がん通院治療センターの拡充(日帰り抗がん薬治療の強化)

  • 24時間体制の救急医療(「断らない救急医療」を掲げる方針)

DX・省力化

  • 受付・会計のアバター対応

  • 抗がん薬混合調製ロボットの導入(安全性と効率性の両立)

高度急性期の強化業務効率化を同時に進め、地域の受け皿機能を維持しながら、現場負荷と患者体験の改善を狙う構成です。

4.計画思想と空間実装:「ひとつながり」をどう形にしたか

本計画で際立つのは、大学病院でありながら敷地を囲い込まない点です。泉ケ丘駅前の歩行者動線や周辺緑道と一体で構成され、「病院を目的地として完結させない」方針が貫かれています。

近畿大学はこの考え方を「ひとつながり」と整理し、


  • 駅前デッキを敷地内へ引き込み緑道へ接続

  • 外部空間を「通過」と「滞留」に分節して配置

といった空間配置で具体化しました。結果、キャンパスは「行く場所」であると同時に「通る場所」としても機能します。


フェンスを設けないという判断


フェンスレスは、防犯・管理の観点では負荷が増える選択です。それでも採用した点は、「地域とのつながり」を運営責任ごと引き受ける覚悟の表れと読めます。公共動線の一部としてキャンパスを差し出す、この判断自体が、「ひとつながり」を理念ではなく実際に成立させようとする姿勢を象徴しています。

5.なぜ978億円が動いたのか(近畿大学×自治体)

978億円という規模は、大学病院更新として見ても突出しています。ただし、これを「病院建設費」とだけ捉えると全体像を見誤ります。


近畿大学側:競争環境に対する「環境更新投資」


医学部・大学病院は、人材・研究・資金が施設環境と立地で大きく動く分野です。部分延命は短期的に負担を抑えられても、中長期では競争力を削ぎやすい。
本整備は、


・高度急性期医療設備の刷新
・教育・研究機能の集約・更新
・駅前立地によるアクセスと視認性の改善


一体で進め、大学病院の立ち位置そのものを更新する再投資と整理できます。


自治体側:泉北ニュータウン再生の「現実的アンカー」


一方、泉北ニュータウンは高齢化・人口減少が同時進行し、単独施策では再生の決定打を打ちにくいエリアでした。
大学病院は、


  • 雇用を生む

  • 日常的な人流を生む

  • 公共性が高く反対が起きにくい

  • 需要が比較的安定している

という条件を満たす希少な都市装置です。自治体にとっては、駅前に再生の重心を固定するアンカーとしての意味が大きい。


泉ケ丘駅前という「同時成立の地点」

近畿大学は環境更新と可視化を、自治体は駅前核の明確化と投資誘発を、それぞれ求めていました。この二つが泉ケ丘駅前で重なり、978億円という規模が現実的な選択肢として成立したと整理できます。


978億円は「過大」だったのか

病院、教育・研究、駅前デッキや広場・緑道。どれかを削れば計画の意味が薄れ、どれかに絞れば立地の必然性が弱まる。結果として978億円は、削りにくかった積み上げの帰結であり、過剰に盛られた数字とは言い切れません。

6.患者・住民にとってのメリットと、今後の課題

■患者のメリット
・駅近・屋根付き動線で通院負担が軽減
・最新設備により医療の選択肢が拡張
・24時間救急体制による安心感

■住民のメリット
・駅前核形成による人流・活気の増加
・医療拠点近接による生活上の安心
・緑道・広場、防災機能(トリアージスペース等)の明示

■今後の課題(運用)
・24時間開放に伴う防犯・騒音・事故・管理責任
・DXが省力化として定着するか、運用負担となるか
・地域開放が継続的に「使いやすい雰囲気」として保たれるか

まとめ



おおさかメディカルキャンパスは、800床・35診療科の大学病院機能更新にとどまらず、駅前動線・緑道・広場を組み合わせ、地域と連続する拠点として整備されました。
総事業費978億円、延床約143,956㎡という規模は、医療・教育・研究・人材育成を一体で再編しようとする近畿大学の判断と、泉北ニュータウン再生の核を求める自治体の意図が、泉ケ丘駅前で重なった結果と整理できます。

