2025年10月4日、堺市堺区の大仙公園で、観光気球「おおさか堺バルーン(Osaka Sakai Balloon)」の一般運行が始まりました!世界文化遺産「百舌鳥・古市古墳群」の中心である仁徳天皇陵古墳(大山古墳)を上空から一望できるこの新アクティビティは、観光資源としてだけでなく、歴史の“見せ方”を変える新しい試みとして注目されています。
地上からは見えなかった“鍵穴”のかたち

仁徳天皇陵古墳は、全長486mの日本最大の前方後円墳ですが、その全体像は地上からは確認しにくく、観光客からは「ただの森にしか見えない」「どこがすごいのか分からない」といった声もありました。内部は立ち入り禁止で、見学デッキや高台もなく、世界遺産としての価値が伝わりづらいという課題がありました。
こうした“スケールが大きすぎて見えない”という構造的な欠点に対して、今回の気球導入は「空から見る」という新しい視点を提供するものです。搭乗者は上空約100mから古墳の形状をはっきりと視認でき、地形そのものに意味が込められていることを実感できます。
歴史を“展示物”から“体験資産”へ

観光の本質は、単に「見る」ことではなく、「意味を理解して持ち帰る」ことにあります。気球に乗って古墳を俯瞰することで、これまで航空写真でしか把握できなかった“鍵穴型”の構造が、リアルな体験として理解できるようになります。
堺市では、こうした体験を通じて、歴史的資源を「静的な展示物」から「動的な体験資産」へ転換する狙いを掲げています。観光モデルを地上型から垂直型へとシフトさせることで、地域の価値や記憶の伝達方法そのものを更新する取り組みです。
バルーンの概要と料金・運行体制

「おおさか堺バルーン」は、フランス・AEROPHILE社製の直径23mのガス気球で、約6,000㎥のヘリウムガスを充填しています。欧州航空当局の安全基準に準拠しており、最大で30名(通常時は15名程度)が同時に搭乗できます。
運営は兵庫県豊岡市のアドバンス株式会社(XPGグループ)が担当し、堺市と連携して事業を進めています。フライト時間は10~13分、全体の所要は約30分。1日を通して15分間隔で運行され、天候条件によっては運休する場合があります。
区分 | 通常料金 | Web割引 | 堺市民割引 |
---|---|---|---|
大人(16歳以上) | 4,200円 | 4,000円 | 3,200円 |
子ども(3~15歳) | 3,000円 | 2,800円 | 2,200円 |
3歳未満 | 無料 | – | – |
チケットは公式サイトで予約可能で、現地販売も行われます。車いすでの搭乗にも対応しており、小さな子どもから高齢者まで幅広く利用できます。
背景:なぜ今、なぜ堺で気球なのか
このプロジェクトは、2019年の世界遺産登録をきっかけに、堺市と関係機関で構想されてきたものです。当初は2023年5月の運行開始を予定していましたが、ガス漏れトラブルにより延期となり、2年越しでの実現となりました。堺は歴史や産業に強みを持つ一方で、観光面では「見せ方」の工夫が求められてきました。バルーンは、そうした都市構造の課題を解決する手段として、「上空の視点を活用する」というアプローチを取り入れたものです。
吉村知事「堺の新しいシンボルになる」
運行初日に行われた記念式典では、大阪府の吉村洋文知事と堺市の永藤英機市長が試乗しました。
吉村知事は「地上では分からなかった古墳のかたちが空からはっきり見えて感動した。大阪・堺の新しい観光のシンボルになる」と語りました。
永藤市長は「2019年の世界遺産登録から6年、堺の魅力を実感できる新しい体験がようやく形になった。市民にも多くの方に楽しんでほしい」とコメントしています。
地域との連携と今後の展開