フェンスを設けず外部空間を地域に開く設計は、大学病院がまちの一部として機能することを前提にした点で象徴的です。その評価は完成時点ではなく、医療実績、地域利用、運用体制という積み重ねによって定まっていくでしょう。

「病院移転」と「ニュータウン再生」という二つの課題を同時に引き受けた本拠点が、地域の日常動線にどう組み込まれていくのか。今後の運用が、この計画の真価を左右します。

近畿大学『おおさかメディカルキャンパス』施設概要

① 計画概要(全体像)


項目 内容
計画名称 近畿大学 おおさかメディカルキャンパス
事業主体 近畿大学
移転時期 2025年11月1日
所在地 大阪府堺市南区三原台1丁14番1号
最寄駅 泉北高速鉄道 泉ケ丘駅(徒歩約6分)
総事業費 978億円
敷地面積 約115,837㎡
延床面積 約143,956㎡
病床数 800床
診療科数 35診療科
計画の核 アクセス改善/医療機能・救急体制の強化/地域に開いた外部空間
設計コンセプト 駅前デッキ・緑道をキャンパスに引き込み、医療・教育・地域動線を連続化

② プロジェクト情報


項目 内容
工事名称 近畿大学医学部・近畿大学病院新築工事
施主 学校法人近畿大学
プロジェクトマネージャー 株式会社インデックスコンサルティング
工期 2022年5月 ~ 2025年7月
運用開始 2025年11月予定
総事業費 978億円

③ 工区別 建築概要


区分 A工区 B工区 C工区
主用途 大学・病院 大学 大学・駐車場
設計施工 大林組 フジタ・南海辰村JV 前田建設工業
工期(準備含) 2022年5月~ 2022年7月~ 2024年1月~
竣工 2025年7月 2025年7月 2025年7月
運用開始 2025年11月 2025年11月 2025年11月
建築面積 19,573.25㎡ 5,675.17㎡ 3,945.08㎡
延床面積 111,223.86㎡ 20,069.71㎡ 15,586.20㎡
構造 RC造・S造 RC造・S造 RC造・S造
階数 地上10階 他 地上6階 他 地上5階 他
建物高さ 46.86m 29.50m 25.18m

④ 新病院 施設概要


項目 内容
病床数 800床
開院予定 2025年11月
入院患者数 1日平均 約760人
外来患者数 1日平均 約2,300人
標榜診療科 35診療科(※厚労省届出ベース)

⑤ 標榜診療科(35科)


区分 診療科
内科系 内科、循環器内科、糖尿病・内分泌内科、消化器内科、血液内科、脳神経内科、腫瘍内科、呼吸器内科、感染症内科、腎臓内科、精神科、小児科
外科系 外科、消化器外科、小児外科、脳神経外科、心臓血管外科、整形外科
感覚器・専門 皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、産婦人科
放射線・麻酔 放射線診断科、放射線治療科、麻酔科
その他 形成外科、リハビリテーション科、救急科、緩和ケア内科、漢方内科
歯科系 歯科、矯正歯科、歯科口腔外科
診断系 病理診断科

⑥ 主な施設認定・指定


分野 認定内容
高度医療 特定機能病院
災害医療 災害拠点病院
教育 臨床研修指定病院
がん 地域がん診療連携拠点病院/がんゲノム医療拠点病院
専門医療 肝疾患診療連携拠点病院
県指定拠点 大阪府アレルギー疾患医療拠点病院/大阪府難病診療連携拠点病院
周産期・小児 地域周産期母子医療センター/大阪府小児中核病
 




出典・参考

・近畿大学 医学部・病院移転関連(コンセプト「ひとつながり」、みどり/ひと/まち、5つのひろば、工事概要・数値データ等)
・m3.com(2025年11月4日)「近大医学部・病院を11月に全面移転、総事業費978億円」ほか施設概要記事
・朝日新聞(2025年10月15日)内覧会報道(移転時期、設備・救急、DX等)
・堺市・大阪府 公開資料(キャンパス名称決定、移転開院日、敷地・延床等の案内)
・現地取材(2026年1月)

2026年1月の様子


今回の記事を作成するために、現地を取材してきました!

※前回までの建設工事の様子は 下記↓↓↓ の記事にまとめています。

近畿大学医学部・近大病院が泉北NT泉ヶ丘駅前に移転!近畿大学新医学部キャンパスの最新状況 24.06【2025年11月開院予定】



 


南西側から見た様子です。「新キャンパス」と呼ぶにふさわしい規模の大きな施設です。


南側から見た様子です。写真手前が1号館(外来棟)、奥の大きな建物は2号館(診療棟)です。


7号館(管理棟)の様子です。



大きなオープンスペースが設けられています。階段状の部分は当初、調整池かと思っていましたが、実際には「集いの広場」と名付けられたイベントスペースのようです。


泉ヶ丘駅と接続するペデストリアンデッキです。屋根付きのため、雨天時でも利用しやすい動線となっています。


ペデストリアンデッキの様子です。


新キャンパスまで一直線に伸びています。


キャンパス内に入りました。ペデストリアンデッキの屋根が立派になりました。


キャンパスの中央を貫く緑道の様子です。


キャンパス内の施設レイアウトはこんな感じです。順番に見ていきます。


7号館(管理棟)の様子です。


東側から見た7号館(管理棟)の様子です。


2号館(診療棟)の様子です。新キャンパスで最も大きな建物です。


反対側から見た様子です。


青空に映えるライトグレーの外観から、シンプルで爽やかな印象を受けました。


4号館(教育棟)の様子です。


反対側から見た、4号館(教育棟)の様子です。


ペデストリアンデッキから続くメイン導線を主軸に、左右に主要施設を配置した、シンプルかつ明快で理解しやすいレイアウトです。

 


バス・タクシー乗り場の様子です。


立体駐車場の様子です。周辺の団地やマンションに配慮し、大規模な壁面緑化が施されています。


真正面から見た、立体駐車場の様子です。


壁面緑化された壁面を近くで見た様子です。緑視率が高まり、立体駐車場特有の無骨さがかなり軽減されています。


北東側から見た、立体駐車場の様子です。


立体駐車場から2号館(左)4号館(右)を見るとこんな感じです。


立体駐車場から見たグラウンドの様子です。ドクターヘリが着陸できる様です。


2号館に併設されてる3号館の様子です。


3号間は比較的小規模な建物で、2号館の一部に見えます。


真正面から見た3号館の様子です。


新キャンパスが丘陵地に建っていることが実感できます。


5号館(研究棟)の様子です。


広大な緑地の様子です。


北東側から見た、5号館(研究棟)の様子です。


新キャンパスはフェンスレスの設計で、隣接する公園なとどシームレスに繋がっています。


北側から見た、5号館(研究棟)の様子です。


北側から見た、5号館(左)2号館(中央)、1号館(右)の様子です。

 


やっと一周できました!完成した近畿大学『おおさかメディカルキャンパス』は、広大な敷地をフェンスレスで周辺地域と接続する「ひらかれた設計」となっており、よく聞く理念を実際に実現させようとする近畿大学側の覚悟を感じ取ることができました。

実際、キャンパス内で犬の散歩をする近隣住民の方を見かけたので、少しずつ街に溶け込んでいくのだと思います。

建物のレイアウトも、周辺の団地やマンションに配慮し、敷地中央に高層棟を配置して、周辺に向かって高さを抑える富士山型の建物配置になっていました。立体駐車場の壁面緑化も、周辺環境に配慮した設計ですね。南海泉北線・泉ケ丘駅から屋根付きデッキで直結しているため、利用者にとっても大変便利だと思います。

泉北ニュータウンを活性化させる新しい成長エンジンとして、この新キャンパスにはこれからも期待したいと思いました。

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