バルーンを起点とした観光導線の整備も進められています。大仙公園内の「いころばカフェテラス」では、気球をかたどったパンの販売を始めるなど、にぎわい創出に向けた取り組みも行われています。
また、堺市博物館との連携による教育プログラムの開発や、修学旅行・企業イベント(MICE)での活用も見込まれており、単なるレジャーにとどまらない地域活性化の仕組みとしての機能が期待されています。
見るだけでは終わらない、価値の再発見へ
「おおさか堺バルーン」は、目に見える形で歴史と都市をつなぎ直す試みです。従来の地上観光では伝えきれなかった文化的価値や都市の構造を、上空からの視点によって再認識できるようになりました。
今後はこうした“俯瞰体験”が、世界遺産を持つ都市の新しい活用モデルとして広がっていく可能性もあります。堺で始まったこの実験的な取り組みが、全国の文化観光のあり方に一石を投じるかもしれません。
実際に乗ってみた!
観光気球『おおさか堺バルーン』に乗って見たくて、大仙公園までやってきました!気球の場所は写真の中央付近、「どら池」の真ん中下ぐらいにあります。JR阪和線・百舌鳥駅から徒歩6〜7分、駐車場は「大仙公園第3駐車場」が近いです。
こちらが観光気球『おおさか堺バルーン』の乗り場です。ヘリポートのように広々としています。
気球の着陸スペースの様子です。逆すり鉢状の形をしており、ゴンドラがちょうど収まるように設計されています。
夜間や悪天候時に気球を安全に係留できるよう、発着場の周囲には複数箇所にロープが設置されています
気球の大きさはこんな感じです。ヘリウムガスが充填されていますが、風船の様な感じではなく、かなりカッチリした印象です。

ゴンドラと着陸地点の様子です。

『おおさか堺バルーン』のネームプレートと気球の様子です。

チケット売り場は現在は仮設で運営されており、隣接地(写真右奥)では観光案内所の建設が進められています。


いよいよゴンドラに乗り込みます!最大30人、通常15人乗りとの事ですが、以外に小さい感じです。底面には車輪がついていますね。

ゴンドラに乗り込みました!気球と地上は鋼鉄製のワイヤーロープでつながっています。天空の城ラピュタのタイガーモス号の上にある、パズーとシータが乗っていたグライダーのワイヤーにソックリで思わずニンマリ。

スルスルと上昇を始めました!ワイヤーロープがみるみる伸び、高度がぐんぐん上がっていきます。

おおおおお!高いいいいいい!
下をみるとメチャクチャ怖い。個人差があると思いますが、まさか絶叫系アトラクション(叫んでいる人は居ないけど)になるとは計算外すぎた・・・。

ゴンドラを見渡すとこんな感じで、まさに空中散歩気分です。

ゴンドラの内側から真下を覗くと怖いですが、外向きに風景を見ていれば、高層ビルの展望台の様な感じで、それほど怖くありませんでした。

徐々に高度が上がり・・・。

そろそろ、最高高度100mに到着です!

おおおおお!仁徳天皇陵が一望できます!斜め上から見る角度なので、鍵穴の形が完全に見えるわけではありませんが、それでも十分に楽しめます。ビルオタとしては、奥に見えるあべのハルカスや大阪都心の超高層ビル群に目が行ってしまいます。

ゴンドラの内側はこんな感じです。見なきゃ良いのに(笑)。
ゴンドラ内で人が移動すると重心がずれるので、微妙にゴンドラが傾きます。これが地味に怖い……。

正直、足がガクガク震えて、景色をゆっくり楽しむ余裕はありませんでした。周りの人は平然としていて、女子小学生が笑っているくらいだったので、怖さの感じ方にはかなり個人差があるようです。僕はジェットコースターのような絶叫系は大好きなのですが、フリーフォール系だけは本当に苦手です。

そんな状況でも必死に「大屋根リング」を探してしまうのは、再開発クラスタの“性”なのかもしれません。

ゴンドラから気球を見上げるとこんな感じです。

観光気球『おおさか堺バルーン』。予想よりもかなり高く、そしてスリリングな体験をする事ができました。1回4200円はちょっと高いですが、その価値は十分にあると思います。なによりも、日本国内、しかも大阪大都市圏の市街地で気球に乗れる、世界遺産を見下ろす体験はプライスレスかもしれませんね。
『おおさか堺バルーン』Photo collection







「大君へ 思いを馳せて 空高く
キミは思う 進歩と調和」